これが正解。ランニングのケガ対策
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第16回は、「ランニング障害〜腸脛靱帯炎〜」について。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.823・2021年11月25日発売
スポーツの「外傷」と「障害」の違いは?
これまでの連載では、姿勢不良が招くカラダの不調を整えるコンディショニングについて学んできた。ここからは、スポーツが招く運動器トラブルからの回復や予防、パフォーマンスアップについて考えていくことにしよう。スポーツ時のケガは、どのように起きたかにより「外傷」と「障害」に分類される。
外傷:転倒や衝突など、一回の外から加わる力により組織が損傷すること。打撲、骨折、捻挫、肉離れなどがこれにあたる。
障害:長期間にわたる反復動作により、過度の運動負荷がかかることで組織が損傷すること。疲労骨折、関節炎、慢性腰痛などがこれにあたる。
外傷が起きた場合は適切な処置が必要であるため、医療機関を受診するのが望ましい。一方の障害も、骨や神経の損傷が見られる場合は医療機関を受診すべきだが、そもそもトラブルを未然に防ぐこと、そして痛みが治まったあとのケアはセルフでできる。
今回はスポーツのなかでも「ランニング」にフォーカスし、痛みの原因、症状、予防、そしてケアについて考えていこう。
ランナーが陥りがちな膝痛「腸脛靱帯炎」
腸脛靱帯は大腿部の外側に位置する、人体で最も長い靱帯。「腸脛靱帯炎」とは、この腸脛靱帯へ繰り返しの負荷がかかることで、大腿骨外側上顆(下イラスト丸部分)に疼痛を発症する病態のことを指す。
長距離ランナー(特に初心者)の発症率が高いことから、別名ランナー膝とも呼ばれている。
カラダの内面で起こる原因としては、疼痛が出る骨外顆(膝の外側上方)が出っ張っていることで、内反膝(O脚)の場合は腸脛靱帯がその骨の出っ張りに擦れやすいことが考えられる。そのほかにも、大腿四頭筋や腸脛靱帯の過緊張、中臀筋の筋力低下、股関節内転、膝関節内旋、膝関節の揺れなどもリスクとなる。
一方、外的な因子としては、アスファルトのような硬い路面や傾斜などで運動を繰り返すことで脚に衝撃がかかること。また、靴底がすり減ったシューズで走りバランスが悪化することも原因として挙げられる。
腸脛靱帯炎への対応と予防
オーバーワークが原因で痛みが発症したら、まずは安静。走る距離や時間を減らして調整し、重症の場合はランニングを中止する。運動直後のアイシング、テーピング、消炎鎮痛薬の内服や温熱療法も有効だ。痛みが和らぎ、歩行に違和感を感じなくなったら再発防止のための予防アプローチに移る。
コンディショニングの方法は、痛みの発症原因を見直して、それを未然に防いでいくこと。つまり、大腿四頭筋・腸脛靱帯の柔軟性獲得、中臀筋の筋力強化、膝の揺れを防ぐための筋力強化やランニングフォームの調整、さらにインソールを使ったアライメントの調整などが必要となる。
まずは、予防エクササイズからトライしよう。
ふたつの予防エクササイズ
復習クイズ
答え:大腿骨外側上顆