• すべての筋育者に捧げる、数字で学ぶ「筋肉豆知識」
TRAINING
2018.11.18

すべての筋育者に捧げる、数字で学ぶ「筋肉豆知識」

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意外と知らない筋肉のヒミツ。トレーニング効果、熱量、歴史、筋線維…。「筋肉にまつわる数字」をテーマに、筋肉を正しく育てるために知っておきたい筋育知識を紹介!

1. 筋肉が1kg増えると、基礎代謝が13kcal増す

何もせずにじっとしているだけでも、生命活動を維持するために消費されるエネルギーを「基礎代謝」と呼ぶ。この総量の20%ほどが、筋肉によって消費される。筋肉はかなりの大食いなのだ。

では、トレーニングによって筋肉量を1㎏増やすと、どれぐらいエネルギー消費は伸びるのか。机上の計算では、1日に13kcalという結果が得られる。

たとえば、この増えた消費量で、これも計算上だが、1年間に659gの脂肪を燃やすことができる。

ただ実際には、消費できる量はもっと増えるようだ。なぜなら、筋肉が増えると、内臓などの代謝も上がってくるため。それも含めると、1日に50kcalほどになるという。それを365日に換算すると1年で脂肪2.5㎏分に当たる。けっこうな量だ。

しかも、筋肉が増えれば、より活動的な日常を送れるようになる。さすれば、運動によるエネルギー消費だって多くなっていくはず。健康的な生活を送るためには、筋肉を育てるというのも、よい方法のひとつなのである。

2. カラダの変化がわかるまで、最低でも9週間かかる

「火事場のバカ力」という言葉をご存じだろう。危急のときに信じられない力が出ることを表した言葉だ。これは、実際にある。が、すべての筋肉がフル活動すると、筋肉がケガをする可能性が高くなるため、普段は使われないのだ。

日常生活では、筋肉の中にある筋線維の何割かが使われ、それ以外は休眠状態にある。筋力トレーニングを始めると、休眠状態だった筋線維が神経系の働きにより、活動を始める。すると発揮できる力は大きくなっていく。

でも、このときはまだ筋肉は大きくならない。そして、トレーニングを続けていくと、やがて筋線維自体が大きくなるようになっていくのだ。その期間が9週間。つまり、カラダに何の変化が表れなくても、この期間は続けたい。どんな短気な人でも、だ。

すると、それ以降は自分のカラダが変わっていくのが目で理解できるようになる。それをモチベーションとして続けていくことができるはずだ。

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トレーニングでの筋肉の変化 上腕の裏側にある上腕三頭筋をトレーニングして、その変化を筋断面積で計測した。9週間で約15%大きくなり、はっきりとした変化を目視できるようになった。 Eur J Appl Physiol(2013):935.より作図

3. トレーニングを中断しても、再開すれば30日で変化する

マッスルメモリーという言葉がある。筋肉の変化が目に見えるのには9週間かかることは前述した。が、トレーニングを習慣にしていた人が、何らかの事情で続けられなくなったとき、再び始めれば1か月、つまり4週間強で変化するというのである。

たとえば、筋肉を覆う細胞膜が、最初のトレーニングで拡張しているから、筋肉が大きくなりやすいとか、筋肉内に核が増えるから、といろいろな推測がなされているが、まだはっきりとその理由はわかっていない。

しかし、トレーニングの現場にいる人たちは、ごく普通に見知っていること。

トレーナーの清水忍さんも、その一人。彼は、過去のトレーニングの経験がマッスルメモリーを生む理由のひとつでないかと、考えている。たとえば100㎏を上げた経験を持っている人は、それがどのような感覚かを覚えているし、トレーニングへのモチベーションも変わってくる。これが変化を早く起こさせるのではと推測しているのだ。

4. 体重1㎏につき1.5g以上、これが必要なタンパク質量

タンパク質は、カラダを作るうえで欠かせない栄養素だ。髪の毛、爪、そしてもちろん筋肉も、全部、タンパク質によってできている。

タンパク質は体内でバラバラにされて、アミノ酸となって小腸から吸収される。そして、各組織へと送られ、その組織に必要なタンパク質へと再合成されるのだ。

では、いったいどれぐらいの量が必要なのであろう。トレーニングをしている人の場合は、体重1㎏当たり、1日1.5~2gが適当だといわれている。体重70㎏なら105gだ。

トレーニング愛好家のなかには、過剰にプロテインなどで摂取している人がいるが、それはムダなこと。タンパク質の再合成には時間がかかり、多量に摂ると頭打ちになってしまう。そして、余分なモノは排泄されてしまうのだ。

また、タンパク質は食品から摂り、その補助としてプロテインなどを使用したい。そのために、どの食品にどれほど含まれているかを知っておくのもいいことだろう。

肉、魚に含まれるタンパク質

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5. 0.002mmのサルコメアが、筋肉の動きを司る

筋肉の構造について述べたい。まず、筋肉は筋束が集まって形成されている。そして、筋束は筋線維という筋細胞の束だ。さらに、筋線維の中には、筋肉の最小単位である筋原線維が詰まっている。

で、この筋原線維の中にはアクチンとミオシンという2つのフィラメントがサルコメアという構造体を作っている。このサルコメアの長さが0.002㎜なのだ。ミオシンとアクチンは刀と鞘に、よくたとえられる。

筋肉が弛緩しているときは、ミオシンという刀はアクチンという鞘から刀身を出している。そして、収縮するときに鞘の中にすっぽりと刀身が収まるのである。収まった刀身の分が縮むのだ。どれぐらい縮むのか? 1つのサルコメアが縮むと長さが0.0015mmほどになる。つまり、0.0005mm短くなるのだ。

筋肉には、このサルコメアが縦方向にズラリと並んでいる。10cmでざっと5万個。これらがひとつひとつ縮むことで、全身のダイナミックな動きが生まれているのである。

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筋肉、筋束、筋線維、筋原線維の関係(右上)。で、アクチンとミオシンによってできるサルコメア。ミオシンという刀身がアクチンという鞘に収まり、収縮(左上)。

6. 筋収縮のエネルギーは、 ATP、たった1つ

実は、筋肉を収縮させることができるエネルギー源は、たった1つしかない。それがATP(アデノシン三リン酸)だ。

ATPはアデノシンという物質に、リン酸が3つくっついた構造をしている。ここからリン酸が1つ外れてADP(アデノシン二リン酸)に変化するときに出るエネルギーによって、筋肉は縮むのだ。

糖や脂肪は?と思う方もいよう。実は、ATPは体内にとても少量しかない。なくなったら、動けなくなる、どころか死ぬ。だから、ADPにリン酸を結合させて、ATPを再合成させなくてはいけない。

そして、この再合成に必要なエネルギーが糖であり、脂肪なのだ。再合成には3つの方法がある。ひとつがATP-CP系。これは体内のクレアチンリン酸からリン酸を外してATPを作る。

次が解糖系で、糖質を化学変化させる過程で発生するエネルギーで再合成を行う。最後が有酸素系で、酸素を使って、糖や脂肪によりATPを作り出す。ATPの再合成は重要課題だ。

7. ユージン・サンドウが著書を出版して120年

狩猟民族にとって、もともと筋肉は生き延びるために必要だった。敵と戦うために、自然に鍛えられていたのだ。

筋肉を発達させる目的で運動が行われるようになったのは、紀元前2500年頃のエジプトだったらしい。また、古代ギリシャ時代のオリンピアも有名である。

時代は変わって1897年、ユージン・サンドウが現代のトレーニングの元となる本を出版。ここからトレーニングが、各方面で取り入れられるようになった。そして、これらのトレーニング法をまとめて名前を付け、世界中に広めていったのがジョー・ウイダーだ。

あの『Muscle&Fitness』の創刊でも知られている。ここから、トレーニングに火がつき始める。各種トレーニングが1950年代に花開き、それがさまざまな枝葉を生み、また新技術への布石となった。

最近ではスロートレーニング、体幹トレーニングなどはお馴染み。トレーニングが確立されて120年。まだまだ進化していくのである。

8. 自分の足で歩きたいなら、 0.5%の減少を抑えたい

加齢とともに筋肉は減少するのをご存じだろうか。普通に生活していると、1年で0.5%ほど少なくなるといわれている。そして、50歳を過ぎると、そのスピードは速くなり、1年で1%ほどにもなる。とくに下肢の筋肉に限っていえば、20歳をピークに減少の一途を辿るというデータがある。

また、重力に抗って立位を支える抗重力筋も、筋肉量は落ちていく。抗重力筋には、大腿四頭筋、大臀筋、腹直筋、脊柱起立筋などがある。こうなってしまう理由はさまざま考えられる。

まず、タンパク質の合成速度が落ちる。なかなか筋肉を作れなくなるワケだ。また、加齢による食欲の低下もあるだろう。筋肉を作る材料が減ってしまうのだ。

そして、なにより大きな理由が、運動不足である。ただでさえ、筋肉は使われないと小さくなるのに、これに加齢で拍車がかかってしまう。だから、歳をとってもしっかりと自分の足で歩きたいのなら、トレーニングを行うべきなのだ。特に抗重力筋は重点的に。冗談ではなく!

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下肢の筋肉の筋肉量の変化
40代を100%として大腿部前後面と下腿部前後面の筋肉量の変化を計測した。大腿部後面は筋肉量の減少は少なかったが、その他の部分は著しく筋肉量が減っている。
出典/『1から学ぶスポーツ生理学』(NAP社)

9. 全身には600もの筋肉が。それらが協力して働いている

全身には約600もの筋肉がある。そのうちの約400が自分の意思で動かせる、つまり理論上ではトレーニングで鍛えていける筋肉だ。そして、これらの筋肉は互いに助け合い、カラダの緻密な動きに対応している。

たとえば、歩いているとき、どれぐらいの筋肉が働いているだろう。脚にある筋肉はもちろん、腕を振ったり、姿勢を保ったり、動いているときバランスをとるために働く筋肉もある。そして、脚を動かすのであれば、その動きを作り出す中心となる筋肉を主働筋と呼び、その主働筋を補助する筋肉を協働筋と呼ぶ。

よくトレーニングでは“鍛えている筋肉を意識すること”と言われるが、これは主働筋を意識しなさい、ということなのだ。もちろん、実際には協働筋も鍛えられている。ある動作において、どれが主働筋で、何が協働筋か知っておけば、ひとつの筋肉ばかりが使われ続け、疲弊してしまうことを防げる。

オーバートレーニングにならないようにある程度理解しておいたほうがいいかも。

10. 筋肉は平滑筋、心筋、骨格筋の3種類

全身には、約600の筋肉があることは前述した。そして、この筋肉は平滑筋、心筋、骨格筋の3種類に分けることができる。まず、胃や腸、それに血管などを動かして、消化吸収を助けるのが「平滑筋」。生命の源、心臓を拍動させるのが「心筋」である。これらの筋肉は自分の意思で動かせないことから不随意筋とも呼ばれる。

反対に自分の意思で動かすことができる随意筋が「骨格筋」。トレーニングでは、この筋肉を鍛えることになる。骨格筋は多くが関節をまたいで骨に付着している。そして、関節を曲げるために収縮する屈筋と、伸ばすための伸筋がある。

筋肉は縮むことはできるが、自らの力で元の長さに戻ることができないため、反対方向に力を発揮する筋肉がペアを組んでいるのだ。基本的には、屈筋が収縮したときは、伸筋は弛緩する。

両方が揃って力を発揮すると関節が動かないから、こういうシステムができあがっているのだ。両方の筋肉をバランスよく鍛えることが重要となる。

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肘関節を見てみよう。上腕の表にある上腕二頭筋が屈筋で、裏にある上腕三頭筋が伸筋だ。肘を曲げるときは二頭筋が収縮し、三頭筋が弛緩する。伸ばすときは、その逆だ。

11. 筋肉には大きく速筋、遅筋の2つのタイプがある

最後に、筋肉には大きく2つのタイプがあることを知っておこう。それが、速筋と遅筋である。まず、速筋は大きな力を発揮することができる筋肉だ。ただし、長時間働き続けることが苦手である。

反対に遅筋は、小さな力しか出すことができないが、長い時間働き続けることができる。遅筋には多くの毛細血管が張り巡らされ、体内の化学工場であるミトコンドリアも多数有している。そのため、酸素や糖、それに脂肪を使ってATPを多く産生できる。

逆に速筋はそれらが少ない。2つのタイプにはさらに特徴がある。速筋は肥大しやすく、遅筋は肥大しにくいということ。パワーで勝負する格闘家のカラダと、持久力で勝負するマラソンランナーのカラダを比べてみると理解できるだろう。

遅筋と速筋の比率は、先天的に決まっている。でも、安心してほしい。遅筋が多い人でもトレーニングをしていけば、速筋優位の人よりもゆっくりではあるが、しっかりとカラダを作っていくことはできる。

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瞬発力に優れた格闘家タイプは、筋肉に速筋の占める割合が高い。そのためカラダが大きくなりやすい。逆に、持久力を発揮するマラソンランナーは、遅筋が多い。そのため筋肉は肥大しにくく、スレンダーな体型となる。

取材・文/鈴木一朗 撮影/山城健朗 スタイリスト/山口ゆうすけ ヘア&メイク/天野誠吾 イラストレーション/内山弘隆 監修/中里浩一(日本体育大学教授)、清水 忍(IPF代表)
(初出『Tarzan』No.718・2017年5月11日発売)

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