腸腰筋が衰えるNG習慣9選。

我々が無意識に過ごしている毎日で、腸腰筋は衰えゆくばかり。ダメと思わずやっているその仕草を、まずはストップ!

取材・文/石飛カノ イラストレーション/石山好宏 監修/大久保 雄(埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科准教授)

初出『Tarzan』No.896・2025年2月6日発売

腸腰筋が衰えるNG習慣

歩くときに下を向いていることが多い。

腸腰筋が衰えるNG習慣

背中のS字カーブがどうしてヒトに備わったかといえば、頭が骨盤の真上に来るようポジショニングするため。それなのに、寒いからといって頭を前に出し、下を向いて歩くとせっかくの腰椎の前彎が失われてしまう。その姿勢が習慣づけば、腰椎を前に押し出している腸腰筋は緩みっぱなし。寒さ厳しい冬も頭を起こして胸を張り、腸腰筋を収縮させながら歩くべし。

座っているとき上体が後ろに傾いている。

腸腰筋が衰えるNG習慣

メリットの項でも触れたが、電車などで座っているとき上体を後ろに傾けた姿勢で座っている人が実に多い。無意識に骨盤を後傾させ、さらにスマホなんかをいじっていたら頭が前に出た猫背という典型的な悪姿勢に。

腸腰筋が腰椎を前彎させてくれるおかげで、骨盤は二足歩行に最適なやや前傾状態になる。これが「骨盤を立てる」ということ。座るときは坐骨を座面に当て、常に骨盤を立てる意識を。

フロア移動の際はほとんどエスカレーターやエレベーターに乗る。

腸腰筋が衰えるNG習慣

階段を使ったフロア移動は腸腰筋を使う貴重なチャンス。2〜3階の移動ならエスカレーターやエレベーターはパスしよう。

理想は1段抜かしだが現実的ではないので、1段ずつでよし。とはいえ、ただ階段を上ればいいというわけではない。股関節と膝をしっかり伸ばしながら上らないと腸腰筋が稼働しにくい。背すじを伸ばしてサクサク上っていこう。

ソールが硬い靴を履くのが好き。

日常生活では登山靴のようにソールがガチガチの靴を選ばない方が無難。本来の歩行は爪先を曲げて後ろ足で地面を蹴り出す力で前に進む。このとき膝が持ち上がるので腸腰筋も稼働する。ソールが硬いとこの動きができないので、足をスライドさせる歩き方になってしまう。

マメやタコがあって足を固定させる必要がある場合は別として、普段のシューズはソールが柔らかいタイプで。

家にいるときは必ずスリッパを履いている。

腸腰筋が衰えるNG習慣

スリッパを履いた状態で膝を持ち上げ股関節を屈曲させて歩く人はいない。当たり前だがスリッパでは踵がホールドされないので、蹴り出しができずに常にすり足歩行となる。もちろん、腸腰筋が使われる機会は皆無だ。できれば室内ではルームシューズを活用しよう。同じ理屈でミュールやサンダルもすり足歩行になるので、腸腰筋のためには踵のあるシューズがおすすめだ。

スクワットをするときは浅い角度でしかやらない。

腸腰筋が衰えるNG習慣

埼玉医科大学の大久保雄准教授らが行った、筋トレの際の大腰筋活動を調べた実験によると、膝を直角に曲げたハーフスクワットでは大腰筋がほとんど働いていないことが分かっている。太腿が床と平行になるパラレル、お尻が膝より低い位置に来るまで腰を落としたフルスクワットのレベルで大腰筋はしっかり働く。スクワットは深い角度でなければもったいないのだ。

1日7時間以上椅子に座っている。

腸腰筋が衰えるNG習慣

リモートワークもそこそこ定着した今日この頃、朝デスクの前でパソコンに向き合って以降、食事とトイレで席を立ったのがわずか数回。気づけばもう夕方。

腸腰筋にしてみれば、ヒトがこんなに長時間座るとは思っていなかったと嘆いているはず。なぜなら腸腰筋は立って初めて本来のサイズに伸ばされる。座った状態ではずっと縮んだままだから。スタンディングデスクの導入を考慮してみては。

床に座ることが少ない。

腸腰筋が衰えるNG習慣

思えば昭和の家庭の生活空間は低い位置にあった。お父さんはちゃぶ台の前であぐら姿勢から立ち上がる、お母さんは四つん這いで雑巾掛け、起床時は布団を畳んで押し入れに収納し、和式便所でフルスクワット……。

すべての動作で股関節が屈曲伸展、腸腰筋が駆使されていたと考えられる。昔に返れとは言わないが、畳がない部屋でも床に座る、床から立ち上がるという所作を取り入れてみてもよし。

しっかり上体を起こすフッキンをあまりしない。

こちらも大久保さんらが行ったフッキン運動による大腰筋の活動を調べた。膝を伸ばす、曲げる、膝を伸ばして足元を固定、膝を曲げて足元を固定、全4タイプの運動で大腰筋の活動を筋電図で測定したところ、動作の初期よりも中期、後期で大腰筋がより活動していたという。

肩甲骨が床から浮いた程度では甘い。腸腰筋を狙うなら上体をしっかり起こすのがコツ。

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