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ヒマラヤ大聖者に質問! 究極の瞑想ってどんなもの?【ヒマラヤシッダー瞑想・前編】

姿勢も呼吸も整う、究極の瞑想とはどんな状態だろう。現在会うことのできる世界でたった2人のヒマラヤ大聖者のひとり、ヨグマタ・相川圭子さんの手ほどきを受けてきました!

カラダの基礎となる「姿勢と呼吸」について考えを巡らせているうちに、ニッポンには姿勢と呼吸のオーソリティがいるではないか! と気がついた。ヒマラヤ大聖者にして「ヨガの母」「瞑想の母」のヨグマタ相川圭子さんだ。

瞑想においては姿勢も呼吸も大事な要素のはず。で、『ターザン』、無謀にもヨグマタジ(ジ=「師」)のもとを訪れた。あのぅ、正しい瞑想って一体、どんなものでしょう?

「瞑想というのは心とカラダを調和させ、心を空っぽにして“今ここにいる”感覚を得ることです」

空っぽ、ですか。

「形あるものは変化していきます。そういうものに執着していると苦しくなります。お金や肩書、人からどう思われているか、などなど。いずれ消え去る物事に心が常にリアクションしていると、過去のことを後悔したり将来のことを心配したりもしますね。また、“〜せねばならない”というマインドに囚われると自他の欠点ばかり目について本人も周りもつらくなります。瞑想はそういうものを取り去って、すべては消えていくんだということを感じたり気づいたりする時間のことです」

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ヨグマタ・相川圭子/女性で史上初、サマディ(悟り)に達したヒマラヤ大聖者。現在会うことのできる世界でたった2人のヒマラヤ大聖者のひとり。インド最大の霊性修行の協会〈ジュナ・アカラ〉から最高指導者「マハ・マンダレシュワリ(大僧正)」の称号を授かる。www.science.ne.jp

お金は欲しいし、しょっちゅうクヨクヨしているし…。心はどうしてもあれこれリアクションするわけで、それが自分の個性のような気も。違うんですか?

「私たちは心が自分だと信じていますが、本当の自分は宇宙の源から送られた純粋な存在です。大きな海からコップ1杯の水を汲み出すとしますよね。海の水もコップの中の水も質は同じ。源から分かれたそういう魂がたくさんあるということ。だから刻一刻変化する心を瞑想をすることで空っぽにして、素の自分に戻るわけです」

瞑想はどれも似たりよったりのものかと思っていたけれど、禅の瞑想より“攻め感”あり?

「禅の瞑想はひたすら座って自分と向き合います。ヒマラヤシッダー瞑想は積極的に宇宙の源のパワーを取り入れて魂のお掃除をします。宇宙の源と一体化し、変化しないところに行く。それが究極の瞑想の状態“サマディ”です」

ううむ、凡人にはハードルが高いような…。

「そうですね。ヒマラヤ秘教では瞑想の前に心とカラダを正しく、汚さないように使う勧めがあります。暴力や噓など、ぜひ避けた方がいい行為を“ヤマ”といい、清潔さを保つ、満足することを知るなど、ぜひやった方がいい行為を“ニヤマ”といいます。日常生活の中でそれら“ヤマ”“ニヤマ”を心がけることから始めてもいいかもしれません」

ちなみに、ヒマラヤ秘教においてヨガは下のように8つのステップで説明されている。日本でお馴染みの、いわゆるヨガに当たるのは“ヤマ”と“ニヤマ”の次のステップ、“アーサナ”のこと。ヨグマタジが到達しているサマディはその頂点に位置する悟りである。

ヨガの8つのステップ

  1. 【ヤマ】日々の中で「してはいけない行為」を学び、実践する
  2. 【ニヤマ】毎日の中で「するとよい行為」を学び、実践する
  3. 【アーサナ】さまざまにカラダを動かしてバランスをとる
  4. 【プラーナヤーマ】呼吸を通してプラーナを操作してエネルギーを清め、カルマを清めていく(正しい呼吸法を学ぶ)
  5. 【プラディヤハーラ】感覚のコントロールを学ぶ
  6. 【ダラーナ】一点に意識を集中させることを学ぶ
  7. 【ディヤーナ】深い瞑想を学ぶ
  8. 【サマディ】神と一体になる、悟りへの到達

呼吸で汚れを清め、心の姿勢を整える

ところで、ヒマラヤシッダー瞑想では呼吸や姿勢については、どう考えられているんでしょう?

「呼吸法は、ヒマラヤ聖者がサマディで発見したものです。基本的に吸う息は生命エネルギーを取り込み、生に通じます。吐く息は汚いものを吐き出すこと、死に通じます。呼吸によって過去生からの記憶が刻まれている心の住み処、“アストラル体”が清められると考えています」

ということは、ちゃんと呼吸ができていないと、汚れがどんどん溜まっていくことに?

「ヒマラヤ秘教では前世が存在すると考えられていますが、過去生から心が連綿と続いていて、いろいろなカルマ(業)が記憶としてインプットされていきます。疲れていたり、怒りや哀しみの感情に囚われて否定的なスイッチが入ると、悪いものを引き寄せてしまうのです。また、相手を許さない、という気持ちになると心もカラダも緊張してますます呼吸が浅くなります」

あわわ…(息超浅ッ)。

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1997年、インド・シーブリに何万人もの観衆が集まり、密閉された空間で公開サマディに臨んだ。

「粘土をこねて焼けば素焼きの茶碗になります。人間も同じで瞑想や修行でカルマを焼いていくと、質の高い純粋なものに変容していきます。たとえば、相手の欠点ばかり目について、あの人が仕事をできないせいで自分の仕事が増えるなどと思っていたりしますよね。でも瞑想で自分が変容していくと、人を許したり感謝したりする“心の姿勢”が身につきます。すると、同じ相手のことを“自分に学びを与えてくれる人”と思えるようになるのです」

カラダも心も最近すごく猫背になっている気がします。

「内側がエネルギーで満ちてくると、しぼんだボールに空気が入るようにすっと背すじが伸びます。迷いなく“今ここにいる”ことで吸う息も吐く息もバランスがとれて、実際の姿勢もよくなっていきますよ」

フィットネスジムでヨガのクラスに参加して、やってる感に浸っている場合じゃないのかなぁ。

「体操はカラダ、外側に効きますが、瞑想は魂、内側に効きます。体操をやっていても心はよくなりません。私は長年、ヨガの指導をしていましたが、外側だけでは不足だと感じていました。それでヒマラヤに行って心と魂の気づきを得ました。その方法が瞑想だったのです」

肉体を構成する5要素を調和させる

ヒマラヤ秘教は5000年以上前から受け継がれている体系的な悟りの科学で、宇宙の真理を知る哲学でもあるという。そこで捉えられている肉体の概念は、宇宙のミニチュアであるということ。

「宇宙は土・水・火・風・空の5つの元素でできています。人の肉体も同じ要素でできていると考えられているのです」

土は肉体、水は血液やリンパ液などの体液、火は内臓の活動による代謝、風は肺から取り入れられる酸素や生命エネルギー、空は肉体の中にある空間に対応する。

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1986年、伝説の大聖者ハリババジに邂逅。日本全国50か所以上で行っていたヨガ指導者の地位を捨て、標高5000m以上のヒマラヤ山中での修行を経てサマディに到達。

「瞑想で土のエネルギーが清まることでカラダが力強くなります。水のエネルギーが清まることで血液がサラサラに。火のエネルギーが清まることで意志が強まり、集中力が出て悪いものが燃やせます。風のエネルギーが清まることでゆらゆらと揺れていた心が安定して“不動の人”になります。人によってどの要素が強いか弱いかはそれぞれ異なります。ある人は火のエネルギーが強く、ある人は風のエネルギーが弱い。そういうものの調和を図っていくと、空の要素が透明になり意識が軽やかになります。何も考えずに〝今ここにいる〟ことで呼吸も人相も姿勢も安定してくるのです」

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公開サマディでは光も水も遮断された地下窟で4日間過ごす。これを過去18回成功させるという偉業を達成。

カラダが硬くて血液ドロドロ、集中力がめっきり低下しているという場合、5つの要素の調和が乱れに乱れているということ。怖ッ。

でも、心身ともに身軽になるためには、やっぱりヒマラヤまで行かないとダメなのでしょうね?

「そんなことはありません。ただし、自己流の瞑想では感覚が敏感になりすぎて、今まで隠していた感情が露出してしまうこともあります。瞑想で一体化する“宇宙の源”というのは実は人間の潜在意識の奥深くにある可能性の領域のこと。人の潜在意識には何が隠れているか分かりません。普段真面目な人が酔っぱらって溜まっていたものを一気に吐き出してしまうように、瞑想で悪い方向に行ってしまうこともあるんです。どんなお稽古事にも先生がいて、正しいやり方を教わらなければならないでしょう? まして目に見えないところへの旅なので適切なガイドを私が務めています」

自分は思っているほど大した人間ではなかった。ろくな考えの持ち主ではなかった。自己流の瞑想によって、否定的な感情に囚われてしまうこともあるのだとか。

というわけで、後編で紹介する呼吸法や瞑想法はあくまで入り口として実践してみよう。本格的にヒマラヤシッダー瞑想に取り組むには、適切なガイドに指導を乞うべし。

「ヒマラヤシッダー瞑想で目指すところは、心を清めて変容させ、執着をなくし、愛と知恵の人になること。そうすればいいものを選択できるようになり運命がどんどん変わっていきます。鍛えてもカラダはいずれ置いていかなければいけません。だから魂を鍛えてください。見えるところだけを鍛えるのではなく、見えないところを清めていってください」

『ターザン』、肝に銘じました!

取材・文/石飛カノ 撮影/小川朋央

(初出『Tarzan』No.752・2018年10月25日発売)

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