
教えてくれた人
本橋恵美(もとはし・えみ)/〈Educate Movement Institute〉代表理事。スポーツ医学に基づくピラティスメソッドを構築し、トップアスリートのコーチングをはじめ、大学との共同研究、指導者の育成にも従事する。著書多数。
目次
まずは痛みのタイプをチェック!
機能解剖学やバイオメカニクスの研究を取り入れ、アスリートから高齢者まで指導するコンディショニングコーチの本橋恵美さん。腰痛改善のスペシャリストだ。
「慢性的な腰痛に悩む人が多い働き盛り世代は、姿勢の悪化で筋肉や筋膜に問題があるケースが多いです。この腰痛は“腰を曲げると痛い”“反らすと痛い”という2つのタイプに分かれ、姿勢や体幹の状態、また隣接する関節の可動域によって変わるもの。そのため、対応するピラティスのエクササイズもタイプごとに異なります」
さらに本橋さんのメソッドでは、「腰を守って安全に動く」のもポイントに。腰椎を支えるインナーマッスルが日常的に働き、機能的に動けるカラダが手に入る。
そんな本橋さんに教わるのは、腰痛に特化したピラティス。痛みのタイプでメソッドが異なる。
「痛みの種類は、背骨や骨盤まわりの可動性や筋肉の状態に左右されます。例えば股関節の場合、伸展と屈曲どちらかに問題があると、その動きをカバーしようと隣接する腰椎に過度な負担が加わって、痛みを招いてしまうのです」
そのため脚を動かすエクササイズでは、体幹部や骨盤を安定させたまま股関節だけを動かし、本来の可動域を引き出すのが重要なポイントに。
「各タイプとも、まず股関節の単独運動から始め、全身の動きへと統合させるのが基本。胸椎の柔軟性も重要なので、最後の“ブックオープナー”は両タイプにおすすめです」
【トラブルA・B・C】伸展時痛タイプ|腰を反らすと痛い、いわゆる「反り腰」。
要因
- 脚を後ろに引く動き(=股関節の伸展)が難しい
- 背骨を支える脊柱起立筋が硬く縮む代わりに腹筋が伸びて使われない
- 腰椎の反りすぎ(=過伸展)がある。
【トラブルD・E・F】屈曲時痛タイプ|腰を曲げると痛くなる、猫背の姿勢。
要因
- 股関節の屈曲が難しい
- 背中が丸くなり背骨をつなぐインナーマッスルの多裂筋がうまく働かない
- 背骨が分節的に動かず、姿勢の安定性が失われることがある。
ドローイン|まずは準備運動から。
腰を守って安定させるため、まずはインナーマッスルの腹横筋を効かせる「ドローイン」の練習からスタート。他のエクササイズを行う最中にも、この感覚を常にキープしておこう。
- 仰向けで膝を曲げ、腰は自然なカーブを保ったまま骨盤の内側に指先を当てる。
- 息をゆっくり吐いてお腹を最大時の20〜30%ほど軽く凹ませ、指が下がれば腹横筋が正しく収縮したサイン。逆に指が押し返されたら、凹ませる力が強すぎてアウターの筋肉が働いているため注意を。3呼吸ほど繰り返そう。
伸展時痛タイプに効くピラティス。
ダブルストレートレッグストレッチ
腹筋を伸ばしつつ鍛えるエクササイズ。脚の重さが負荷になるため、勢いで下ろさないのが肝心。
サイドキック
脚を後ろへ引く股関節の伸展可動域は15度まで。骨盤を安定させ、股関節から脚を動かすようコントロール。
ローリングライクアボール
反り腰で伸展しすぎた腰椎をしなやかに屈曲させて、可動性をUP。
屈曲時痛タイプに効くピラティス。
シングルストレートレッグ
ハムストリングスを伸ばしつつ腸腰筋を強化して股関節の可動性を高め、腰椎への負担を軽減。
スイミング
腹筋を利かせながら、胸椎を伸展させてしなやかに。お尻の強化にも。
ブックオープナー|どの腰痛タイプにも効くピラティス。
腰椎よりねじりの可動性が大きい胸椎の柔軟性を高め、腰への無理なダメージを防ぐ。