座りすぎのカラダに。股関節・骨盤・腰椎の歪み改善エクササイズ
「パッと立てない」「腰が重だるい」「脚を組みがち」これらの項目にことごとく思い当たったというあなた。実はこれ、座り姿勢が長く続き、3つの部位が衰えているサイン。弱体化した周辺の筋肉をほぐしつつ鍛え、歪んだバランスを整えるエクササイズで、凝りや痛みの出にくい安定した姿勢を目指そう!
編集・文/オカモトノブコ 撮影/松橋晶子 ヘア&メイク/大谷亮治 スタイリスト/高島聖子 イラストレーション/鈴木衣津子 監修/澤木一貴(SAWAKI GYM代表)
初出『Tarzan』No.849・2023年1月26日発売
股関節・骨盤・腰椎を救おう!
「座りすぎ姿勢で最も悪影響を受けるのが、尻の臀筋群。この奥にある深層外旋六筋とともに、骨盤と大腿骨をつないで股関節の動きに関わる筋肉です。“人間は脚から衰える”と言いますが、現代生活では“尻から衰える”と言うのが実情に近い」と話すのは、トレーナーの澤木一貴さん。
では、座りすぎで足腰に不調をきたすのはなぜか。
機能解剖学的に見ると、それには股関節・骨盤・腰椎が連携して働く“腰椎骨盤リズム”というメカニズムが影響する。
「簡単な例で言えば、股関節が屈曲すると腰椎も連動して曲がり、伸展すると腰椎がほどよく反るという仕組みのこと。
座りすぎでこのバランスが崩れると、骨盤を中心とした股関節と腰椎の衰えが進行し、姿勢の悪化により多くの不調を招きます」
「座りすぎ」による3大部位のトラブル
股関節:骨盤と大腿骨をつなぐ尻や太腿まわりの筋肉が硬く衰え、関節がねじれて歪む。脚も開きづらくなり、つい脚を組んでしまう原因にも。
骨盤:正しい姿勢では軽く前傾するのが本来のポジション。周辺の筋肉が弱化して前後へ過度に傾くと、座ってから素早く立つ動作が困難に。
腰椎:土台の骨盤が傾くと過剰なカーブや反りが生じ、腰が重だるくなる。骨同士や、間にある椎間板が圧迫されることで腰痛にもなりがち。
まずはチェック骨盤の後傾/前傾
姿勢の崩れを骨盤から見ると、多くは後傾・前傾の2タイプに分類される。そこで原因となる筋肉や関節の歪みにアプローチするエクササイズを紹介。
ただし周辺の筋群は全体的に弱化しているため、もし迷ったら両タイプを行っても構わない。カラダがしっくり感じれば、それは自分に必要なエクササイズなのだ。
骨盤の傾き2タイプ
骨盤の上方が後ろへ、下方は前へ傾いて腰椎が丸まり猫背になりやすい。腹筋がうまく機能せず下腹ポッコリの原因にも。
骨盤の上方が前へ、下方は後ろへ傾いた、いわゆる反り腰タイプ。一見、キレイな姿勢に見えても腰椎への負担は大きい。
タイプ別・股関節のエクササイズ
「骨盤まわりを動かさないでいると、腿裏の筋肉が硬く縮んで股関節の動きが悪化します」と澤木さん。骨盤を逆側に倒しながらの動的ストレッチで、関節まわりのねじれを整えよう。
後傾タイプは前後の筋バランスを整える
チェック
骨盤が後傾すると、股関節はダランと外に開いてガニ股になりやすい。硬く収縮して骨盤を後ろに引っ張る腿裏のハムストリングスを、骨盤の前傾ポジションから伸び縮みさせることで歪みの調整を。
改善エクササイズ:ヒップヒンジ&リーチ(10回×1〜2セット)
足幅はやや開いて膝を軽く曲げ、手のひらを正面に向けて立つ。ここから手を遠くへ押し出すと同時に、腰を反らしながら尻を後ろへ大きく突き出す。スタートの姿勢に戻って繰り返す。
前傾タイプは腰を丸めて腿裏をストレッチ
チェック
骨盤が前に傾くと股関節が内側にねじれ、膝が近づいて内股になりがちなタイプ。腰椎を丸めた状態からハムストリングスを伸び縮みさせ、骨盤とも連動したストレッチで股関節の柔軟性は取り戻せる。
改善エクササイズ:サイハグハムストリングス(5回×2〜3セット)
両足を軽く開いてしゃがみ、膝をハグするように抱えて両肘を持ってホールドする。腰の丸みをキープしたまま膝を伸ばしてゆっくり立ち上がり、ゆっくりしゃがんでを繰り返す。
タイプ別・骨盤のエクササイズ
骨盤の傾きは、下部に位置する「坐骨」でチェックできる。「尻の下に手を敷き、骨が垂直に当たるのが正しい座りポジション。弱化した臀部や鼠蹊部の筋肉にアプローチして改善を」(澤木さん)。
後傾タイプは骨盤裏側の腸腰筋をストレッチ
チェック
骨盤が後ろに倒れて坐骨が前に突き出たこのタイプは、腰椎と骨盤から大腿骨をつなぐ「腸腰筋」が硬く縮んだ状態。骨盤のポジションを意識しながら鼠蹊部を伸ばすことで、ストレッチ効果を最大に。
改善エクササイズ:フェンシングストレッチ(左右各30秒×1〜2セット)
片脚の膝をまっすぐ立て、後ろ脚は膝をつけて大きく開く。胸をいったん広げて上体を前に倒し、床に手をつけて後ろ脚の付け根をストレッチ。骨盤をやや丸めるイメージで、腰の反らしすぎに注意。反対側も行う。
前傾タイプは尻の引き締めで傾きを補正
チェック
反り腰で骨盤が前傾すると、坐骨の位置は後方に。このタイプで衰える尻の大臀筋やインナーの深層外旋六筋は、股関節の外旋によって働く。加齢により衰えやすい骨盤底筋群もあわせて強化したい。
改善エクササイズ:フロッグヒップリフト(10回×1〜2セット)
仰向けで両足の裏を合わせ、手はカラダの横で下に向ける。息を吸って鼠蹊部を上に突き出し、吐きながらゆっくり下ろして繰り返す。腰は反らさず尻を締め、股関節の外旋で最大に縮めた筋肉を効率よく鍛えよう。
タイプ別・腰椎のエクササイズ
「骨盤の傾きに連動する腰椎は、丸まりすぎても反りすぎても悪影響が。失われた自然なカーブを取り戻すエクササイズが有効です」と澤木さん。座りすぎの腰痛対策にも効果的だという。
後傾タイプは腰椎の自然なカーブを生み出す
チェック
骨盤が後傾すると、腰椎はバランスを取るため前へ傾く。すると背中は丸くなり、椅子の背もたれに手を挟むとピッタリ隙間がなくなる。背骨全体の動きと連動させて、腰椎の自然なカーブを取り戻そう。
改善エクササイズ:コブラプレス(5回×1〜2回セット)
うつ伏せで肘先を床につけ、上体を支える。息を吸い、口から「ハーッ」と一気に大きく吐きながら、できる場合は手で床を押して上体を起こす。へそは床に近づけ、腰椎の自然なカーブを意識して吐く息を繰り返す。
前傾タイプは股関節との連動で反り腰を改善
チェック
骨盤が前傾した反り腰タイプは、背もたれの間に手を挟むと隙間が大きく空くので一目瞭然。腰椎を連動させて股関節を曲げ伸ばしする動的ストレッチで、前後で衰えた腸腰筋と大臀筋にアプローチを。
改善エクササイズ:ウォールニーハグ(左右計10回×1〜2セット)
足を20cmほど離して壁にもたれ、頭・肩・仙骨(骨盤の中央)をつけて立つ。股関節から膝を持ち上げて抱え、2カウントで下ろして繰り返す。股関節の屈曲とともに腰椎も軽く丸めるのがコツ。反対側も行う。