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ストレッチをすると割れやすくなる? 腹筋のウソ・ホント【前編】

腹筋のウソ・ホント【前編】

シットアップはカラダに悪い? 腹が割れていれば腹筋は強い? ストレッチをすると腹が割れやすくなる? ピンからキリまで巷にあふれる、腹筋のあんな話、こんな話。その真偽のほどは一体…? 百戦錬磨のトレーナー・澤木さんと、筋トレの科学的効果を検証するYouTuberのパーカーさんに聞いてみよう。

シットアップはカラダに悪い

ウソ

背骨を丸めて起き上がる腹筋運動は“腰を痛める”とされ、米軍のトレーニング種目から除外されて久しいというけれど…? まず回答してくれたトレーナーの澤木一貴さん。なんと「アメリカ陸軍体力テスト」の指導経験の持ち主でもある。

「米軍のテストで行う腹筋運動は、計2分間。これだけやれば腰が痛くなる人もいますが、背骨の柔軟性にも左右されるため個人差が大きい。日本では文科省の“新体力テスト実施要項”で定められるのが30秒間で、通常行う10~20回×3セット程度なら、まず問題ないと考えるのが妥当でしょう」

また、最新のトレーニング科学を分析するYouTuberのパーカーフィットネスさんも「ブラッド・シェーンフェルド博士は2011年の研究で、すでに椎間板ヘルニアなどの問題がある⼈のみが避けるべきと主張。健康な⼈が腰を痛める説得⼒のある証拠はありません」と同様の回答だ。

腹が割れてれば当然、腹筋は強い

ウソ

腹を割って見せるのは、腹筋群でもアウターマッスルに分類される“腹直筋”のなせるワザだ。「腹直筋にはそもそも縦に走る“白線”と横に区切る“腱画”があって、割れた筋肉の構造は誰でも同じ。見かけ上は割れていても、腹筋が強いかどうかは別問題です」と澤木さん。

強い腹筋には、やはりトレーニングが必須」とパーカーさんも断言する。では、強い腹筋に必要な条件とは?

「カギとなるのが、腹圧を高めて体幹や姿勢を保つインナーマッスルの腹横筋。対するアウターマッスルの腹直筋などは大きな動きを生み出しますが、これらの働きも腹横筋がしっかり機能してこそ成り立つもの。

インナーの強化にはドローインやピラティスなど、アウターにはいわゆる腹筋トレと、狙いを絞って鍛えるといいでしょう」(澤木さん)

腹筋トレをやるほどウェストは細くなる

ウソ

腹筋のウソ・ホント

くびれたギャクサン体型を目指したハズなのに…。なんてことにならないよう、目的に合ったトレーニングを取捨選択したいもの。

もし、あなたがウェストのくびれたギャクサン体型を狙って腹筋運動に励むなら、ちょっと立ち止まって一考されたい。

くびれを作るのはインナーの腹横筋で、腹筋運動で主に鍛えられるのはアウターの腹直筋。もともと太っている人ならある程度は引き締まりますが、胴体の前にある筋肉なので、細め体型の人がガンガン鍛えると腹は逆にせり出してしまうんです。ボディビルでもくびれを強調するフィジークの選手は、あえて腹筋運動に手を出さないことも」と澤木さん。

一方でパーカーさんも「著名な研究者のメノ・ヘンゼルマン博士は、体側部にある腹斜筋が肥大しすぎるとウェストが太く、逆三角よりも四角い体型になって、外見を損ねる可能性があると発表しています」とのこと。

筋肥大まで鍛えるには相当量のトレーニングが必要だが、ボディメイクが目的なら覚えておきたい話。

シックスパックは、実は8パックだ

どちらでもない

腹の前面を縦に覆う腹直筋。先にも述べた通り、これを“シックスパック”として区分けするのが縦長の“白線”と、横にある“腱画”と呼ばれる複数の腱だ。

「実際のところ腱画の数には個人差があるため、8パックの人もいれば、左右で数や位置が異なる人もいます」と澤木さん。パーカーさんは、「シックスパックは一般的に6つの人が多い、ということでついた名称でしょう」と考証する。

「割れた腹筋の見た目を競うボディコンテスト出場者の中には、腱画が左右非対称なことを気にする人も。ですが腱画の作りは先天的で、残念ながら努力しても直るものではありません」と澤木さん。「これも個性と受け止めて、自分のカラダを愛してあげましょう」と、最後は愛あるメッセージで締めくくってくれた。

結局、腹筋トレはやるべきだ

ホント

腹筋トレはコンパウンド(多関節)種目で鍛えられるから不要、ともいわれるが…?

「2014年の研究では、スクワット種目における腹筋群の活性化は、たとえ高重量でも⾮常に⼩さいという結果が示されています。同様の論文は複数あり、多くの研究者がコンパウンド種目で腹筋が成⻑するという説を⽀持していません

これはスクワットなどで脚より先に腹筋が限界になることはなく、また脊椎を屈曲する動作がないことからも明らか。筋トレ初⼼者でない限り、腹筋トレーニング以外で腹直筋や腹斜筋が成⻑する可能性はゼロに近いといえるでしょう」とパーカーさん。

「スクワットなどで主に働くのは、瞬発的な動作で反応する腹横筋。脊柱の可動域トレーニングとしても、細部の筋肉を使う腹筋トレの意義は大きいです」と澤木さんも話す。

腹筋にはやっぱり専門の種目が最強

出典/J Strength Cond Res. 2014 Oct; 28(10): 2827-36. 

両脚を上げて行うストレートレッグシットアップに比べて、スクワット種目では腹筋への負荷が非常に⼩さい。外腹斜筋にはサイドプランクが突出した結果に。

ストレッチをすると、腹が割れやすくなる

ホント

澤木さんから「ストレッチだけでは腹筋の強化や、脂肪が落ちて腹が割れるなどは望めません」と前置きがあったうえで、「ただし胴体の可動性はあった方がいい。筋トレ効果も上がり、腹筋群が細かくスムーズに動いた方が間接的には整った腹に見えます。その意味では、ストレッチが一定の相乗効果をもたらすのも事実でしょう」との回答が。

同様にパーカーさんも腹筋トレにおける可動域の重要性に注目し、「複数の膨⼤な研究データを分析した2022年のレビューでは筋肥大や筋⼒、パワーなど全てにおいて広い可動域の優位性が明らかに。グラフにある2014年の研究をはじめとして、筋肉の成長に最も重要なのはストレッチポジションであると⽰しています」と語る。

最後に、腹筋まわりに必要な可動性について。「体幹の動きは、屈曲・伸展・側屈・回旋の4種類。前屈やヨガで有名なコブラのポーズ、ツイストなどを、特に筋トレ後はしっかりやっておくといいでしょう」と澤木さんはアドバイスする。

腹直筋の強化は可動域の広さがキモ
腹直筋の強化は可動域の広さがキモ

出典/Sports Biomech.2014 Sep;13(3): 296-306.

腕を前に出すロングレバープランク、さらに骨盤の後傾を加えて腹直筋を最大にストレッチすると、筋活動が⼤幅に増えることが⽰されている。

腹筋100回と10回、当然100回が効果的

ウソ

例えば30秒と時間を決め、マイペースでじっくり腹筋に効かせるのもいい。とにかく回数をこなす!という根性論は捨て去るべし。

例えば30秒と時間を決め、マイペースでじっくり腹筋に効かせるのもいい。とにかく回数をこなす!という根性論は捨て去るべし。

「筋トレで求められるのは、どれだけ使い切ったか。回数が多いほどいいワケではない」とは、澤木さんとパーカーさんに共通の弁。「100回できるのは既に“慣れ”の域に入った状態。プレートなど、ウェイトを抱えて負荷を追加する必要があるでしょう」とパーカーさんは言う。

また澤木さんが一例として薦めるのが、「TUT=タイム・アンダー・テンション」というテクニック。1セット当たりで筋肉が継続して緊張する時間、とも言い換えられる。

「TUTでは40~60秒の間で1セット10回程度をゆっくり行うと、筋肥大効果が高まるといわれます。また、たまには苦手な腹筋トレ種目を取り入れたり、日によって速い・遅いとペースを変えたりすることで筋線維に違った刺激が入るので、筋トレ効果を最大限に引き出すことが可能になります」

編集・文/オカモトノブコ イラストレーション/川崎タカオ 監修/澤木一貴(SAWAKI GYM代表)、パーカーフィットネス(YouTuber)

初出『Tarzan』No.855・2023年4月20日発売

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