寝違え、喉のイガイガ、むくみ…「朝の困った」対処法
寝違えや喉の乾燥、脚の攣り、むくみ、二日酔いなど、朝起きた時に表れる不調。そんな時に役立つのが短時間で効果が表れる対処法。ツボ押しや体操、簡単に作れる料理まで、朝の困ったに役立つメソッドを悩み別に紹介。
取材・文/石飛カノ 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/村田真弓 撮影協力/UTUWA 編集/阿部優子
初出『Tarzan』No.854・2023年4月6日発売
教えてくれた人:工藤孝文先生
くどう・たかふみ/福岡県みやま市工藤内科院長。西洋医学の知識はもちろん、漢方医としての知識を用いて地域医療に力を注ぐ。テレビや書籍などでさまざまな医療の最新情報を発信中。
教えてくれた人:瀬戸郁保先生
せと・いくやす/源保堂鍼灸院院長。北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で中医学、漢方薬を学び、国際中医師の資格を取得。古典中医鍼灸と漢方薬や気功などを融合させた施術に定評あり。
目次
寝違えて首が回らない
対処法① 左の二の腕の“肱中”というツボを押してみる
「肱中は瘀血(おけつ)という汚れた血液を取り除くツボです。左腕の肱中はカラダの後ろ側、右腕の肱中はカラダの前側の不調に作用するので、寝違えたときは基本的に左のツボを押しましょう。
ツボを刺激した後は、頭を痛くない方に倒して掌を側頭部に当てて3秒ほど押し合ってください。操体法というこの方法で筋肉のバランスを整えるとより効果的です」(瀬戸郁保先生)
対処法② 痛い方には動かさずに緩やかなストレッチを
「医学的には寝違えの症状をはっきり診断することはできません。考えられる原因は寝ている間の筋肉の圧迫や疲れからくる炎症。痛い方向に首を動かさないことが基本になります。
可能であれば緩やかにストレッチをしてもいいですが、治りが遅かったり悪化するときは整形外科の診断を受けることをおすすめします」(工藤孝文先生)
喉が乾燥してイガイガする
対処法① “漢方のトローチ”でうがいをしてみる
「おすすめの対処法は漢方薬でうがいをすること。“漢方のトローチ”と呼ばれている桔梗湯がおすすめです。桔梗湯の顆粒をお湯に溶かして軽くうがいをしてから飲む。局所にも効くしカラダの中からも効果を発揮してくれます」(工藤先生)
対処法② はちみつでうがいをし、喉のツボを刺激する
「薬膳で喉を潤す作用があるといわれているはちみつでうがいをする。または、喉にある外金津、外玉液というツボを押してみましょう。質のいい唾液を出すツボなので、喉の乾燥状態を即効的に解消できます」(瀬戸先生)
鼻が詰まって息苦しい
対処法① 額にある“印堂”というツボを起床後すぐに押してみる
「鼻詰まりは発散させるエネルギーと抑制するエネルギーのバランスが崩れることで起こります。これを改善する定番のツボが印堂。押して刺激すると数分で効果が表れます」(瀬戸先生)
対処法② 交感神経が目覚める運動をしたり音楽を聴く
「春先は寒暖差によって鼻が詰まることがあります。これはモーニングアタックと呼ばれる自律神経症状です。寒暖差に自律神経がついていけずに鼻の血管が過剰に反応してくしゃみや鼻水、鼻詰まりが起きます。
対処法としては交感神経にスイッチングできる行動をすること。筋トレなどの運動もいいですし、元気の出る音楽を聴くというのもおすすめです」(工藤先生)
脚がつってゲキ痛い!
対処法① 即効性のある漢方薬・芍薬甘草湯を服用する
「漢方薬は長期間飲まないと効かないイメージがありますが、即効性が高いものもあります。芍薬甘草湯はそのひとつ。脚がつったときに飲むと早く痛みを和らげる効果が表れます。また、冷えると脚がつりやすくなるので、お湯や蒸しタオルなどで温めましょう」(工藤先生)
対処法② “ゴキブリ体操”で気の流れをスムーズにする
「関節の中でも足首は気の流れが滞りやすい部分。それが原因で脚がつることがあります。仰向けになって両手両足をぶらぶら揺らす“ゴキブリ体操”で気の流れを促しましょう」(瀬戸先生)
腰がどんより重い
対処法① 前夜の消化不良が腰痛に。胃腸の働きを促すツボを刺激
「目覚めの腰痛の多くは前夜の食事の消化不良が原因。夜間の消化活動で胃腸が動き続けると、本来休んでいるはずの脳脊髄液が一緒に動いて気の流れが滞ってしまうからです。消化不良を解消する足三里というツボを刺激しましょう」(瀬戸先生)
対処法② 原因不明の腰の重だるさをハーブティーで緩和
「腰痛の8割以上は画像診断がつかない非特異的腰痛。その場合は抗不安薬が効くこともあります。リラックス効果が期待できるハーブティーを飲む手もありです」(工藤先生)
二日酔いでシンドい
対処法① ビタミンB群のサプリメントを飲んで代謝を促進
「二日酔いの原因はカラダに有毒なアセトアルデヒド。脱水状態にもなっているのでまずは水分を十分に摂って、どんどんトイレに行ってアセトアルデヒドを排出しましょう。
また、アルコールやアセトアルデヒドが分解される際には大量のビタミンB1が消費されます。このため、糖質代謝に必要なビタミンB群不足で疲労感をひきずったまま一日を過ごすことになります。ビタミンB群のサプリメントを補給して代謝アップを促すことも大事です」(工藤先生)
対処法② グレープフルーツとツボで解酒作用を高める
「薬膳の世界ではグレープフルーツには解酒作用があると考えられています。これはレモンやオレンジなど他の柑橘系にはない働きなので、朝食代わりに食べたり100%ジュースを飲んでみましょう。さらに肝臓の解毒作用を活性化するには手の甲にある中渚というツボ刺激も有効です」(瀬戸先生)
寝不足でぼーっとする
対処法① 額と顎にあるツボを同時に押して刺激する
「額にある額中と顎にある地合というふたつのツボを同時に押して刺激するのがおすすめです。カラダの前後に走っている経絡が繫がることによって頭を活性化することができます」(瀬戸先生)
対処法② カカオの配合率が高いチョコレートを食べる。
「ハイカカオのチョコレートを口にしてみましょう。カカオには疲労回復効果があり、多幸感をもたらすエンドルフィンや鎮静作用のあるセロトニンなどのホルモンを分泌させることが分かっています」(工藤先生)
顔やカラダがむくんでいる
対処法① 顔の経絡と足首のツボ刺激で顔とカラダのむくみを取る
「顔のむくみの場合は顎から眉尻にかけて走っている経絡をマッサージすることがおすすめです。両手を擦り合わせて温めてから、指の腹でマッサージをしていきましょう。また、顔やカラダのむくみの両方の改善効果が期待できるのが、足にある復溜や踝下というツボ。こちらも併せて刺激してみてください」(瀬戸先生)
対処法② ホットタオル&マッサージで顔に溜まった水分を除去
「寝ているときは水平姿勢になるので顔に水分が溜まりやすくなります。ホットタオルで顔を温めながら指で首の後ろをマッサージして血流を促し、血液や水分を首から下に戻すという方法もあります」(工藤先生)
悪夢を見てユーウツだ
対処法① 不安や恐怖を和らげる頰のツボを優しく刺激
「中医学では夢を見る原因は経絡から気が漏れているからだと考えられています。さらに自律神経のバランスが乱れていたりストレスが加わることで、深層心理の恐怖感が表に出てしまうのが悪夢と考えていいかもしれません。
恐怖や不安などの感情を癒やす面産というツボを刺激して悪夢のイメージを払拭しましょう」(瀬戸先生)
対処法② 漢方薬と緑茶コーヒーで副交感神経を活性化
「悪夢に効くという代表的な漢方薬は桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)。実際に病院で処方すると悪夢を見なくなったという声を聞きます。
また、追い込まれているときほど悪夢を見やすいと考えられるので、リラックスできる手段をいくつか用意しておきましょう。手軽に試せる方法としてはコーヒーと緑茶を混ぜる“緑茶コーヒー”を飲むこと。緑茶のテアニンやコーヒーの香りが副交感神経に働きかけて心身をリラックスモードに」(工藤先生)
偏頭痛がする
対処法① 後頭部から肩にかけて指の腹でマッサージする
「棍棒で殴られたような激しい頭痛や時間が経つにつれて痛みが増していく頭痛、また呂律が回らない症状がある場合は病院の診断を受けてください。
いつもの片頭痛のようなものなら、後頭部から僧帽筋にかけて上から下に向かって軽くさすりましょう。この部分には全身のエネルギー調整をするツボを繫ぐ経絡があります。左右ともにマッサージを」(瀬戸先生)
対処法② ホウレンソウと卵の炒め物を朝食のおかずにする
「片頭痛の改善におすすめの食材はホウレンソウです。ホウレンソウに含まれるマグネシウムは脳の血管の緊張を抑え、ビタミンB2がリラックス作用のあるセロトニンの分泌を促します。セロトニンの元になるトリプトファンを含む卵とともに炒めて朝食のおかずにすれば、より効果が期待できます」(工藤先生)
筋肉痛がひどい
対処法① 全身をぶらぶら揺らし、気を巡らせてリラックス
「仙人長寿功という気功のメソッドのひとつに“振動功”と呼ばれるものがあります。楽な姿勢で立ち、踵を床から上げ下げして全身をゆらゆら揺らします。気を巡らせると同時に緊張した筋肉をリラックスさせることができます」(瀬戸先生)
対処法② 急性期は氷で冷やし、痛みが引いたら温める
「前日ハードな運動をしたときなど急性期の筋肉痛はまず氷囊などで冷やしましょう。痛みが軽減してきたらぬるま湯などで温めて血行を促してください。脚のつりに効く漢方の芍薬甘草湯も有効です」(工藤先生)