突き詰めると体幹とは背骨のことだ
いわゆるカラダ作りと、体幹作りには、大きな違いがある。前者はカラダの外側にあるアウターマッスルに目を向けるのに、体幹作りではカラダの内側にあるインナーマッスルに目を向ける。その主役は、横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群だ。
では、体幹作りでは、なぜインナーマッスルを重視するのか。
その理由は、背骨(脊柱)という、人体で何よりも大切な骨格の動きがコントロールできるから。体幹とは、手足と頭部を除いた胴体のこと。下半身と上半身をリンクさせる体幹の働きを踏まえると、なかでも肝心なのは、背骨。加えて土台となる骨盤だ。
そしてインナーマッスルを鍛えて背骨と骨盤を自在に動かし、体幹を蘇らせるもっとも簡単な方法は、呼吸を変えること。具体的な方法は、下で詳しく紹介しよう!
呼吸を変えれば、体幹も変わる
川谷響さん
教えてくれた人
かわたに・ひびき/(株)ORIGIN
ESS代表取締役兼マンマビレッジ代表パーソナルトレーナー。筑波大学運動部のS&Cコーチとして14チームの指導実績を持ち、YouTubeシリーズ合計150万回再生を記録する同大学ADのトレーニングプログラム『筑トレ』を監修。
ダジャレのようだが、体幹を体感するには改めて呼吸と向き合うべき。それが、体幹作りの第一歩だ。
「呼吸を変えれば体幹は変わります。それを実感するために、ドローイン、ブレーシング、IAP呼吸法という3つの深い呼吸で、体幹のインナーマッスルを刺激しましょう」(パーソナルトレーナーの川谷響さん)
3大呼吸法の実践前に理解したいのは、案外知らない呼吸の仕組み。呼吸の主役となるのは、いうまでもなく肺。胸椎や肋骨などからなる胸郭というフレームに収められる。
肺が膨らむと内圧が下がり、空気が入ってくる。逆に、肺が元通りに縮むと内圧が相対的に上がり、空気が出ていく。この繰り返しで酸素を吸い込み、体内で生じた余分な二酸化炭素を排出している。
だが肺自体は風船のようなもの。自ら膨らんだり、縮んだりできない。胸郭が広がれば膨らみ、狭くなれば縮むのだ。その動きを助けるのが、胸郭と隣り合う体幹。呼吸に関わり、胸郭を動かす呼吸筋には、胸郭の底を支える横隔膜、肋骨を動かす肋間筋などがある。加えて体幹のインナーの腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群も、呼吸を助ける(横隔膜は体幹のインナーの中心メンバーでもある)。
呼吸は無意識でも行えるように、自律神経で制御されている。でも、つねにストレスと緊張にさらされる現代人は自律神経のうちでも交感神経が優位になりやすく、呼吸は浅くなる傾向が強い。それだと体幹のインナーが活躍する機会が奪われてしまい、どんどん衰えやすくなる。
3大呼吸法をそれぞれ1日最低1回、毎日続けると体幹が蘇り、1〜2週間で背すじが伸びて姿勢が良くなり、カラダも軽くなるはずだ。
「3大重要呼吸」のやり方
仰向けだと姿勢が安定しやすく、体幹のインナーマッスルを意識して動かしやすい。手を体幹に当てて、腹の動きと腹圧の変化を体感したい。慣れたら椅子に坐ってやってみよう。
体幹を刺激する「3大重要呼吸」
①フーッと長く吐く「ドローイン」
①息を吐くとき、胸郭の底である横隔膜が緩んで上がり、胸郭が狭まる。さらに胸郭を縮めるため、隣接する体幹も凹む。②腹筋群のいちばん深層にある腹横筋、骨盤の底を支える骨盤底筋群が収縮して腹が凹む。なかでも腹横筋は体幹全体をコルセットのように一周して覆うため、収縮すると腹が凹み、背骨が安定。これがドローイン。
②ハッと短く吐く「ブレーシング」
体幹のインナーは元来協力して同時に働く。それを促すのがブレーシングだ。凹んだペットボトルを膨らませるイメージで①腹横筋で凹ました腹を押し返すように腹圧をアップ。②横隔膜や③骨盤底筋群などがシンクロするように収縮。体幹を支持&安定。腹横筋や内腹斜筋が収縮して肋骨を下げ、肋骨が内旋して閉じて体幹は寸胴に。
③吸うときも腹圧を保つ「IAP呼吸法」
①短く息を吐いてブレーシング。みぞおちを下げるイメージで息を吸う。②横隔膜が収縮して腹圧上昇。③腹横筋や骨盤底筋群は収縮するが、同時に腹圧で押し返され、引き伸ばされて腹全体が膨らむ。ペットボトルを内側からパンパンに膨らませる感覚で腹腔全体の圧力がアップ。④横腹や腰まで膨らみ、体幹全体がさらに寸胴になる。