目次
まずは基本構造を知っておこう
ポイントとなるのは以下の4つの筋肉/腱。それぞれどのような役割をもっているのか、本記事冒頭のイラストとともにチェックを。
❶ 腹直筋:体幹下部の前面を走る長い筋肉。体幹の屈曲、伸展時に主に働く。腹割を夢見るすべての人にとって、カギとなる筋肉だ。
❷ 白線:カラダの正中線上にあり、腹直筋を左右に区切っている腱。タテ割を目指す人は、この白線の存在を浮き彫りにすることが課題。
❸ 腱画:腹直筋の筋線維の集まりの中で横に3本走る短い腱。腹直筋の表面から深い部分にかけて複数の筋腹に区切っている。つまりヨコ割。
❹ 外腹斜筋:脇腹を覆うアウターマッスル。ナナメ割とはこの筋肉の輪郭が現れること。内側にはインナーマッスルの内腹斜筋が存在する。
Q1. 腹筋はどうして割れているんですか?
A. 生物の基本的な構造だからです
腹筋は一枚岩ならぬ一枚筋肉ではなく、細かく区切られている。その理由は、
「一部の内臓を除き、基本的に生物のカラダのつくりは左右対称。とくに筋肉に関しては、体軸に対して左右1対ずつ分かれているというのが基本的な構造です。
さらに体節構造といって、ミミズのカラダのような節が腹筋には存在します。これは生物の発生の名残」(石井直方教授)
左右に区切られてタテ割、体節構造でヨコ割というわけ。
Q2. 腹筋の役割ってそもそも何なんですか?
A. 体幹の動きをコントロールすることです
全身の筋肉の中で腹筋はちょっと特殊な構造と役割を持っている。
「普通の骨格筋は1〜2個の関節をまたいで走っていて、その関節を曲げたり伸ばしたりすることが役割です。ところが腹筋の場合は脊柱にある多くの関節を一気にまたいでいます。
この構造のため、長い一枚の筋肉がいきなりぎゅっと縮んでしまうと脊柱の運動のコントロールが利きません。そこでいくつかに割れて脊柱の動き=体幹の動きを微調整しているのです」
腹直筋が骨格上のどの位置に走っているかを示したのが上のイラスト。恥骨の結合部から始まって、第5〜7肋骨、肋骨中央の剣状突起に向かって走っている。
腹直筋が脊柱下部の関節をまたいでいることがお分かりだろう。体幹の微妙な動きはひとつひとつの椎体が動くことで可能になる。そのコントロールをしているのが腹直筋だ。
Q3. ヒトは生まれたときから6パックってホント?
A. 本当です。胎児のときから割れています
腹筋を左右に分ける白線も上下に分ける腱画も、生まれたときからあなたの腹の内に存在している。
「受精卵からだんだんカラダができてくる最初の段階で、体節構造が形作られます。それに応じるように脊椎骨が形成されて、やがて筋肉が作られていくのです」
つまり、腹割はごく初期の胎児の時点で完了しているということ。ヒトは生まれながらの6パック、その気になれば死ぬまでそれを堂々アピールできるのだ。
Q4. 他の筋肉に比べて腹筋は鍛えにくい?
A. 割るまで追い込むことが難しいのは確かです
トレーニングしても一向に割れないんです、腹筋。
一番の原因は、「腹筋のトレーニングは見た目以上に難しいからです。極めて多関節の運動なので、シットアップにしてもただの起き上がり動作では大腿直筋などが使われて、狙った筋肉が刺激されない可能性があります」と言う石井教授。
「腕立て伏せは追い込む感覚が分かりやすいですが、協働筋が多い腹筋は追い込むことが難しい。筋肉痛が起こるような的確な動作を意識することが重要になってきます」
Q5. 効率よく腹をタテに割る方法は?
A. 食事コントロールで割れる可能性は十分あります
最初の目標、タテ割は思うより困難なことではない。というのも、食事制限で体脂肪を落とせば、おのずと縦スジが姿を現してくれるから。
「腹筋を左右に分ける白線は太くて長いラインなので見えやすいということはあるかと思います。さらに効率よくタテ割を目指すなら、日常生活にドローインを取り入れること。ビルダーの世界ではタテ割にはドローインというのは常識です」
息を吐くときも吸うときも腹圧を上げる習慣でより効率アップ。
Q6. ヨコ割れの数には個人差がある?
A. 基本的にありません
腱画の数に個人差はない。みな等しく横に3本シュシュシュッと走っている。なのに腹筋を鍛えてもキレイな6パックにならないのは、
「単純に腱画の配置の違いです。上の腱画の位置が低くて腹筋上部のサイズが大きい人もいれば、逆に位置が高くて幅が狭い人もいます。なかには左右の腹筋が段違いでズレているという人も。これは遺伝的な素因と考えられます」
4パック止まりという人も、内部ではしっかり6つに割れてるはず。
Q7. フッキンさえすれば腹筋は割れる?
A. 隠れ肥満タイプは割れます
腹筋運動、通称フッキンさえすれば腹が割れるというわけではない。筋肉の上に乗った皮下脂肪を落とさなければタテヨコナナメのスジはお目見えしない。ただし例外もあり。
「皮下脂肪タイプは運動だけでなく必ず食事制限が必要です。一方、皮下脂肪が少ない痩せ型でお腹だけぽっこり出ている内臓脂肪タイプの人は、フッキン中心の体幹トレをするだけでも比較的容易に腹筋が見えるようになります」
要は脂肪のつき方次第。
Q8. ナナメ割が難しい理由って何?
A. 脇腹には最後まで脂肪が残るからです
最大にして最後の難関、ナナメ割。
「腹直筋の輪郭がはっきりと出てくるようになれば、肋骨周辺の外腹斜筋は自然に見えます。ただ、外腹斜筋の下部を目立たせるのは簡単なことではありません。
おへその横の脇腹部分は脂肪がつきやすい部位で、このあたりの脂肪は最後の最後まで残るからです」
トップレベルのビルダーの体脂肪率は5〜6%。ここまでいかずとも8%まで絞る覚悟があれば、下部ナナメ割も夢ではない。
Q9. 捻りの動作をしないとナナメ割は無理?
A. 実はクランチだけでも割れることがあります
「人によってはクランチを行ったときに腹直筋と同時に内外腹斜筋を使うことがあります。ですからクランチだけでもナナメ割は可能。それくらいある動作のときに腹筋のどの部分が使われるかは分かりにくいのです。
ただ一般論として、外腹斜筋は体幹の捻り動作で主に使われます。クランチと捻り動作がきれいに腹を割る確実な手段です」
ちなみに体幹を横に倒すときに使われる内腹斜筋を鍛えすぎると寸胴体型になる恐れあり。要注意。
Q10. 割った後の維持のためには週1トレで十分?
A. 理論的には十分ですが、現実的には不十分です
タテヨコナナメ、いずれのレベルにしろ目標達成! さてその後の維持期をどうするかが問題だ。
「理論的には週1度のトレーニングで筋力は維持できることが分かっています。でも現実問題として、週1の頻度は週1にはなりません。たまたま都合が悪くなれば簡単に1.5週に1度、最悪の場合2週に1度の頻度になってしまうからです。筋肉はつけるときの3倍のスピードで落ちていくので要注意です」
維持トレは週2頻度ってことで。