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“スリップインするだけ™”じゃない!《スケッチャーズ スリップ・インズ》快適学。
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耳にしたことはあるけれど、どんな効果があって、どう行うのかイメージが湧かない…。そんなピラティスのメリット&やり方を紹介!
目次
ピラティスがリハビリから発展したといわれるのには、以下のような背景がある。
第一次大戦下、イギリスで捕虜として収容されたドイツ人のジョセフ・ピラティスは、収容所の囚人たちにエクササイズを指導。さらに、負傷兵でも運動できるようベッドを改造してオリジナルの器具を作製した。
エクササイズのヒントになったのは、ヨガや体操の動き。さらに動物園で見た動物(おもに猫)の滑らかな動き。その動きを模倣して独自のエクササイズを作り上げたという。これがすなわち、インナーマッスルを駆使してカラダに軸を作るピラティス・エクササイズだ。
戦後、アメリカに渡ったピラティスはニューヨークで自らのスタジオを立ち上げる。そこへ近くのダンススタジオに通うダンサーたちが訪れるようになり、「ケガの改善に効果的」という評判を呼んで、姿勢改善や健康維持のためのエクササイズとして認知された。現在では医療の現場でも理学療法士による指導が行われている立派なメソッド。
アウターマッスルは手でさわれる表層の筋肉。適切に鍛えればどんどん肥大してボリュームアップが可能だ。これに対してピラティスが重視するのは手で触れることができない深層筋のインナーマッスル。
動物の動きがスムーズなのはインナーが使えているから。アウター頼みでカラダを動かすとどうしてもギクシャクとした動きになる。だから腹横筋や多裂筋を使いましょう!と言われても、手でさわれないインナーなんて意識できないし。
というわけで、なにやら難しそうな印象を持たれがちなピラティス。でも、実はシンプルな話で、頭を正しい位置に置き、首と背中を伸ばしながら動けば、勝手にインナーは稼働する。これが、軸を伸ばす=エロンゲーションというピラティスの大原則。「伸びながら動け!」。ぶっちゃけ、これだけでOKなのだ。
ピラティスでいうところのエロンゲーションは、医学的に「抗重力伸展活動」という。
二足歩行のヒトは起きている間、常に重力という負荷を受けて生きている。とくに運動をしなければ直立姿勢を支える筋肉は加齢によってどんどん衰え、背骨が潰れて硬くなり歪んだ悪姿勢に。その結果、肩こり、腰痛、むくみ、代謝不良などの不調が表れる。ならば、重力に対抗してカラダを伸ばして健康を取り戻せばよい。それがピラティスさんの大発見。
というわけで、ピラティスの一番の効果は姿勢の改善。これによって痛みや凝りの解消、太りにくいカラダづくりなど、さまざまな特典がくっついてくる。さらにインナーマッスルを鍛えることで動作が滑らかになり、ケガの防止や繊細な身体表現も可能になる。
また、正しい姿勢は「正しいスポーツの構え」に繫がる。イチローやロナウドなど超エリートアスリートがピラティスを取り入れている理由がこれ。スポーツパフォーマンスの向上にも繫がるのだ。
息を吐くときにお腹を引き締め、吸うときには肋骨を広げてしっかり胸に酸素を入れる。これがピラティスの基本となる胸式呼吸。胸式呼吸は交感神経を、お腹を膨らませたり凹ませる腹式呼吸は副交感神経を活性化させる。ヨガでは腹式呼吸が取り入れられるのに対して、ピラティスは徹頭徹尾、胸式呼吸がセオリー。
というのも、重力に逆らってすっくと立つというのは、戦闘モードの姿勢だから。これから狩りをしようというとき、背中が丸まったリラックスモードではまともな成果は期待できない。なので呼吸で姿勢をサポートするのだ。
ただし、初心者は呼吸を意識しすぎると動きが止まってしまうこともある。呼吸は動きに伴って自然に行われるので、最初はあまり気にしすぎないこと。
ピラティスのスタジオではイクイップメントという道具を使って行うのが一般的。姿勢をサポートしたりバネで抵抗をかけたりとエロンゲーションの効果を最大限に引き出せるのがその利点。とはいえ、おうちピラティスで大がかりな道具を取り入れるのは、まず無理。
ピラティスにはマットの上で行うマットピラティスというジャンルもある。ポーズをキープしたり、効かせる部分を意識するのが難しいとされるマットピラティスだが、そこは心配ご無用。正確にトレースできるメニューで十分な効果が望めるはず。
ベストタイミングは交感神経が活性化している日中から夕方にかけて。朝イチではピラティスで重要視している背骨の動きが悪いので適応するのが難しい。重力から解放される就寝中は椎間板の水分の含有量が多いので、朝は背骨が動きにくくヘルニアのリスクも高いのだ。
習慣的に朝の方がいいなら、ヨガ同様1時間ほど早起きして上体を起こして過ごし、椎間板の水分量が落ち着いてから行おう。
また、夜寝る前のピラティスはくれぐれも避けること。交感神経が興奮して眠りにつきにくくなるので、ご用心。
取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/加藤恵 取材協力/中村尚人(理学療法士、ヨガ・ピラティスインストラクター)
初出『Tarzan』No.796・2020年9月24日発売