尿が泡立つ、寝汗をかく。“朝のサイン”で体調チェック【前編】
カラダの調子をチェックするのに、寝起きは最適なタイミング。安静時でノイズ(余計な情報)が一番少ないため、リアルなサインを把握しやすいからだ。そこで、今回は尿の色や泡立ち、寝汗、むくみといった朝のカラダのサインからわかることや、そのために必要な対処法を紹介。 医師のアドバイスを参考に自分の心身をモニタリングしよう!
取材・文/井上健二 イラストレーション/谷端実 編集/阿部優子
初出『Tarzan』No.854・2023年4月6日発売
橋本将吉先生
教えてくれた人
はしもと・まさよし/内科・総合診療医。ドクターハッシーの名で健康リテラシー向上のためにYouTubeチャンネルを運営し、フォロワー数は50万人超。近著に『ドクターハッシーの「不調の味方」』(主婦の友社)。
目次
起床直後は体調を確認するベストタイミング
ベストコンディションを維持したいなら、つねに自分の心身の実態を知り、モニタリングしたいもの。いわば心身の声を聞くベストタイミングは、毎朝の起床直後。安静時でノイズ(余計な情報)がいちばん少ないため、リアルなサインを把握するのに最適なのである。
また、健康の基本のキは「快眠・快食・快便」とよくいわれるけれど、朝ならその状況を3つ残らずチェックできる。そこで現役の医師に、朝チェックしてみるべきポイント、そこからわかること、対処法について聞いてみた。
健康診断はせいぜい年1回だが、朝のモニタリングはその気になれば毎日行えるのがメリット。体調の変化を手帳やスマホなどに記録して、月1回→週1回になるなど不調の頻度が明らかに増えたり、そのレベルが上がったりしたと思ったら、早めに医療機関を受診してほしい。
チェック① 尿の色が濃い・泡立つ
睡眠中に汗などから水分を失うので、朝のカラダは軽い脱水状態。だから、朝イチのオシッコは、色が濃いめになりやすい。水分が出すぎないように尿量が減るので、その分だけ成分が濃くなるからだ。脱水に備え、就寝前にはコップ1杯程度の水を飲む。普段より色が濃いめなら、その夜は摂取量をやや増やしたい。
色が濃いだけなら問題ないが、泡立ちが目立つときは、尿中にタンパク質が出るタンパク尿の恐れも。
「タンパク質は通常尿中に出てこない仕組みになっています。タンパク尿には腎臓の病気が隠れていることもあるので、泡立ちがずっと続くようなら、病院で医師に相談しましょう」(橋本将吉先生)
臭いが強いときは、膀胱炎などの感染症が隠れているかも。また、男性で、排尿してすぐトイレに行きたくなったり、残尿感があったりするなら、前立腺の肥大のサインだ。
チェック② 寝汗をかく
寝汗が気になるときは、ストレスを解消せずに寝ている可能性がある。ストレス下では、それに対抗するため、コルチゾールというホルモンが作られる。睡眠中は、心身をリラックスさせる副交感神経が優位だが、コルチゾールは心身を緊張させる交感神経を優位にするため、心拍数や血圧が上がり、寝汗をかきやすい。
眠りには深いノンレム睡眠と浅いレム睡眠がある。夢を見るのはレム睡眠のとき。コルチゾールにはレム睡眠を増やす働きもあり、夢もたくさん見やすいので、「夢にうなされて寝汗をかいた」と誤解しやすい。
「軽めの筋トレでストレスを発散したり、浴槽入浴でリラックスしてから眠ったりするといいでしょう」
チェック③ むくみがある
そもそもむくみとは、血液以外に余分な体液が溜まりすぎた状態。その背景には、血液を濾して体内の水分量を調整する腎臓の働きが落ちているか、腎臓に血液を送り込む心臓の弱体化(心不全)が考えられる。
「片脚だけがむくむのは、もっと危険なシグナル。脚から心臓へ血液を戻す深部静脈が詰まる深部静脈血栓症が疑われます。そこで生じた血栓(血の塊)が肺で詰まる肺血栓塞栓症に陥ると、最悪死に至ります」
いずれにせよ、むくみの常態化は軽視せず、内科医に診てもらおう。
血管内に水分を留めておくには、肝臓が作るアルブミンというタンパク質が不可欠。無理なダイエットなどで栄養不足に陥ると、アルブミンが減り、血管内から水分が漏れ出てむくみが生じることもある。
チェック④ 目やにが普段より多い
目やにとは、目の新陳代謝で生じる、古くなった細胞などの老廃物が溜まったもの。医学的には「眼脂」と呼ばれている。だから、起床時、寝ている間に蓄積した目やにが、目尻や目頭に多少あるのは当たり前。でも、その量が多く、黄色っぽいときは、細菌などに感染していることも考えられる。
「外敵と闘う白血球が集まり、白血球が排出した異物が含まれるようになると、目やににそうした変化が起こることがあります。また、白血球を運ぶために毛細血管が広がり、白血球が出すサイトカインがさらに血管を拡張させるため、目が充血することもあります」
目やにが気になったら、目を丁寧に洗って清潔に保ちたい。
チェック⑤ 舌・喉に異変がある
朝、歯を磨くときには、舌と喉も併せてチェックすべし。舌が白っぽく見える苔状のものは、舌苔。食べかすや唾液の成分、口腔内の古い粘膜などからなる。口臭の誘因にもなるから、舌ブラシなどで取り除いて。
舌が荒れているときは、ビタミンB群や亜鉛の不足がありそう。まずは食生活のバランスを見直して、栄養の偏りを正そう。
口蓋垂(のどちんこ)が赤くなっているのは、感染症罹患のサイン。
「喉の痛みと発熱があり、舌にイチゴのようなブツブツ、首のリンパ節の腫れなどを伴うときは、溶連菌(溶血性連鎖球菌)感染症の可能性があります。子供の病気と思われがちですが、大人でも罹ります」
チェック⑥ 朝勃ちが弱く少なくなった
男性の朝勃ちは、夜間陰茎勃起(NPT)の一環。浅い眠りのレム睡眠中に起こりやすく、そのタイミングで目覚めると、さしたる理由がないのに朝から勃起しているのだ。これは、ペニスの勃起機能のメンテをしている一種の“試運転”のようなものだと考えられている。
「朝勃ちが減ったり、弱くなったりするのは、男性更年期障害(LOH症候群)の自覚症状の一つ。加齢などで男性ホルモンのテストステロンが減ってくることが関係します」
加齢以外では、ストレスや睡眠不足などでもテストステロンは減りやすく、それで朝勃ちが弱く少なくなるケースも考えられる。また、血管が硬くなり、血流が低下する動脈硬化がその背後に隠れていることも。
チェック⑦ しびれる、呂律が回らない
寝て安静にしている姿勢から、起きて立ち上がり、動き始めると、体内では急激な変化が一気に起こる。そこで心配なのが、脳出血や脳梗塞といった脳卒中。脳卒中は、午前6時から正午の間に、もっとも発生しやすいというエビデンスもある。
「ことに暖かい寝床から寒いトイレに入ったりするなどし、ヒートショック(激しい気温変化によるダメージ)に見舞われると、血圧が乱高下して、弱い血管が破れて出血する脳出血が生じることもあります」
前述のように朝は軽度の脱水中で、血液はドロドロ。だから血栓ができやすく、脳で詰まると脳梗塞も起こりやすい。しびれる、呂律が回らないといった症状がある場合は、脳卒中を疑い、急いで救急車を呼ぼう。