水分
こまめな水分チャージが筋トレ効果を後押しする
トレーニング中の水分補給はマスト。体内に十分な水分が循環することで、筋肉増強に必要な代謝がアップするからだ。自体重トレ1回当たりで推奨される水分量は、ペットボトル1本分の500mL。セット間もしくは少なくとも種目の合間ごとに60mLずつ(ヤクルト1本分が目安)を強制的に。
さらに、トレーニング前後で150mLずつは飲んでおくようにしよう。喉の渇きは加齢とともに自覚しにくくなるが、水分不足のドロドロ血液はカラダへの負担となるため要注意だ。
スポーツドリンクの真実
運動中に飲む水分は、やっぱりスポーツ専用を名目にしたドリンクがよさそうに思う向きもある。だが実際のところ、大量に汗をかいて電解質(イオン)や糖質を急激に失うようなよほどハードで長時間の運動でない限り、飲むのは普通の水で構わない。
また糖分が高い傾向にあるため、ガブ飲みしてカロリーオーバーにならないように気をつけよう。
栄養
食事のベストなタイミングはトレーニングの2〜3時間前
ひと昔前は筋トレ直後の食事が筋肉の合成を促す“ゴールデンタイム”といわれたが、最新の研究ではむしろ、食後の血中アミノ酸値が高い状態で行うトレーニングの優位性が実証されている。
具体的には消化の時間から逆算して、筋トレの2〜3時間前に食事をするのが理想。タイミングを逃した場合、1時間くらい前に消化のいいバナナやプロテインなどを摂取しておくといい。筋肉の発達に必要となる栄養を、カラダが受け入れる態勢を準備しておくことがポイントだ。
トレーニング後のアルコール、飲むべきか、飲まざるべきか
筋トレ後の飲酒はNG、と聞いたことがあるかもしれない。確かにアルコールには、筋肉を分解したり、合成を阻害したりする作用がある。とはいえ、巷には見事な筋肉を持つ酒好きトレーニーが多数存在することもまた事実。まずは神経質になりすぎず、自分のアルコール耐性に応じて適量を楽しむのがいいだろう。
呼吸
パワーを出力するときは吸う・吐くのどちら?
筋トレでは力を出すとき、つまり短縮性のコンセントリック(=ポジティブ動作)では「息を吐く」のが基本。“数をカウントするときに吐く”とまずは覚えよう。
これに対して伸張性のエキセントリック(=ネガティブ動作)は「吸う」となるが、例外は背面トレのとき。胸郭を広げるときが吸うタイミングとなるため、ポジ・ネガの組み合わせが逆になる。
トレーニング中の呼吸、理想と現実的な対処法
そもそも動物のうち、口で呼吸をするのは人間だけ。生理学的に理想とされるのは鼻呼吸だが、とはいえ筋トレ中にこれだけではキツい。あまつさえ、力が入るあまり呼吸がつい止まることもあるだろう。
高血圧のほか、心臓などに基礎疾患がある初心者は特に注意しておきたい。対策としては、息が上がっている休憩中に鼻で息を吸い、その倍の時間をかけて吐くように意識すること。インターバルに腹式呼吸でゆっくり息を整えれば、トレーニング中の呼吸改善にもつながる。
筋トレ前後のケア
翌々日の筋肉痛…これって年のせい?
筋トレ後に遅れてやってくる、遅発性の筋肉痛。タイムラグの原因には諸説あるが、これはトレーニングによる筋肉の変化を神経が認知しているかどうかにも左右される。つまり神経的な感受性がニブくなると、この反応に遅れが生じるというわけ。その意味において、加齢を原因とするのは思い込み、という説もある。
筋肉痛への正しい対処法が知りたい
セルフケアを避けるべき目安は、筋肉に炎症が起きているかどうか。赤く腫れ、押して圧痛がある場合は下手にさわらず、落ち着くまで時間の経過を待とう。
それ以外で硬くなった筋肉は、微細な振動系や、圧をかけるなどのフォームローラーやマッサージガンといったアイテムを活用したい。ただしやりすぎには注意。
凝りは放置したままトレーニングすべからず
カラダを整えるプレパレーション、つまり準備運動は自体重トレでもマスト。
筋肉がガチガチに硬いままでは痛める可能性があり、トレーニング効果も上がりにくい。上でも紹介したアイテムなどを使って気になる部分を簡単にケアするほか、筋トレでは必ず使う肩・股関節を気軽にほぐせる以下の方法もおすすめ。
肩回し
両手を肩先に当てて、肘でグルグルと大きな円を描くように前へ回す。後ろへも同様に。各3回。
股関節回し
腰に手を当て、片脚を浮かせて外回し・内回しを各3回。壁などに片手をついてバランスを取ってもいい。
筋肉痛になるほどヤル気になる人へ
筋肉痛は一般的に、負荷がかかった筋線維の損傷が修復される過程で起きると考えられている。これを「頑張った証拠」とばかりにモチベUPへつなげる人は多いが、筋肉痛が起きなくても効果は確かに得られることは科学的にも実証済み。
ハードな筋トレを続けるアスリートが試合前に痛みを生じれば、それこそ大問題だろう。段階的なレベルアップの際には痛みを伴う場合もあるが、筋トレが習慣になれば頻度は少なくなるのが通常だ。
クールダウンの基本はスタティックストレッチ
筋トレの前後ではそれぞれ、適したストレッチがある。
まずウォーミングアップには、関節を滑らかに動かして血流を促す動的なダイナミックストレッチが最適。そしてクールダウンには、筋トレで短縮した筋肉を伸ばしてリセットし、カラダの歪みを防ぐ静的なスタティックストレッチが向いている。
ここで推奨するのは、背面の筋肉をまとめて伸ばすダウンドッグと、上半身の広背筋・大胸筋をほぐすラットストレッチの2種。短時間でもいいので、自体重トレ後に何もせず終わるのはNG、と心得ておこう。
ダウンドッグ
足を肩幅に開いた四つん這いの姿勢から、お尻を高く上げて30秒。キツい場合は10秒×3セットに分けても。
ラットストレッチ
床に膝をつき、上向きにした片手のひらを遠くへ伸ばす。そこからグーッとお尻を引いて30秒キープ。反対側も。
カラダ作り&ダイエット
筋トレ後の有酸素運動はマイナス効果ってホント?
トレーニング後の筋肉合成を妨げるという言説から、最近のトレーニング業界ではやや肩身の狭い感がある有酸素運動。だが、それは長時間で行った場合のこと。
細胞はエネルギーを使って代謝を繰り返すものであり、呼吸や血流を整えるという意味では、筋トレ後も15分程度の有酸素運動は行った方がむしろカラダにはいい。脂肪の燃焼効率を高めるダイエット目的なら、筋トレにプラスすることでより効果が得られるのは言わずもがなだ。
痩せたいなら飲んでおきたい、トレーニング前のコーヒー
筋トレ前のコーヒーは、もはやトレーニーの定番と言っていい。注目すべきは、脂肪の燃焼を促すそのダイエット効果だ。さらに脳への興奮作用で疲労が軽減し、持久力がアップするという働きも。これらはカフェインによる作用だが、液体のコーヒーによる摂取では筋トレ効率がより高いというデータも報告されている。
アミノ酸系の補助食品はカラダ作りのサポートに
筋トレ界隈でよく耳にする、BCAAやEAAといった補助食品。いずれもヒトが体内で合成できない必須アミノ酸の総称だ。筋トレの合間や前後の摂取で筋肉のエネルギー源になったり、筋肉の合成を促して分解を抑制したりする効果が期待できる。ただし栄養補給の基本はあくまで食事。“補助”ということを忘れずに。
頻度・回数
自体重トレでこなしたい、回数&セットの決め方とは
答えは自体重トレの種別で異なる。まず、カラダの末端が固定されたプッシュアップやスクワットなどCKC(クローズドキネティックチェーン)と呼ばれる種目は重力に逆らうため負荷が大きく、10回程度×3セットが目安。
逆に末端の手や足が固定されない種目のOKC(オープンキネティックチェーン)では動かす腕や脚への負荷が少ないため、1セットが20〜30回と多くなる。ただそれだと時間効率が悪いため、例えばロウイングなどはダンベルやペットボトルで負荷を足す工夫が必要となるのだ。
カラダの変化を感じるため、続けたい期間はまず3週間
筋トレを始めた初期はまず神経系が発達し、筋力が効率よく働くようになる。これは筋肉の使い方が上手くなって、いわば動けるカラダになるということ。この感覚は初心者ほど得られやすい。
筋肉の発達がその先にあり、3週間〜1か月ほどで筋肉への意識やハリ感なども含めて、何らかの明らかな変化を感じられることだろう。筋肉のサイズアップを目指すなら、実際に筋線維が太くなるまでトータルで3か月は必要。いずれにしても、継続が必要かつ重要なカギとなる。
なるべく早く結果を出す、筋トレの理想的なペースは?
筋トレのルーティンには、一回のトレーニングで全身を鍛える「全身法」、部位を絞って複数回に分ける「分割法」がある。このうち初心者に推奨したいのは、基礎的なプログラムを元にした週3回・1日おきの全身法。
慣れないうちは週のトレーニング計画が立てづらく、また分割法で部位を絞っても効きが分かりづらい。最低でも週2回、まずは「やる!」と決めて習慣づけることが肝要だ。
インターバル
セット間の休憩時間は30秒〜1分を目安に
セット間の適度なインターバルは、筋肉の発達を促すのに必要な要素のひとつ。鍛える筋肉のサイズによっても差があるが、マシンに比べて刺激が弱い自体重トレの場合は30〜60秒もあれば十分だ。
逆に時間が長すぎると、効果が弱まるため注意しよう。ちなみに頻度におけるインターバルとしては、トレーニング後48〜72時間(2〜3日)の休息を取るのが効果的といわれる。筋肉痛がある場合は3日目、落ち着いてきたタイミングで軽めのトレーニングを行うのがいいだろう。
「10回×3セット」のメニュー。時短のために連続30回でもOK?
筋トレでは、限界に近いところ(=オールアウト)まで行う回数で1セットとし、これを繰り返すことで筋肉の発達が促される。自体重トレでは一般に10〜12回/1セットで限界となるのが負荷の目安だが、もし30回できる負荷ならば、これを3セット行う必要があるという計算だ。
ただし必ずしも極限まで追い込まなくとも、筋肉はそれなりに発達してくれる。ストイックな“オールアウト至上主義”にとらわれず、楽しみながら続けられる負荷やペースを見つけよう。
隙間時間を使って1日3回、計3セットの筋トレ効果はいかに
残念ながら、同種目を小分けで行ったときの効果はかなり落ちる。その理由は、筋疲労で発生する科学的ストレスによって筋肉の成長が効率よく促されるため。疲労がすっかりリフレッシュされてしまうと、この作用が期待できないのだ。
ただし、部位の異なる複数セットのメニューを小分けにするのはまた別の話。午前・午後で行うトレーニングという意味から「ダブルスプリット」と呼ばれるこのテクニック、空き時間を活用して筋トレを習慣づける方法としてもおすすめだ。
負荷
自体重トレの効果UP、スピードの利かせ方
基本は正しいフォームでゆっくり、勢いで反動をつけるのはもちろんNG。ただし人間のカラダは、疲れない省エネの動きを自然と覚えてしまう。自体重トレの場合、こうした“慣れ”によるマイナス効果はマシントレに比べて顕著だ。
そこでトライしたいのが「スロー&クイック」というテクニック。同じ種目でも例えば、遅い・速いを10回1セットとしてメニューを組み立てると、筋線維に違うタイプの刺激が入る。メリハリある自体重トレのバリエーションを楽しみたい。
同じメニューを継続VS別メニューを並行する。ひとつの部位を鍛えるのに、どっちが効果的?
初心者はまずバランスのいい基本メニューを一定期間は続けて、カラダの土台をしっかり作ることが必要。とはいえ同じトレーニングばかり数年単位で続けると、その種目特有の体型になりやすい。
期間を決めて追い込むトレーニング法は別として、ベテラントレーニーにも多いこうしたカラダの“墓石化”を防ぐには、やはり並行して別メニューも取り入れていきたいもの。初心者の場合も弱点部位のメニューを好き嫌いなく行うことで、カラダはより多角的に鍛えられるのだ。
効いてる感がつかめない。見直すべきポイントは?
重要なのは正しいフォーム。そのためまず見直すべきは姿勢、つまり体幹が整っているかどうかだ。
頭・肩甲骨・仙骨(骨盤の中央)が一つのライン上にある体軸の強さを「ピラー(=柱)ストレングス」といい、カラダの土台をしっかり作ることで四肢へ効かせる動きができる。へそ下からおよそ指4本分、武術などで用いる「丹田」を意識するのもいい。
そのほか自体重トレの前に効かせたい部位を軽くさすっておく(軽擦法)、タッピングするなども、組織を刺激して鍛える箇所に意識を集中するうえでは効果的だ。
全身をまんべんなく鍛える、自体重トレの黄金メニュー
ここでは上半身と下半身、カラダの前面から背面までを網羅した5種目をラインナップ。各10回×3セットで、トータルの所要時間も20〜30分程度だ。
さらに自体重トレで全身法を行う利点のひとつに、各種目を順に1セットずつ繰り返すサーキットトレーニングにアレンジできることがある。
特定部位に疲労が蓄積するのを防ぎ、心肺機能を鍛えられるのもメリットだ。自体重トレでは厳密な順序を気にする必要性もなく、バリエーションの変化がマンネリ予防の味方にもなる。
① スクワット
下半身のキング・オブ・自体重トレは、重力に逆らって立ち上がるときにその効果を発揮する。
② クランチ
腹筋強化で知られるが、硬くなりがちな背骨を丸めて動きをよくする効果も実は期待できる。
③ プッシュアップ
主に胸まわりの筋肉を強化。足を台に乗せる、膝を床につくなどで負荷の増減もやりやすい。
④ バックエクステンション
見落としがちな背面トレも忘れずに。下背部を主に鍛えることで、姿勢の改善にも役立つ。
⑤ ベントオーバーY
膝を曲げて前傾姿勢を保ちつつ両腕を「Y」の字に上げて下ろすを繰り返す、上背部の強化。
日常生活での続け方
筋トレを三日坊主にしない、モチベの上げ方と工夫
強力なモチベとなるのは“なぜトレーニングをするのか”という明確な理由と動機づけ。例えば運動不足のメタボ改善が目的なら、筋トレによる効果のエビデンスを知ればヤル気はさらにアップする。
“こんなカラダになりたい”という写真や紙に書いた目標を、見える場所に張っておくのもいいだろう。そのほか、上で紹介したようなルーティン化の工夫も、脱・三日坊主の大きな助けとなる。
筋トレとともにある日々のマインドセッティング
初心者の場合は特に、規則正しいトレーニング習慣を身につけることが重要だ。
一定のリズムで生活に取り入れることで、カラダも適応しやすくなる。おすすめは、トレーニングの予定を先に決めて手帳やスケジュール管理ツールに書いておくこと。
さらにトレーニングの最中やその後でも回数や感想などを記録しておくと、積み重ねた実感が結果へとつながっていく。飽きずにルーティン化して続けられる工夫が、トレーニングの楽しみにもつながっていくはずだ。
トレーニングに適した時間帯は? 避けるべきタイミングはある?
ヒトの生体リズムにおいて、筋力が最も高まるのは夕方頃というのが定説。とはいえ個人差が大きく、自分の生活リズムに合う時間帯がベストというのがここでの結論だ。
避けたいのは消化に負担がかかる食後や、カラダのスイッチが入り切らない起床直後の時間。無理なく続けられるタイミングを試して見つけよう。