ソファ、運転席、床座り…。シーン別・楽で疲れない座り方
座りすぎはカラダに負荷を掛ける一方で、日常生活で座らなくてはいけないシーンは多い。そこで、習得したいのが骨格をニュートラルな位置で保ち、負荷を分散する“ゼロポジ座り”。今回は、ソファやベンチ、スツール、運転席など、シーン別にカラダが疲れない楽な座り方を解説。
取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾
初出『Tarzan』No.849・2023年1月26日発売
教えてくれた人
中村格子(なかむら・かくこ)/Dr.KAKUKOスポーツクリニック院長。整形外科医、スポーツドクターとしてトップアスリートのケアに努めるほか、自身のクリニックでの診療、テレビや雑誌など多くのメディアで活動中。
いくら座りすぎがカラダに悪いといえども、仕事に限らず、どうしても一定時間座らなくてはいけない場面は日常のあちこちに存在する。
そこで、座りすぎの弊害を避けるために身につけたいのが骨格をニュートラルに保ち、負荷を分散する“ゼロポジ座り”(詳しくはこちらの記事:疲れない理想の座り方「ゼロポジ座り」で不調を防ぐ)。
今回はソファやベンチ、床などシーン別に正しい座り方を紹介する。
目次
ソファ|座面の奥行きと沈み込みが悪姿勢を招きやすい
立ったときと同じように骨盤の上に上体が乗るのが楽な座り方。
左のNG例では骨盤はほぼ寝た状態と同じポジション。腰に多大な負荷が。座面の奥行きが広いときはクッションを背中に当てる。背中全体を背もたれに当てて骨盤を立てれば、美しく疲れにくい座り方に。
背もたれが低い椅子|顎出し座りになりやすく、総じて疲れやすい
背もたれが低く、座面と背もたれがラウンドしている椅子に背中を預けると、自然と顎出し座りになる。肩や首こりの原因に。
ここは骨盤を自力で立てて背もたれには頼らない。とくに腹筋の力は不要。上体を骨盤の上に乗せれば自然と姿勢が整う。
ベンチ|座面と背もたれが直角。骨盤が後ろに倒れやすい
電車のシートがこの形。スマホに集中しているうちに骨盤がどんどん前方向に滑り、すっかり後傾状態。そのうえ脚を組んだら最悪。
前に滑りがちな骨盤を後方に持ってきて直角のシートに沿わせよう。頭が骨盤の真上に来るようにすればスマホをガン見しても楽ちん。
床座り|悪姿勢改善に座布団一枚を活用
床座りでやりがちなのが右の「お姉さん座り」と左の「女の子座り」。前者は骨盤に左右差が生じ、後者は股関節や膝に負担がかかる。
といっても正座もまた膝に負担がかかる座り方。床座りのおすすめは座布団を二つに折ってお尻の下に敷き、馬乗りになる座り方だ。
床であぐらをかくときに多いのが骨盤が後傾し、背中が丸まって頭が前に出た状態。腰椎にテンションがかかりまくるので腰痛必至。
座布団を二つに折ってお尻の下にかませる。すると自然と骨盤が立ち、背すじがピンと伸びる。これが心身ともに健やかになる姿勢。
運転席|長時間の運転で疲れるのはシートのポジションのせい
シートを後ろに引きすぎると背中がシートから離れて顎が上がり首に負担がかかる。これでは短時間の運転でも背面がバリバリに。
シートを前に移動させて背中をしっかり背もたれにつける。腰椎のカーブをサポートするシートなどを利用するとなおよし。
ハイチェア|両足を安定させることが疲労軽減のポイント
NG例はフットレストに片足の踵を乗せ、反対側の足はフリー。疲れにくい座り方の条件のひとつは両足を床につけ、床反力の支えを得ること。
両足をフットレストに乗せると姿勢が安定。骨盤の上に上体が垂直に乗り、立ち姿勢とほぼ変わらない姿勢に。これなら座り疲れなし。
スツール|背もたれがないからこそ座り方には工夫が必要
背もたれがないので上体が不安定。なのでつい脚を組み上体の重みを預けてしまう。これヘソ折れ、顎出し、脚組みのトリプル悪姿勢!
座面の気持ち前側に座って骨盤を立てる。頭を骨盤の真上にポジショニングすれば自然と背すじが伸びるはず。見た目にも美姿勢。
ローチェア|自分にとって低すぎる椅子に座るときはクッションを活用
“ゼロポジ座り”の鉄則は膝が太腿より低い位置にあること。低すぎる椅子に座るとその真逆。股関節の角度が狭くなり疲れやすくなる。
クッションを何枚でも重ねて膝が太腿より若干低くなるポジションを作る。その結果、骨盤が立って背すじが伸びる。
座り時間の大半はデスクワーク。机の高さはどうする?
日本人が世界一座る時間が長い理由は、ひょっとすると世界一勤勉にデスクワークに励んでいるせいかもしれない。ならば椅子の座り方だけでなく、机の高さにも注意を払いたいもの。
上の写真で言うと、一番左は机の高さが低すぎて肘が鈍角。これではPC作業で手首を起こさなければならないので負担がかかる。逆に真ん中は高すぎて肘の角度が鋭角。肩がすくむので肩こりの原因に。
正解は一番右の肘が直角になる高さ。オフィスやテレワークでは椅子の高さに合わせて机の調整を。古い規格に合わせるのではなく自分のサイズに合ったデスク環境を作ろう。