もっと歩きたくなる!歩くの質を上げる“上半身ウォーク”
ウォーキングをしていると、ついつい下半身ばかり意識してしまうが、効率的な歩き方を身につけるなら注目すべきは上半身。上半身を使って推進力を生み出し、長く、楽に、効率的に歩けるウォーキング術を習得しよう!
取材・文/井上健二 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 ウォーキング監修/池田ノリアキ(ウォーキングトレーナー)
初出『Tarzan』No.843・2022年10月6日発売
池田ノリアキさん
教えてくれた人
いけだ・のりあき/ウォーキングトレーナー。ウォーキング講師歴27年。アシックスに35年勤務してフットウェア企画開発やウォーキング講師に従事。健康運動実践指導者、転倒予防指導士、健康経営アドバイザー等。
歩きを変えるなら鍵となるのは“上半身”
ウォーキングでは下半身に目が行きがちだが、効率的な歩き方を身につけるなら、注目すべきは上半身。
「推進力を生み出すエンジンは、多い方が有利。下半身だけで歩くとエンジンは1つですが、上半身も使うと2つになる。体重の約70%は、頭部や臓器を抱える上半身が占めます。
体重70kgなら約50kgが上半身で、残り20kgが下半身。仮に下半身だけで歩くと、20kgの重みで50kgを背負うことになります。それでは、しんどくなり、長く歩きたくなくなるのは当然です」(池田さん)
池田さんが、上半身の大切さを再発見したのは、競歩の大会をテレビで観たのがきっかけだという。
「なぜ、選手たちはあんなに速く歩けるのだろうと疑問に思い、フォームをよくよく観察したら、みんな肘を後ろに強く引き、上半身をダイナミックに使っていました。それで、歩きを変えるなら、上半身を活用すべきだと腑に落ちたのです」
上半身の動きは歩幅UPにも効果アリ
ウォーキングでは、いかに歩幅を広げるかが大きな課題。そうなるとやはり下半身が気になるが、歩幅を広げるのも、上半身にほかならない。
「肘と肩と肩甲骨をセットで大きく引くと、みぞおち(胸椎の12番近辺)前後で背骨がツイストされて、反対側の骨盤と股関節から脚が前に押し出されるので、歩幅は広がります。
歩幅=ストライドだけではなく、肘をコンパクトに速く引くと、つられて脚も速く出るようになり、ピッチも上げられるのです」
注意したい下半身のポイントは?
下半身のポイントは、肘を後ろに引いたら、同じ側の膝を伸ばしてロックしたまま、腰の真下あたりで踵から着地すること。着地した足に、腰を乗せるように体重をかけたら、あとは左右交互に繰り返すだけ。
「歩幅を広げようと無理すると、前へ振り出したときは膝が伸びているのに、着地する頃には緩みがち。すると膝が不安定になり、膝の屈伸で上下動が生じて、膝関節への負担が増え膝を痛めやすくなります」
後ろ足を爪先の先の先まで使い、できるだけ長く地面をプッシュし続けることも重要。すると、お尻の大臀筋、太腿後ろ側のハムストリングスといった背面の強い筋肉が使えて、歩幅はさらにワイドに。
「歩幅というと、前方ばかり気にかかりますが、歩幅は前よりも後方への“後ろ歩幅”を広げるべき。そのためにも、後ろ足の爪先で地面を押し続けることが大事なのです」
上半身ウォークのやり方
- 目線は目の高さの延長線上を見る。
-
猫背にならず、頭を背骨の真上に置く。
- 肘から腕を大きく後ろに引く。
- 肘をカラダよりも前に出さない。
- 爪先(親指)を進行方向に向ける。
- 後ろ足の爪先まで使い、地面を後ろにしっかり押す。
- 歩幅を広げ、両脚で「人」という字を描く。
- 手が視界に入らないようにする。
- 肩甲骨を動かし、背中の筋肉を使う。
- 下腹(丹田)に軽く力を入れる。
- 膝をロックしてしっかり伸ばす。
- 腰幅で両足をまっすぐ前に振り出す。
- 爪先を上げ、踵から腰の真下に着地する。
上半身ウォークを作る3つのドリル
⓪ 準備|シューズフィッティング
足とシューズが一体化していないと、正しく歩けない。
まずはシューレースをすべて緩めてから、踵を地面にトントントンと打ちつけ、ヒールカップに収める。爪先は上げたまま、足にシューズをフィットするようシューレースを下から上へ締める。
ステップ①|背すじを伸ばし、目線を高く保つ
爪先立ちになり、両腕をまっすぐ上へ伸ばし、背骨を伸ばす。両腕を耳の後ろまで引き、左右の肩甲骨を寄せる。大きな弧を描くように両腕を体側に下ろしつつ、踵もストンと下げる。その姿勢を保ち、まっすぐ前を向いて歩く。
ステップ②|肘を後ろに引いて、骨盤を動かす
手を蒸気機関車の車輪のように大きく回しながら、肘を大きく後ろに引く。肘を戻した際、カラダより前に出ないように。目線に拳が入ったら、腕を前で振っている証拠。その場で肘を後ろに引きながら、骨盤と股関節が動くことを確認しよう。
ステップ③|膝を伸ばして踵から着地し、乗り込む
まず肘を後ろに大きく引いてから、同じ側の脚をまっすぐ前へ振り出す。膝をロックして伸ばしたままで、爪先を上げて踵から着地する。踵から親指へと荷重するのに合わせて、腰の真下で体重を乗せて乗り込む。