ランナーを悩ます「足底腱(筋)膜炎」の原因は?
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第21回は、足底腱(筋)膜炎をひもとく。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.828・2022年2月24日発売
3つのアーチがある足裏の構造
1年間にランニング障害を発生したランナーのうち、足裏に痛みが生じる「足底腱(筋)膜炎」の発生率は7.9%と、アキレス腱障害、腸脛靱帯炎に次いで3番目に頻度の高い疾患といわれている。というわけで今回は、この「足底腱(筋)膜炎」へのアプローチを探っていこう。
まず筋膜のおさらいをすると、筋肉をはじめ、骨、内臓、血管など全身を包む膜であり、姿勢を保つ役割がある。足底筋膜とは踵の骨を最初の付着部とし、そこから5つに分かれて各指の中間あたりに付着する足底筋群を覆う膜のこと。
強靱な中央部分とそれよりも薄い内側と外側の膜からなり、疾患名にもある“足底腱膜”とは、この中央部分を指す。足のアーチを形成する重要な役割を果たしている場所だ。
足裏にはイラストA-Cにあたる内側縦アーチ(土踏まず)、B-Cにあたる外側縦アーチ、そしてA-Bにあたる横アーチと3つのアーチが存在し、それぞれが緩やかな弧を描くことでバネのような動きを生み、着地時の衝撃吸収や地面を蹴り出す際の推進力となっている。
ちなみに踵から着地をした際に足底腱膜にかかる負荷は歩行中で体重の110%、ランニング中は200%にも及ぶ。
もっとも痛みが出やすいのは踵付近
さて、足裏の構造がわかったところで今回のテーマである「足底腱(筋)膜炎」に話を戻そう。足底腱(筋)膜炎とは、足底腱膜に局所的な炎症や変形をきたした状態と定義されている。
もっとも痛みが出やすい部位は、足底腱膜の起始部にあたる踵付近。これは踵着地による地面からの反力によるストレスと、蹴り出し動作による伸長ストレスが繰り返されることで起きると考えられている。繰り返し動作が引き金になることから、外的要因として
- ランニング歴
- トレーニング頻度
- 走行距離
- 硬い路面状況で走る回数
これらが多いまたは長いほど発症率は上がる。一方内的要因は、
- 高身長
- 内反膝(O脚)
- 回外足
- 凹足(ハイアーチ)
- アキレス腱やふくらはぎの拘縮による、足首の可動域制限
等々が原因だとされている。
初期段階の症状は、運動後の踵の痛み。これを放っておくと、起床時や走り始めに痛みを感じるようになり、さらに深刻化するとランニング中にも痛みを伴うようになる。
足底腱(筋)膜炎の予防と治療
足底腱(筋)膜炎の場合、痛みが発症したら保存療法、つまり安静という処置をまずはとる。初期段階では練習量を減らす、ペースを落とす、距離を短くする。痛みが続くようであれば練習を数日間ストップする。
これと同時に筋肉のこわばりを解くストレッチも。下肢全体を伸ばすのがベターだが、メインは足裏とふくらはぎ。痛みが和らいできた段階で、ランニングフォームを安定・改善するためのエクササイズに移ろう。
ストレッチ&エクササイズの例
復習クイズ
答え:内反膝(O脚)、凹足(ハイアーチ)