股関節に痛みや詰まりを感じたら…。それグロインペイン症候群かも
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第18回は、ランニング障害〜股関節障害について。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.825・2022年1月4日発売
まずはどの疾患に近いかを観察しよう
今回も引き続き、ランニング障害のコンディショニングについて学んでいこう。テーマは「股関節障害」。
上半身と下半身を繫ぐ股関節は、歩く・座る・立つといった基本動作の要ともいえる場所。関節や筋、靱帯などの組織がいくつも集まる複雑な構造だけあり、一口に“股関節痛”といっても症状や原因はさまざまだ。
「違和感」「詰まり感」「痛み」などの症状が表れたら、まずは以下のどの疾患に近いか、観察するところからスタートする。
① 弾発股
少々インパクトのある名前だが、股関節運動時に「コツッ」「ポキッ」といった音が鳴ったり痛みが表れる疾患を弾発股という。腸脛靱帯が股関節の外側にある大転子を乗り越える際や、腸腰筋腱が腸恥隆起や大腿骨頭に引っかかると音が鳴る。
② 恥骨結合炎
鼠蹊部周辺の痛みが続き、とくに骨盤の正中線上の下部、左右の骨盤の繫ぎ目部分である恥骨結合に圧痛が起こる疾患を指す。腹直筋の筋力・柔軟性の低下が原因の一つ。自己判断が難しいため、専門家に診てもらうことを勧める。
③ 大腿骨疲労骨折
股関節前面の圧痛、大転子の叩打痛、膝を内側に入れるいわゆる“お姉さん座り”ができないなどの症状が出る。稀な疾患ではあるが診断が遅れると症状が悪化する可能性があるため、前述の痛みを感じたら医師の診断を仰ぐことが望ましい。
④ グロインペイン症候群
上記の症状には当てはまらない、だけど股関節周辺に違和感や痛みがある。そんなときはグロインペイン(鼠蹊周囲部痛)症候群が疑われる。股関節周囲または鼠蹊部に疼痛を生じる疾患の総称で、痛みの原因が特定できないことが多い。
ここからは、この「グロインペイン症候群」に着目して、予防法と治療法について考えていくとしよう。
グロインペイン症候群の症状が出やすい部位
グロインペイン症候群の治療と予防
股関節に限らず言えることだが、痛みが出てからの対処と同時に“痛みを出さないこと”も重要となる。そのためには痛みを誘発しているだろう原因を洗い出し、一つずつ改善していく。股関節痛の原因として考えられる内的要因は以下の通り。
- アライメントの崩れ
- 可動域の低下
- 筋力不足
ほかにも外的要因として、
- オーバーユース
- ランニングフォームの崩れ
- ランニング環境(硬い路面等)
などが考えられる。これを踏まえると、まず取り組むべきはアライメントのチェックになる。立位の姿勢でどこに荷重がかかっているか、X脚やO脚になっていないかを把握しておくこと。
そのうえで、可動性を高めるストレッチに取り掛かる。股関節本来の可動域に達すれば自ずと歩幅が大きくなり、バランスよく荷重がかかる。その結果、ランニングフォームの安定や筋力アップにも繫がっていく。
エクササイズの例
復習クイズ
答え:腸脛靱帯