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ホルモンで快眠! 5つのコツ

ホルモンの分泌が睡眠をコントロールしているというのは、こちらの記事の通り。では、ホルモンを踏まえて、今夜から安眠できる方法を探ろう! 睡眠には寝る直前の過ごし方だけでなく、起床後や日中の過ごし方も大きく関わっているのだ。

コツその1. 夜明るい場所で過ごさない。

不思議に思うかもしれないが、眠る2〜3時間前には覚醒レベルが上がり、眠れない時間帯がある。これは「睡眠禁止帯」と呼ばれるもの。本当に眠る前に、うっかり寝ないようにしているのだ。

それなのに夜明るい場所で過ごして光を浴びると、体内時計は後ろにズレる。すると本来寝る時刻が「睡眠禁止帯」にズレ込み、眠れなくなる恐れがある。それを避けるために、帰宅したら照明を落とし、間接照明などで目に直接光が当たらない工夫をすべし。

帰宅したらすべて間接照明にスイッチ。

光のなかでもスマホやPCなどから出るブルーライトをカットさえすればいいという話をよく見聞きする。真偽は? 

「目の網膜には明暗だけに反応するメラノプシンというタンパク質がある。メラノプシンが吸収する光のピークは青い光なので、数年前からブルーライトが注目されるようになりました。でも青い光以外にもメラノプシンは反応し、覚醒が起こる。ブルーライトに限らず、夜は光全般をなるべく浴びないのが正解です」 (櫻井武・筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構[WPI-IIIS]教授)

コツその2. 20分以内の昼寝で眠気を払う。

睡眠不足で集中できないと仕事の効率が落ち、残業が増えていつも就寝時刻に眠れない。それが睡眠不足を招く。この悪循環をスパッと断ち切るのが、短時間の昼寝。

昼寝で眠気を払うと脳が目覚め、仕事が早く片付いて眠りのリズムが崩れない。眠くて仕事に差し障るなら、体内時計の働きで眠気が高まる午後2時〜3時頃に自席でうつ伏せになって寝よう。

昼寝は20分以内に留めるのがポイント

深い眠りに入る前に切り上げるのがコツ。

夜の睡眠でも昼寝でも、眠りは必ずノンレム睡眠から始まる。20分以内なら、ステージ1〜2の浅いノンレム睡眠で終わるが、30分以上眠るとステージ3の深いノンレム睡眠に突入。すると脳が「あと7時間眠れる!」と勘違いして本格的に眠る態勢を整える。

そのため長く昼寝をすると、起きてしばらく脳が寝ぼけて逆にパフォーマンスが下がってしまう。

「これが睡眠慣性。20分以内なら睡眠慣性から比較的早く回復できますが、それ以上眠ると回復しにくいのです」 (櫻井教授)

むろん夜十分寝て昼寝しないのが◎。

コツその3. 起床と就寝の時刻を同じにする。

眠る仕組みを踏まえた快眠術の基本は、起床と就寝をできるだけ同じ時刻にすること。

夜何時に寝るかを先に決めるのは難しい。「時間だから寝なきゃ」と焦ると情動が乱れて寝られないから、出社時間などに合わせて起床時刻を定める。

一般的に必要な睡眠時間は7時間半〜8時間。起床時刻から逆算してその睡眠時間が確保できる時刻に眠る。7時起床で7時間半眠るなら、就寝は23時半だ。

このリズムで日中眠気がないなら、その起床と就寝の時刻をFIX。眠気があるなら、理想のパターンが見つかるまで睡眠時間を少しずつ延ばす。

平日も土日も同じリズムで過ごす。

大切なのは、土日も平日と同じパターンで過ごすこと。休日に寝坊したくなるのは、平日の眠りが足らず、睡眠負債が蓄積している証拠。土日の寝坊が許されるのは平日より30分程度。

睡眠負債と体内時計の関係
睡眠負債と体内時計の関係
日中は睡眠負債が強まるほど、それに対抗する体内時計が司る覚醒出力が強まる。夜間は睡眠負債が下がり、覚醒出力はそれ以上にダウン。
筑波大学WPI-IIIS 櫻井武

「体内時計が調整できるのは1時間ほど。土日各30分=1時間なら、体内時計の乱れによる”社会的時差ボケ”に陥らず、翌月曜の朝すっと快適に起きられます」 (櫻井教授)

コツその4. 日中の活動量を上げる。

外回りなどでしこたま疲れた日は、誰でも爆睡できる。デスクワークばかりで1日2,000歩も歩かない日々が続くと、寝付きが悪くなる。眠りは覚醒のためにあり、覚醒中の活動量が低いと睡眠負債が高まらず、夜になっても眠くならないのだ。

デスクワーク主体で眠れないなら、日中運動するのが手っ取り早い。

朝ランで睡眠負債をアップさせる。

運動は筋肉だけではなく脳も使い倒す。運動神経を介して筋肉を動かす指令を出しているのは脳であり、脳の前半分は、運動のためにあるようなもの。デスクワークでも頭を使っているけれど、脳の使用率は運動の方が遥かに高く、睡眠負債が高まって寝付きやすくなる。

運動で手軽なのはラン。朝30分ほど自宅の周りを走ってみよう。睡眠負債が増やせるだけでなく、外で光を浴びると体内時計がリセットされて眠りのリズムが定まる。

朝時間が取れないなら夜ランでもいいが、遅い時間帯に激しい運動をすると心身が興奮して寝付けない。就寝時刻の4時間前までには走り終えて。

コツその5. 眠るためのスキルを高める。

最後に眠るために役立つスキルをいくつか紹介しよう。

第一は夕方以降のカフェイン断ち。カフェインは脳内で覚醒を抑えるアデノシンの働きを阻害し、覚醒作用を発揮する。カフェインは飲んで数時間は効果が続くので、夕方以降は控えた方が無難。コーヒーやお茶のほか、エナジードリンクにも含まれるので要注意。

カフェインを断ち、寝室=寝る場所と固定。

次に大事なのは「早く寝なきゃ」とか「寝ないと明日が辛い」などと思い詰めないこと。前述のように大脳辺縁系が不安や焦りを感じると眠れなくなる。

そこで有効なのは、寝室を眠る場所だと脳にインプットすること。寝室と眠りを固く結び付け、まるでパブロフの犬のように寝室に行くだけで眠くなるように仕向けるのがベストである。

そのために寝室でテレビやスマホを見たりせず、眠くなってから、眠るためだけに行くと決める。

寝床で15分以上眠れなかったら一旦起きて居間などに移動。眠気が高まったらまた寝室に入って眠る。これを眠れるまで何度でも繰り返そう。

今日からの安眠のためにトライしたい8つのポイント
  1. 毎朝決まった時刻に起きる。
  2. 週末の寝坊は30分以内にする。
  3. 夕方以降できるだけ光を浴びない。
  4. 昼寝は20分以内にする。
  5. 夕方以降カフェイン飲料を飲まない。
  6. 寝室は眠ることだけに限定して使う。
  7. 眠くなってから寝室に行く。
  8. 15分以上眠れなかったら寝室を出る。
夕方以降はカフェインを飲まない。

取材・文/井上健二 イラストレーション/飛永雄大 取材協力/櫻井武(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構[WPI-IIIS]教授)

初出『Tarzan』No.782・2020年2月22日発売

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