疲れない理想の座り方「ゼロポジ座り」で不調を防ぐ
いくら座りすぎがカラダの不調に繋がるからといって、座る時間をゼロにすることは限りなく難しい。そこで、疲れない理想の座り方“ゼロポジ座り”を習得しよう。“ゼロポジ座り”って一体? ありがちなNG例も併せて紹介。
取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 イラストレーション/野村憲司(トキア企画) スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾
初出『Tarzan』No.849・2023年1月26日発売
教えてくれた人
中村格子さん/なかむら・かくこ Dr.KAKUKOスポーツクリニック院長。整形外科医、スポーツドクターとしてトップアスリートのケアに努めるほか、自身のクリニックでの診療、テレビや雑誌など多くのメディアで活動中。
身につけるべきは正しい座り方
みなさんご承知のことと思うが、「座ること=悪」ではない。座ってじっくり集中しないと内容の濃い企画書が書けない場合もあるだろうし、顔を突き合わせて座ることで仕事の連帯感が生まれることもある。
では、どうしても一日のうち一定時間座らなければならないとしたら、座りすぎの弊害を避ける方法は?それはただひとつ、「正しい座り方」を身につけることだ。
「疲れない理想的な座り方は“ゼロポジ座り”です」と言うのは、整形外科医の中村格子さん。
「私のクリニックを訪れる症状の軽い方で、運動を長く実践できる方はとても少ないんです。でも“ゼロポジ座り”なら、首、肩、腰に負担をかけず、カラダが疲れにくくなります。その結果、座っているだけで健康寿命を延ばす効果が期待できると考えられるのです」
はて、そんなマジックのような“ゼロポジ座り”とは一体?
そもそも“ゼロポジション”とは医学用語で骨格の並び、アライメントに歪みがなくニュートラルな状態。
骨格は周囲の筋肉や靱帯に支えられているが、歪みがあると特定の部位に負担がかかる。一方、負担が適度に分散されるとカラダはそのポジションをとっても疲れない。座り方にしても理屈は同じ。
これを中村先生は“ゼロポジ座り”と命名した。
「“ゼロポジ座り”の基本は座ったときに股関節を110〜120度に保つということです。一般的に良い姿勢で座ってくださいと言うと、みなさん股関節と膝を90度に曲げ、骨盤を立てた座り方をしがちです。
でも股関節をずっと90度に曲げておくのは、体幹の筋肉が鍛えられていない人にとってはキツい作業。私が勧める“ゼロポジ座り”の股関節の角度、110〜120度は万人にとって疲れにくいことが人間工学的にも分かっています」
これが正しい“ゼロポジ座り”
- 頭が骨盤の真上に位置する
- 背筋はまっすぐ
- 背もたれに背中をつける
- 股関節は110〜120度
- 膝は太腿より10cm下
- 両足をしっかり床につける
椅子に座って左右の坐骨に均等に体重を乗せ、背もたれに背を預けて骨盤を立てる。
膝を太腿の付け根より10cm程度下げ、両足は床から浮かせずしっかり床につける。すると股関節は自然に110〜120度の状態に。
実際、一般的な椅子の規格は股関節が110〜120度になるよう作られているという。一方、多くの人に見られる典型的な悪い座り姿勢は下の通り。これらが習慣化するとカラダにさまざまなトラブルが。
NGな座り方① ヘソ折れ
お腹部分から上体が折れている座り方。骨盤は斜め前方に滑らせたような形になり、ヘソから上をまっすぐ保とうとするため、ヘソ部分にシワができる。肩こり、腰痛、内臓圧迫による機能低下が起こりやすい。
NGな座り方② 脚組み
脚を組むと肩と頭が前に出て骨盤が後傾しやすい。海外の研究報告によれば、1日に脚を3時間以上組んで座る人は組んでいない人に比べて肩こりになりやすいそう。脚を組み替えたとしてもこれは同様。
NGな座り方③ 顎出し
上背部が丸まったいわゆる猫背で、さらに頭と顎が前に出ている座り方。電車のシートでスマホ操作をしている人のほとんどはこの座り方。肩や首の凝り、腰痛のほか、胸郭が圧迫されて呼吸が浅くなることも。
NGな座り方④ 顎出しヘソ折れ
現代人に最も多いと考えられるのが、この顎出しとヘソ折れの複合型。頭が前に出ることで腰に負担がかかり、骨盤が後傾することで腰にも負担が。これではちょっと座っただけで疲れるのは当たり前。
「頭の中で“ゼロポジ座り”の感覚を覚えておくことが重要です。ソファやリクライニングが強い椅子でも、疲れにくいポジションをとることで長時間座っても疲れにくく、カラダのトラブルを防ぐことができます」
いつでもどこでも座るときは“ゼロポジ座り”を意識しよう。