シックスパックになりたいあなたの「6つの基礎知識」
シックスパックになるためのトレーニングに取りかかる前に、お腹まわりのその疑問、サクッと腹落ちしておこう。
取材・文/石飛カノ 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/村田真弓 イラストレーション/Yunosuke 取材協力/石井直方(東京大学大学院総合文化研究科)
初出『Tarzan』No.786・2020年4月23日発売
目次
1. そもそもなぜ、お腹に脂肪が溜まる?
A. 溜めやすい場所に溜め込む生物としての戦略です。
なぜみんな腹を割りたがるのかといえば、久しく割れた腹を見ていないから。
余ったエネルギーは体脂肪として即、溜める。これは長年、飢餓生活を強いられてきた生物の戦略だ。貯蔵部位は体幹部、それも最も体積を稼げるお腹。なので、飽食&運動不足でだらだら過ごしていれば、シックスパックは脂肪の奥深くに封じ込まれたまま。
そもそも、生物のカラダにはよく動かす部位に脂肪が蓄えられにくいという仕組みがある。もし、前腕やふくらはぎに脂肪がたっぷり蓄えられていたら、何か動作をするときかなり邪魔だし重心バランスもとりにくい。
それに比べて、カラダの中心で重心の在り処である体幹なら、それなりに脂肪が蓄えられてもさして動作に支障はない。重心はどっしり、細かい動きは末端が行えばいい。
つまり、この生物としての戦略にまんまと乗っかっているうちは、腹は割れないということ。
2. 痩せたら誰でもシックスパックになる?
A. ガリ体型になるだけで割れない人もいます。
構造上、腹筋が節状になっているなら話は簡単。痩せれば深層のシックスパックが炙り出されてくるはず。フッキンやるのは面倒なので、ひたすらダイエットに励んでみた。ところが、痩せたはいいけれどお腹はほぼのっぺらぼう。うっすら腱画の溝が見えるか見えないかというレベル──。
痩せさえすれば誰でもパキッと腹が割れるわけではない。もともと筋肉がつきにくい人はなおさら。腹筋を肥大させてはじめて、堂々のシックスパックといえるのだ。
3. 人によってシックスパック、フォーパックってマジ?
A. 4つに見えても実は6つです。
ヤッター、腹が割れた! おや? でもなんか変。ヘソから下の腹筋下部の節を合わせてようやくシックスパック? ってことは自分の腹筋、フォーパック?
確かにそういう人もいる。でもこれ、遺伝的な変異で体節の数が異なるというわけではない。
カラダの中心を縦に走る白線と、横に走る2つの腱画によって区切られた節の数はみな6個。
でも、上または下の2つの節が小さすぎて4個にしか見えない。そんな可能性もあるのだ。人によっては左右の腹筋の位置がズレていることも。この位置関係こそが遺伝によるもの。
4. 腹筋は腕や脚より大きくなりにくい?
A. 外側に張り出しにくいだけ。大きくはなります。
まっとうに鍛えなければ本物のシックスパックとはいえない。けれど、ベンチプレスやアームカールでムキムキ盛り上がる大胸筋や上腕二頭筋に比べて、腹筋ってイマイチ盛り上がりに欠けるような…。
そんなことはない。盛り上がりに欠けているのは、的確に腹筋が刺激されていないせい。基本的に筋線維そのものは胸であろうと腕であろうと腹であろうと違いはない。唯一違うのは骨と筋肉との位置関係。
大胸筋は肋骨、上腕二頭筋は上腕骨という骨が筋肉の内側にある。よって肥大すれば外側に張り出す。これに対して、腹筋の内側に骨は存在せず深層筋である腹横筋の腱膜があるのみ。よって肥大したとき内側に張り出していく可能性がある。腹筋、ちゃんと盛り上がってます。
5. 腹筋はどこから割れる?
A. よく使われる上から割れます。
トレーニングを開始すれば腹筋がいっぺんにまんべんなく養われる、わけではない。腹筋は上部から割れていく。というのは、クランチなどの基本的な種目で主に使われるのは腹筋上部だから。
さらに、腹筋上部は日常的な動作でも使われやすい。たとえば、朝、目覚めたときどうやって起き上がる? 仰向け姿勢からムクッと上体を起こすときに使われるのは腹筋上部だ。
一方、腹筋下部は立った姿勢で骨盤全体を後傾させるときなどに働く。日常生活ではなかなか稼働させる機会が少ないといえる部位。
なら、電車の中やオフィスで普段から脚上げする機会を作れば、下っ腹に効くのでは? 残念ながら、そうした動きでは主に大腿直筋や大腰筋が働いてしまう。腹筋下部に効く前に腰がだるくなってギブアップとなる。残念。
まずは上部をきっちり割り、下部には下部に効かせる種目を導入してじっくり仕上げる心づもりで。
6. 腹筋には遅筋が多いってホント?
A. ウソです。使ったら労りましょう。
腹筋トレは毎日やってもよし。なぜなら姿勢を維持する抗重力筋で遅筋が多いから、という説がある。
筋肉にはざっくり持久的な能力が高い遅筋と瞬発的な能力に長けた速筋がある。大きな負荷をかけた筋トレで肥大するのは後者。なので、筋トレ後は超回復の時間を与える必要がある。遅筋は低負荷トレーニングで養われるので毎日トレーニングしてもオッケー。だからフッキンも毎日してよしという理屈。
でも、まずひとつに腹筋の速筋と遅筋の比率はおよそ5:5で遅筋優位というわけではない。さらに、オールアウトするような高回数トレでは疲労困憊するので、やはり超回復の時間は必要。基本的に腹筋も他の筋肉を発達させるのと同じ戦略で攻めるのが正解だ。
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