ランナーなら知っておきたい「下肢疲労骨折」の部位と特徴
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第22回も長距離ランナーに発症しやすいランニング障害について。ラストは「下肢疲労骨折」について。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.829・2022年3月10日発売
小さな負荷の蓄積で起こる、下肢疲労骨折
これまで6回にわたり学んできた、長距離ランナーに発症しやすいランニング障害。ラストは「下肢疲労骨折」について考えていこう。
疲労骨折は同じ部位に小さな負荷が繰り返し加わることで、骨にひびが入ったり、折れたりする骨折のこと。外からの衝撃により生じる骨折と区別して疲労骨折と呼んでいる。
骨が修復するまで一定期間のランニング休止が必要になるため、ランナーにとっては精神面でもダメージの大きい障害だ。ストレスを最小限に抑えるためにも、正しい診断と治療、普段からの予防が重要になる。
判断するために、部位と障害の特徴を知ろう
診断・治療に関しては自分で行うことができないため、医師の診断を仰がなければならない。ただし症状が表れた際に「この部位とこの痛みであれば、骨折かもしれない」と疑うことは大切。判断するには疲労骨折が起こりうる部位と、障害の特徴を理解しておこう。
ランナーにおける疲労骨折の好発部位で多いのが、とくに負荷のかかりやすい下肢。なかでも脛にあたる脛骨骨幹部がもっとも多く、次いで大腿骨、中足骨、腓骨、骨盤、踵骨などによく見られる。
疲労骨折の可能性があるかどうかを判断するテスト方法に、片脚ジャンプをして着地時に痛みの有無を見るものがある。評価は次の4段階。
- まったく痛みがない
- 痛みはあるが10回跳べる
- 痛みでほとんど跳べない
- まったく跳べない
発症2週間以内では②が5割、③が2割、④が3割といわれており、痛みがある場合は病院やクリニックで診察を行い、X線またはMRIで検査を行う。
疲労骨折の治療と予防
疲労骨折との診断を受けても軽症であればランニングを休止して安静にすることで症状は治まり、早い場合では発症後2〜3週間で走れる可能性が高い。
しかし痛みが残っているうちに自己判断でランニングを再開してしまうと、疼痛の再発や、患部をかばうことでほかの部位に負担がかかり別の障害を招く恐れがあるため注意が必要だ。
筋力や心肺機能の維持のためには、下肢へのダメージが少ない水中運動(泳ぐ、走る)や自転車トレーニングで補い、ランニングは痛みがなくなるまで完全に休止すること。
テストのレベルが①、②まで痛みが軽減したらまずはウォーキングを開始し、1週間様子を見る。完全に痛みが出なくなったら負荷のかかりにくい土や芝などの路面で10〜20分程度のジョギングを開始し、3〜4週間後ぐらいに60分程度のジョギングを目標とする。
疲労骨折している部分は押すと圧痛を生じたり、圧痛を感じる場所が盛り上がっていたりすることがあるため、これを見極めるためにも普段からマッサージなどで圧痛の有無を調べることも重要。
併せて、骨盤や下肢骨にかかる負担の軽減に役立つハムストリングス、大腿四頭筋、アキレス腱のストレッチも行うと故障や再発を未然に防ぐことができる。
予防法の例
復習クイズ
答え:脛骨