プロトレーナーが語る、ステイホームトレ10の心得
withコロナでジムから自宅トレーニングに以降したひとも多いだろう。また、これを機に筋トレを初めたという声も聞く。そこで、ステイホームトレ10の心得を馴染み深いトレーナー陣に語って頂いた。
取材・文/坂田滋久(本誌) イラストレーション/岡田成生
(初出『Tarzan』No.791・2020年7月9日発売)
目次
① フォームと呼吸、スピードが重要。
健康のためにもスポーツパフォーマンスのためにも、最も重要なのは「柔軟性・筋力・持久力」の3要素です。私自身もストレッチ、筋トレ、有酸素運動を実践しています。ジム休業中は自宅でストレッチと筋トレを行い、有酸素運動は人が少ない夜間などに外に出て走りました。ジムで実践できない短距離の全力疾走は筋トレにもなるので、今後も続けます。
読者のみなさんも、コロナ以前から自宅トレを実践してきた方、ジムトレを併用してきた方が多いでしょう。自宅でトレーニングする際も、正しい種目を選択し、最適なフォーム、呼吸、動作スピードで行えばジムと同等の効果を得ることができます。変化する環境のなか、最善の選択をしましょう。
坂詰真二さん
1966年、新潟県生まれ。NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト、同協会認定パーソナルトレーナー。96年よりスポーツ&サイエンス代表として幅広く活動。
② マッスルメモリーを信じて。
コロナ以前は24時間営業のジムに週3回通っていましたが、閉鎖後は自宅で自体重トレーニングをして筋肉量を維持しました。仮にトレーニングを放棄したとしましょう。あなたが1年、2年かけて作ったカラダが1か月、2か月でトレーニング前に戻るかといえばそんなことはない。もちろん多少は筋肉が減りますが、マッスルメモリーがあるから再び鍛え始めたら1か月、2か月で取り戻せるので焦らなくて大丈夫です。
緊急事態宣言が出た当初、外を走る人のシューズがランニング用じゃないことが多く、走る習慣のない人が走っていると感じました。ランニングシューズを履けば絶対に楽しく走れるので、走ることを習慣にしてほしいですね。
中野ジェームズ修一さん
1971年、長野県生まれ。PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー。スポーツモチベーションCLUB100最高技術責任者。フィジカルとメンタル両面の指導で活躍する。
③ 姿勢と左右差、可動域も確かめて。
興味を持ってカラダを動かすことは大切ですから、ステイホーム中あまりストイックに運動する気がしない方は『ターザン』連載の「バカトレ」を一つ一つ実際やってみることをお勧めします。名前こそ“バカトレ”ですが効果はバカにできないものがあります。
ご自身のカラダに深い興味をお持ちの方にステイホーム中お勧めなのは、十分に時間をかけた姿勢や左右差、可動域のチェックです。自分のカラダと対話すれば誰でも何かしら課題が見つかるはずです。それを改善するエクササイズを行うと、例えばジムでトレーニングする際も必ず役に立ちます。自宅で行う体幹トレやガッツリ系の自体重トレ、ランニングなどすべての運動の基礎になります。
齊藤邦秀さん
1972年、山形県生まれ。ウェルネススポーツ代表。ランニングフィットネスラボ代表。日本メディカルフィットネス研究会常任理事。本誌連載「バカトレ」監修でもおなじみ。
④ 習慣化することが必要です。
おかしな言い方かもしれませんが、コロナで自分のジムを休業したら約15年ぶりに時間がたっぷりできて自分のトレーニングは万全でした。モチベーションについて考える時間も取れました。
運動が習慣になっていた方々にとっては運動できないことがストレスになっていたと思います。これから取り戻すモチベーションがあれば、ある意味、大丈夫です。しかし運動しにくい環境が長期化したことで、まだ高いモチベーションにまで到達していなかった方が運動しない生活に戻ってしまうことは心配です。習慣化すれば必ずレベルアップが起きます。「たったそれだけ?」と思わず、できればこれを読んだらすぐに腕立て伏せを始めてください。
清水忍さん
1967年、群馬県生まれ。インストラクションズ代表、トレーニングジム〈IPF〉ヘッドトレーナー。西武ライオンズや広島カープなどの野球選手のパーソナル指導にも定評あり。
⑤ 諦めないで動くこと!
外出自粛による歩行動作の減少や、どうしても座りっぱなしの姿勢が続くことで筋肉が凝り固まりやすくなっています。
筋トレを単一の部位に効かせることも大切ですが、それより全身をいろいろな方向へ動かす有酸素運動のほうが、多くの人にとって優先順位が高いです。カラダを大きく曲げたり捻ったり、伸ばしたりしながら血液循環を良くする全身エクササイズです。ダイナミックストレッチもお勧めです。
運動も大事ですが栄養も大事。コンビニやスーパーに行けば買える缶詰や保存食品、冷凍食品なども活用してタンパク質を確保してください。『ターザン』を読んで糖質、脂質やビタミン、ミネラルとのバランスにも目配りを。
河村玲子さん
1985年、東京都生まれ。全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会認定パーソナルフィットネストレーナー、管理栄養士。フィジカルとメンタルに加え栄養面でも専門的指導を。
⑥ 自分だけの感覚を大切に。
トレーニングの場所と時間さえ確保できればカラダが整うのかといえば、そうじゃないと思うんです。むしろトレーニングしてない時間の姿勢とか、過ごし方のほうが大切かもしれない。ステイホームでジムに行けない時期を経たことで、みなさん自分で自分を調整する必要に迫られて、“自分で何とかしなきゃ”という問題意識を持つことができたのは大きい。
問題意識を持ってカラダを使うと進歩なり気づきがあるんです。フィットネス業界もAI化が進むと多種多様なプログラムが利用できそうですが、大切なのは能動性というか、自分の感覚と向き合うこと。受け身ではなく、自分自身の工夫を加えるかどうかでトレーニングの効果に差が出ます。
菅原順二さん
1978年、東京都生まれ。アランチャ代表。NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト、BodyElement Pilates、MasterStretchマスタートレーナー。
⑦ ぐっすり眠るのも大事です。
肉体の美しさを表現する言葉に“ギリシャ彫刻のような”というのがあります。古代ギリシャの人々の肉体は主として自体重トレーニングで鍛え上げられたものです。もしジムに行けない事情が続いても「脱げるカラダ」になるうえではまったく問題ありません。自体重のエクササイズは動けてカッコいい、バランスのいいカラダを作るのに最適だからです。足りないと思ったら、自宅にダンベルがあれば腕や肩を盛れます。
大変な時期ですが、運動には高い抗鬱効果があります。ストレスを発散し、抵抗力を高めましょう。同時に運動は質の高い睡眠をもたらします。よく眠ってメリハリのあるライフスタイルで過ごせば、メリハリのあるカラダに!
白戸拓也さん
1963年、青森県生まれ。フージャース ウェルネス&スポーツ。元BODYPUMP/BODY COMBATマスタートレーナー。BSフジの新番組『美BODYサロン』に出演中。
⑧ 友達と切磋琢磨してほしい。
自粛要請が出てジムを休業してからトレーニングは自宅で行い、仕事はすべてリモートで行いました。その期間に某アイス(しろくまくん)のおいしさに気づいてしまい、パソコン作業が多いとお菓子に手が伸びてしまうとおっしゃっていたみなさんの気持ちがよくわかりました。これを自分自身やみなさんのコンディション管理に生かしたいと思います。
ジムのトレーニングと比べると家で黙々と一人で鍛えるのはなかなかモチベーションを保つことが難しいです。オンラインで友達と決まった時間30分でも一緒にトレーニングして達成感を得たり、オンラインパーソナルを利用するのも有効だと思いました。自分も、ライブ配信などを行いました。
井上ジュニアさん
1982年、ブラジル生まれ。ICONIQ代表。パーソナルトレーナー&フィットネスモデル。原宿でプライベートジムを運営。2015年ベストボディ・ジャパンのミドルクラス優勝。
⑨ 目先の筋肉を追うべからず。
普段と違う状況に置かれたとき悲観することはないと思います。考え方を変えると、そこから発見することがある。人間の筋力を測る実験をぼくらはよくやるんですけど、それらは全部ストップしました。実験できない分、時間があるから先行研究を調べたり他の作業をする。
トレーニングも一緒で「普段と同じ鍛え方ができない」というのが大体のトレーニーの発想ですけど、「普段と違うトレーニングができる時期」と捉えたら、どんなに幸せか。神経系統を鍛えるのは単純に楽しいし、その後のトレーニングが質の高いものになります。目先の筋肉を追うよりも、生涯の筋肉の到達地点がさらに高くなるチャンスかもしれません。
岡田隆さん
1980年、愛知県生まれ。日本体育大学体育学部准教授。柔道全日本男子チーム体力強化部門長、理学療法士。2月に〈ACTIVE RESET溝の口〉開業。バズーカ岡田として活動。
⑩ 全身が映る鏡は必需品です。
大きな鏡を買ったんですよ。それを見ながら自宅でトレーニングしてますね。筋肉を確かめながら。ウェアで気合を入れるのも効果的ですが、他人の目がない自宅では上半身裸で鏡をチェックして鍛えるとジムよりいいですよ。
ジムに行くと高重量のバーベルを扱ったりもしますが、自宅では20kgのバーベルセットと10kgのダンベルと12kgのケトルベルと腹筋ローラーがあるだけ。プッシュアップ派なのでベンチはありません。回数とバリエーションを増やせばカラダ作りは何も問題ないと思いました。Aメニュー、Bメニューを日替わりで各4種目ぐらい毎日20分ぐらい。ジムに行くと50分ですから時短にもなりました。自宅トレも、やり方次第なんです。
澤木一貴さん
1971年、静岡県生まれ。SAWAKI GYM代表、NESTA JAPAN理事。全国でトレーニングセミナーを開催。早稲田、高田馬場に続き、SAWAKI GYM沖縄店を6月にオープンした。