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本当の深呼吸「真呼吸」で乱れた自律神経を整える!

深呼吸しやすいカラダは、マッサージやストレッチで作れる。カラダの疲れを感じたら、正しい「真呼吸」で自律神経をセルフケアしよう。

鼻呼吸を意識すれば、自然と深い呼吸ができる。

カラダの疲れの一因が、酷使される自律神経系の乱れにあることはよく知られる通り。しかし実は、呼吸のやり方次第でそのバランスを整えることが可能だという。

「深い呼吸はアドレナリンの分泌を下げ、交感神経優位から副交感神経優位にうまくチェンジしやすくなります」(財前知典先生)

しかし私たちの多くは交感神経が優位に働く時間が長いことや寝不足、疲労などで非常に浅い呼吸をしているという。さらに昨今はマスク着用時間が長く口呼吸になりがちなのも原因のひとつだ。

「勘違いされがちですが、呼吸の基本は”鼻から吸って鼻から吐く“です。鼻呼吸は意識せずともお腹を使った腹式呼吸になり、酸素が体内にたっぷり入る深呼吸が楽にできるようになります」

深呼吸のメカニズム
深呼吸のメカニズムを理解しよう/一般的に、腹式呼吸は息を吸うときにお腹を膨らませるというイメージがあるが、本当は息を吸うと横隔膜が下がり、お腹を膨らませる力が加わって、その力に負けないよう腹横筋がお腹を凹ませている。つまりわざとお腹を膨らませると腹圧が逃げてしまい、意味がない。鼻で呼吸すると図のように自然な腹式呼吸ができる。

無理やりお腹を膨らませなくても深呼吸は十分可能。この「真呼吸」を身につければ心身は自然とリラックスできるようになり、乱れていた自律神経系はちゃんと整っていく。これ、意外と簡単!

鼻で吸い、鼻で吐く。財前式「真呼吸」のやり方

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吸う

真呼吸のやり方 ①

椅子に浅めに座りカラダの力を抜いて背すじを伸ばす。3秒程度ゆっくり鼻から息を吸い、1~2秒息を止める。

吐く

真呼吸のやり方 ②

10秒間鼻から息を吐く。寝る前など1日10分続けよう。そのうち普段から意識せずに鼻呼吸できるようになる。


かんたん筋膜リセットでさらに深い呼吸を習慣に。

ゆっくり鼻呼吸をする習慣がつくと自然と深呼吸が身につくわけだが、もう一歩進んで「深呼吸しやすいカラダ」にマッサージで導いてあげましょう、と財前先生。

「呼吸をすると横隔膜に加え、胸まわりの複数の筋肉や筋膜も大きく動いて胸郭が前後に広がります。つまり胸郭や付随する筋肉や筋膜を緩めればより深い呼吸がしやすくなりますが、それらに連結する筋膜をセルフマッサージすれば、簡単にその状態に導けるのです」

胸まわりを覆う筋膜は上腕から手まで繫がる。そこをマッサージすると胸郭まわりの固くなりがちな筋膜も自然と緩んでいくという。

胸部〜手先の筋膜の繋がり
胸部〜手先の筋膜の繋がり/胸まわりを覆う胸筋筋膜から上腕筋膜、上腕二頭筋腱膜、そして前腕筋膜に長掌筋腱、手掌腱膜と、手先まで繫がっている。一つの筋膜を緩めると、繫がる他の筋膜にも波及する。母指球や前腕にアプローチしよう。

「特に、前腕や手の筋膜はパソコン作業で酷使しますので、緩めてあげると効果的。マッサージに加えエクササイズを数種類、毎日実践すれば呼吸もしやすく、肩こりは改善され、カラダもうんと楽になります」

1. 母指球&前腕マッサージ

まずはカラダの先端から緩めよう。手のひらの母指球あたりは、普段のスマホやパソコン作業の影響で知らず知らずのうちに筋肉疲労で凝り固まりがち。筋膜をマッサージすると実感できるはず。そこと繫がる前腕も内側、外側ともにほぐして緊張を取り除こう。

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母指球マッサージ

07-1

椅子に座り、肩の力を抜く。お腹の前で片方の手のひらを上に向け、反対の手で握り親指を使って母指球付近をグリグリと痛くならない程度にマッサージ。反対側も同様に行う。

前腕マッサージA

母指球&前腕マッサージ  ②

前腕の肘の約3cm下、その外側をもう片方の親指、または親指の付け根を使ってもみほぐす。毎日続けると腕や肩まわりが楽になっていくはず。

前腕マッサージB

母指球&前腕マッサージ ③

Aとは反対に前腕の肘の約3cm下、その内側を反対側の親指、または親指の付け根でもみほぐす。肌が柔らかいのであまり強く押さず、丁寧に。

2. 脇腹ストレッチ

風呂上りの全身の筋膜が緩んでいるタイミングで鏡の前にまっすぐ立ってみよう。仮に左の方が下がっていれば、カラダを右に倒すストレッチを。反対に右の肩が下がっている場合はカラダを左に倒してストレッチ。

脇腹ストレッチ

椅子に座り、肩が下がっている方の反対に上体を倒し、同時に腕を上げる。そのまま30秒キープ×3セット。硬い方の胸筋筋膜から上腕筋膜付近がストレッチされる。

3. 体幹回旋

椅子に浅めに座り、カラダを左、右に寄せて各々の尻に重心をかける。このとき楽に鼻呼吸できる方にカラダを回旋させると、詰まり気味になっている側の胸郭や脇の下が緩んでいく。

体幹回旋

胸のあたりで腕をクロスさせ、そのまま片側重心呼吸で楽に鼻呼吸できた方向にカラダを捻り、10回程度繰り返す。このとき重心は回す方向にやや寄せるよう意識する。

4. 体幹の左右バランス

上述と同じくまずは椅子に浅く座り、カラダを左、右と交互に寄せて左右の尻に重心をかける。このとき左右どちらが楽に鼻で息を吸えるだろうか。もし左が楽なようであれば、左の胸郭付近が詰まり気味な証拠。左側を緩める必要がある。

体幹の左右バランス

片側重心呼吸で左に寄った方が楽な場合、腕を左右に広げてカラダを左に寄せて30秒キープ。これを続けることで次第に右の胸郭が緩み、右重心でも息が吸いやすくなっていく。左右の呼吸バランスを整えるストレッチだ。

5. 前腕をつまむマッサージ

先ほどの体幹回旋エクササイズの効果をさらに高めるべく行いたいマッサージ。片側重心呼吸で楽に呼吸できた方の反対側の前腕部、肘下3cmあたりを逆の手で握ってほぐすと、カラダが硬くなっている側の上肢の筋膜群も緩んでいく。

前腕をつまむマッサージ

肘の下の写真のあたり、前腕で一番膨らみがある部分を反対側の親指でギュッと強めに30秒程度つまんでほぐしていこう。これを風呂上がりや仕事中の息抜きに行うと筋膜が緩み、上腕や胸部の緊張も取れていく。

6. 首倒し

椅子に浅めに座って背すじを伸ばし、肩の力を抜く。頭を右に倒し、続けて左側に倒してみよう。ともに倒しながら鼻呼吸したとき、どちらが吸いやすいだろうか。吸いやすい側に首をさらに倒すことで首と肩の間の僧帽筋や頸筋膜が伸ばされ、上腕筋膜も緩んでいく。

首倒し

左に倒した際に呼吸が楽な人は、左手で右側頭部を持ち、頭をさらに左に倒して首まわりをストレッチ。逆に右倒しの方が楽に呼吸できるなら右手で左側頭部を持ち、頭を右に倒してストレッチ。いずれも30秒×3回程度。


呼吸法はばっちり。さらに自律神経を整えたい、という人は、次回の背骨編でタイプ別のストレッチを行おう。

教えてくれた人
財前知典 先生

財前知典先生(ざいぜん・とものり)/理学療法士、PTNEXT代表。東京・広尾整形外科副院長を経て現職。個々のカラダの動かし方に着目した不調解消エクササイズ「ネックス」を考案。https://ptnext.asia

取材・文/黒田創 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/村田真弓 イラストレーション/YUNOSUKE 監修/財前知典(理学療法士、PTNEXT代表)

初出『Tarzan』No.794・2020年8月27日発売

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