6つのQ&A。人はなぜヨガをやるのか、どうヨガをやればいいのか
運動不足の人も自称トレーニーもまずは試してみてほしい。ヨガのメリット&やり方を紹介!
取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/加藤恵 取材協力/中村尚人(理学療法士、ヨガ・ピラティスインストラクター)
初出『Tarzan』No.796・2020年9月24日発売
ヨガは女性のもの。そろそろそんな考えは手放してほしい。イライラもやもや、腰痛に肩こり、これらを解消する最適メソッドがあるなら、それが自宅で手軽にできるのなら、先入観など即刻捨てて臨むべし。
目次
① ヨガを行うことでどんな変化が起こる?
内部感覚に意識が向き、自律神経が整う。
明るくなったら目を覚まし、お腹が空いたら物を食べる。現代の暮らしぶりでは、この当たり前の生き方をするのが難しい。夜更かし寝坊は当たり前、昼夜逆転することもあれば、多忙で食事を抜くこともザラ。
で、何が起こるかというと、一日のオンオフのシフトがうまくいかず、自律神経が乱れに乱れる。この状態をリセットするのに役立つのが、ほかならぬヨガだ。
というのも、ヨガは己の内部感覚にフォーカスする作業。ヨガのポーズをアーサナというが、カラダを捻ったりバランスをとったり逆立ちしたりするアーサナは「今」の自分の肉体に集中せねば実践できない。すると自然に五感からの外部情報がシャットアウトされる。
マインドは過去や未来に簡単に引っ張られるが、カラダは今現在にしか存在できない。そこに意識を向けることがカラダの恒常性を取り戻すことに繫がる。つまり、自律神経が整い、過去の出来事にクヨクヨしたり将来に不安を覚えがちなマインドもリセットできるのだ。
② カラダへの効果はある?
柔軟性や筋持久力の向上、さまざまな特典あり。
本来、ヨガが得意とするのはココロの調整。と言いつつも、そこにはフィットネス的な効果ももれなくついてくる。上下左右さまざまな方向に筋肉を伸ばすことで、筋肉や関節の柔軟性は確実にアップする。片脚立ちの姿勢をキープすることも多いので、バランス能力も鍛えられる。アーサナを連続で行うことで筋持久力の向上も期待できる。さらに、胸郭を広げることで深い呼吸が身につき、呼吸循環器系の能力も磨かれる。
また、ジョギング並みの有酸素運動効果も狙える。有酸素運動で血流のスピードが速くなると血管内で一酸化窒素(NO)が作られ、その作用で血管が拡張し、柔らかくなることが分かっている。これは酸素をカラダの隅々に回せるカラダになれるということ。ヨガなら外に出ずとも同様の効果が期待できるのだ。
③ そもそもヨガの目的って何?
最古のヨガの最終目的は「瞑想」による「悟り」。
ヨガの源流は紀元前3世紀のインドで体系が整えられたというラージャヨガ。瞑想によって自分と向き合い、自身を高めていくヨガだ。そこには「八支則」と呼ばれる8つのステップがある。最初のステップは社会生活の中で行ってはいけない「禁戒」、次によりよく生きるためのおすすめごとである「勧戒」、続いて瞑想を深めるための「姿勢法」。第3ステップのこの「姿勢法」が、現在のヨガのアーサナに繫がっている。
以降、「呼吸法」「制感」「集中」「瞑想法」とステップアップしていき、最後の「三昧」=悟りに到達する。最古のヨガの最終目的は世界の真理に気づくという悟りの境地。カラダを動かすアーサナはその通過地点のひとつにすぎないわけだ。
といってもこのラージャヨガは高貴な出家者のためのガチなヨガ。悟りの段階まで行ってしまうと、もはや聖人クラス。カラダを動かして自分と向き合うことができればそれで十分、という考え方ももちろんありだ。ただ、源流の背景を知って行うヨガは、またひと味違うかも。
④ 流派がいろいろあるけど、どう違うの?
「ハタヨガ」から始まり、西洋経由で多様化した。
ラージャヨガは高貴な人々のヨガ。時代が下ると高貴な人でなくともできるヨガが現れるようになる。そのうちのひとつが「ハタヨガ」で、これが現代のヨガの元祖となる。
本来のハタヨガはアーサナを数分キープ→休憩を繰り返すスタイル。そこにフィットネス要素をプラスし、呼吸をリンクさせたアーサナを連続して行う「ヴィンヤサヨガ」が誕生したのが1930年代のこと。その考案者の弟子が「アシュタンガ・ヴィンヤサヨガ」や「アイアンガーヨガ」を作り出し、これらが西洋人に大流行。90年代にはアメリカ生まれの「パワーヨガ」が登場するなどして今に至る。
日本では、「沖ヨガ」など草分け的なヨガは古典的なインドヨガがルーツ。一方、ヨガスタジオやフィットネスクラブで指導されているヨガのほとんどは、西欧経由で伝わったヴィンヤサスタイルのヨガだ。
このようにインド系、西欧系の2大潮流があるが、インターネットの発達で今やどちらも学べる環境。自分に合う流派を片っ端から試してみるのもよし。
⑤ カラダが硬い人にはやっぱり無理?
カラダの変化に敏感なのでむしろお得です。
いやそんな股関節開かないし、脚上がんないし、背骨反らないし。ヨガの完成ポーズだけを見ると自分にはとても無理!と思いがち。でもヨガで重要視されているのは、自分が「快適」と感じる落としどころを探すこと。同じ環境でも快適な選択ができる人は人生を健やかに過ごせるし、我慢して不平不満を抱く人の人生は貧しくなる。
ヨガの役割はココロの調整。なので実践中は快適を探す癖をつけることが何より大事。完成ポーズはあくまで方向性を示しているだけなので、自分が快適と思う範囲で実践すればよし。ポーズ写真は参考程度と思ってほしい。
というわけで、カラダが硬いか柔らかいかは関係ない。敢えて言うなら、カラダが硬い方がちょっとお得。カラダの変化を感じ取りやすく、超リアルな内部感覚と出合える可能性が高いからだ。柔軟性が人並み以上に高い人は、難しいポーズをとっても「べつに?」で終わってしまうこともある。カラダが硬いあなたは、むしろラッキー♡と思うべし。
⑥ いつ行うのがおすすめ?
ベストタイムは夕方。朝ヨガは早起き限定で。
ベストタイミングが夕方という理由は、一日のうちで体温が最も高く、カラダが動きやすい状態だから。逆に避けるべきタイミングは食後。前屈するポーズも多く、胃を圧迫するので最悪の場合は食べたものが逆流してしまうこともある。食後は少なくとも2時間程度空けてから。
また、ヨガというと朝行うイメージがあるが、寝起きでカラダが固まった状態ではうまく適応できない。それでも朝ヨガをやりたいときは、1時間前に起きてカラダをある程度慣らしてから、ゆっくりとマイルドなアーサナを。ただし、事前に固形物は口にしないこと。