
教えてくれた人
中野ジェームズ修一(なかの・じぇーむず・しゅういち)/1971年、長野県生まれ。スポーツモチベーションCLUB100最高技術責任者。PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー、アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないフィジカルとメンタルの両面を指導できるトレーナー。多くのオリンピック代表選手、青山学院大学駅伝チームなどを指導。『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』が現在ベストセラーに。
まずは、6つのチェックで確認。
腸腰筋が弱っているという自覚は持ちにくいかもしれない。なにせ相手はカラダの奥深くに潜んでいるサイレントな筋肉だから。
というわけで、ここに6つのチェック項目をご用意した。日頃から使っていない腸腰筋が硬くなっていないか、短くなっていないか、弱くなっていないかなどを判定することができるテストだ。ひとつでも当てはまったら、あなたの腸腰筋はもはや衰えていると考えてほしい。
チェック1
ベッドやテーブルなどの上に仰向けに寝て片脚の膝を両手で抱え、胸に引きつける。
【OK】反対側の脚の位置が変わらない
【NG】反対側の脚の位置が浮いてくる
「トーマステスト」という整形外科の股関節の機能検査。引きつけた側とは反対側の脚が浮く場合は、腸腰筋が短縮していて脚が引っ張られている可能性がある。
チェック2
チェック1同様、ベッドやテーブルなどの上に仰向けに寝て片脚の膝を両手で抱え、胸に引きつける。
【OK】反対側の脚がベッドにつかない
【NG】反対側の脚がベッドにペタッとつく
「トーマステスト」を行ったとき、反対側の脚がベッドやテーブルにペタッとくっついてしまう場合は、腸腰筋が弱っている可能性あり。通常は脚が浮いたままのはず。
チェック3
片脚立ちになり、上げた方の脚の付け根に2Lのペットボトルを乗せて手で支える。股関節を90度以下の角度に保って10秒キープ。
【OK】そのまま10秒キープできる
【NG】股関節が90度以上開く
10秒間、膝を股関節より高い位置にキープできない場合は腸腰筋が弱くなっている可能性がある。腸腰筋の弱化にはあまり左右差がないが、反対側の脚も行ってみよう。
チェック4
1時間以上歩いてみる。
【OK】脚がどこも張っていない
【NG】太腿がパンパンに張ってくる
一定時間続けて歩いたときに太腿が張る場合は、腸腰筋が硬く股関節を曲げたまま歩いている可能性が高い。大腿四頭筋がメインで使われるため強い張りが生じるのだ。
チェック5
1時間以上立つ、または歩く、または走る。
【OK】腰に違和感を感じない
【NG】腰の張りを感じる
長時間立位で腰の張りを感じたら腸腰筋が硬く弱くなっている可能性あり。大腰筋の後部線維は腰の多裂筋に繫がっており、硬くなった筋肉に引っ張られ張りが生じる。
チェック6
床にうつ伏せに寝る。片足を同じ側の手で摑み、踵をできるだけお尻に近づける。
【OK】腰が反らない
【NG】腰が反る
踵をお尻に引き寄せたとき、腸腰筋の長さが正常であれば上体は反らない。使わないことで正常より縮んでいると腰の筋肉が引っ張られて背中が反る。
朝昼晩のシーン別・簡単ストレッチ。
上記のセルフチェックで1つでも【NG】を出してしまった人に即実践いただきたいのは「立つ」時間を増やすということだ。電車やバスに乗っている間や、デスクワークの合間に水を飲む時。立つ時間が増えるだけで、腸腰筋は伸ばされる。
しかし、1日平均7時間座っていた人が立つ習慣をつけ、1〜2時間座る時間を減らしたとしよう。縮こまっていた腸腰筋はその分だけ伸ばされる。さらに立位での伸展と収縮を繰り返すことで、筋肉が使われる機会も増える。
すると、どうなるか。機能させた分、張りを感じるはずだ。筋肉を使えば必ず老廃物が溜まるから。ここで初めて、使った筋肉をセルフマッサージで「ほぐす」というメソッドを導入しよう。
朝ほぐし|起床後すぐに行えるケア。
朝、目覚めたらベッドの上ですぐにできるセルフケア。四つん這いの姿勢で脊柱を曲げ伸ばしする。大腰筋とともに、大腰筋に連なる脊柱の多裂筋をほぐすことによって腰痛予防の効果も。
1.背中を反らせる。
四つん這いの姿勢をとる。両手は肩、両膝は骨盤の真下に来るように。顎を上げて背中をできるだけ反らせる。
2.背中を丸める。
次に頭を両腕の間に下ろして背中を丸める。おヘソを天井に向かって引き込むようなイメージで。
1.背中を反らせる。
続いて、さらに背骨を深く曲げ伸ばし。四つん這いの姿勢から膝下を床につけて背中を反らせる。
2.背中を丸める。
膝を曲げてお尻を後ろに突き出す。頭を両腕の間に埋めて背中を丸める。元に戻って5〜6回行う。
昼ほぐし|骨盤の前後運動で大腰筋をほぐす。
腸腰筋が縮みがちなデスクワーカーにはとくに毎日の習慣にしてほしいセルフケア。「朝ほぐし」と同様、背中の曲げ伸ばしをするだけでなく、骨盤を前後に動かして大腰筋をほぐすのが狙い。
夜ほぐし|腸腰筋全体をほぐすマッサージ。
今日も一日立つ時間をよく確保できたという日には、ぜひ行ってほしいセルフマッサージ。朝と昼は大腰筋メインのケアだが、「夜ほぐし」は腸骨筋もカバーする腸腰筋全体のケア。一日の終わりの習慣に。
1.足首をクロスする。
うつ伏せになりフォームローラー(または丸めたタオル)の上に両脚の付け根を乗せ、肘を床につく。
2.カラダを後ろにずらす。
そのままフォームローラー上でカラダを後方にずらす。腸腰筋だけでなく大腿四頭筋の付け根もほぐれる。
NG
1.膝下を上げる。
うつ伏せになり、丸めたバスタオル(またはマッサージボール)を脚の付け根に当てて膝下を上げる。
2.外側に開く。
股関節を外側に開きながらタオルを潰して腸腰筋をほぐす。片脚5〜6回行ったら逆脚も同様に。
身近な道具やギアを使ってほぐす。
●フォームローラー
もともとアスリートのリカバリーなどに利用されていたフィットネスアイテム。ほぐしたい部分を効率的にマッサージできる。
●タオル
特別なギアがない場合は、バスタオルを活用してもよし。お団子状に結んで、ほぐしたい部位に当ててマッサージを。
●マッサージボール&タオル
小さいマッサージボールは股関節の一点に食い込んでしまい、腸腰筋全体をケアしにくい。タオルに乗せて高さを確保して。
●マッサージボール
筋膜リリースなどに重宝される大きめのマッサージボール。ひとつ常備しておけば筋肉の張りのリカバリーが効率よくできる。