ラン後の違和感…それ「シンスプリント」かも
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第17回も、前回に続きランニングにおけるスポーツ障害のコンディショニングについて。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.824・2021年12月16日発売
シンスプリントの症状と原因
前回(これが正解。ランニングのケガ対策)に続き今回も、ランニングにおけるスポーツ障害のコンディショニングについて考えていこう。テーマは、下腿への過負荷によって誘発される「シンスプリント」。
シン(shin)=脛という単語が入っていることからもわかるように、脛骨の内側に痛みが発症する症状を指す。シンスプリントは病名というよりも症候群と解釈するほうが正しく、さまざまな病態が存在することから「脛骨過労性骨膜炎」「過労性脛部痛」「脛骨内側症候群」などとも呼ばれている。
シンスプリントを誘発するもっとも大きな理由はオーバーワークだとされているが、そのほかにも、
- 硬い路面でのランニング
- 過度の走り込み
- アライメントの崩れ(O脚、扁平足など)
- フォームの乱れ
- 足底アーチの低下
- ふくらはぎの筋力・柔軟性の低下
- 体重増加
など、さまざまな要因が引き金になる。
初期症状はランニング後のみに違和感を覚える程度だが、徐々に運動中にも痛みを感じるようになり、パフォーマンスが低下し、重症化すると歩行時や安静時のうずくような痛みにつながっていく。
症状に応じた適切なコンディショニングを
シンスプリントは重症度によって、一般型と重症型に分けられる。
それぞれの特徴は以下の通り。
一般型
- 復帰までの期間はおよそ2週間。
- ランニング中の主に踏み切り準備からテイクオフ(蹴り出し)に痛む。
- 脛骨内側縁から後方の筋群にかけて圧痛がある。
重症型
- 復帰期間は平均2〜3か月。
- 主に着地の瞬間に痛む。
- 脛骨の前側(脛骨前縁)、内側面、内側縁に圧痛がある。
重症型は1、2週間程度トレーニング量を減らしただけでは再発の可能性があり、最悪の場合は悪化する恐れもある。よって最低でも1か月間はランニングをはじめ、ジャンプ、インターバルなどは禁止。水泳や固定式バイクで心肺機能は維持しつつ、回復まで安静が必要となる。
一般型に関しては、パフォーマンスに影響がない程度の痛みであれば制限をする必要はなし。次のようなエクササイズやストレッチを取り入れ、予防に努めよう。
一般型のためのエクササイズ
コンディショニングの基本は、痛みの原因を改善することだ。
シンスプリントの場合は、爪先を下げる動き=底屈動作に使われる足趾屈筋群(そくしくっきんぐん)と下腿三頭筋(かたいさんとうきん)の柔軟性低下、さらに着地の衝撃を吸収するクッションのような役割を果たす足底アーチの機能低下が代表的な誘因として考えられる。
そこで取り入れたいストレッチ&エクササイズは、下腿のストレッチと、足先でタオルを手繰り寄せるタオルギャザリング。専門家によるフォームチェックと併せて取り入れよう。
ストレッチ
トレーニング
復習クイズ
答え:脛骨後方の筋群