椅子の上でテレビを見ながら脂肪燃焼!
5つのヨガポーズで“反り腰”を改善!
肩こり予防でアプローチすべきは肩“じゃない”。
「最低限これだけは!」という自宅トレ2種目。
ダイエッターにおすすめの焼き鳥10本。
体幹を鍛えるとどんないいことがあるの?
寝たままできる。シャキッと目覚めるためのストレッチ10選。
痩せたい人に最適な「ミトコンドリアに効く筋トレ」。
  • 公開:

痩せる以外にも! 覚えておきたいジョギング5つのご利益

覚えておきたいジョギング5つのご利益

ジョギングは痩せるのに有効だが、ただダイエット効果だけに期待してなんとなく走るのはもったいない。さまざまな研究や調査で、カラダにいい影響を及ぼすことがわかっている。エビデンスとともに紹介しよう。

① 筋肉から出るホルモンで頭が良くなる

仕事で煮詰まったときジョギングをしたらアイデアが閃いた。そんな話を聞いたことはないだろうか? これ、単なる気分転換の作用ではない。実は運動することによってを成長させる栄養が増えることが分かっている。

栄養の名はBDNF(脳由来神経栄養因子)。運動の刺激が筋肉に伝わるとPGC-1αという物質が活性化され、筋肉からマイオカインと称されるさまざまなホルモンが分泌される。

この一連の化学反応からBDNFが作られ、血管経由で脳に運ばれて神経細胞を再生させることが最新の研究で明らかにされている。

BDNFが記憶に関わる海馬に作用すれば記憶力が増強され、理性の中枢である前頭野に作用すれば創造性がかき立てられる可能性は大あり。しかも強度の高い運動よりジョギングのような軽運動でBDNFはより増加する。煮詰まったら走るべし。

運動で頭が良くなる仕組み

運動で頭が良くなる仕組み

② 肥満が原因の病気を防ぐことができる

運動刺激によって筋肉で活性化するPGC-1αは体内の遺伝子情報のやりとりを促す物質。この物質が実にさまざまな役割を果たすことが分かってきている。

たとえば運動不足や肥満に陥ると全身の細胞に慢性的な炎症が起こる。脂肪細胞に炎症が起こると糖尿病、脳細胞が炎症を起こせばアルツハイマー病などのリスクが高まる。

PGC-1αはこうした炎症反応の火消し役と考えられているのだ。つまり運動こそはさまざまな病の予防・改善に繫がる最大の妙薬。タダで病気が回避できるならやらない手はない。

多くの病気の原因は全身の炎症
多くの病気の原因は全身の炎症

不活動および肥満による全身性の慢性炎症が生活習慣病など多くの病気の引き金に。PGC-1αはこうした炎症作用を防ぐ。Handschin & Spiegelman. Nature 2008より

で、このPGC-1αは歩くよりはゆるゆる走る、さらにはちょっと息切れするくらいのスピードで走るとより活性化される。毎年、健康診断で要再検査の判定が下されるという人、今すぐジョギングを始めればその悩みは解消するはず。

走り出すことで PGC-1αが活性化される
走り出すことで
PGC-1αが活性化される

LTとは有酸素運動から無酸素運動に切り替わる運動ペースのこと。何もしないよりLTの80%程度のゆっくりジョギング、120%LTのランニングの方がよりPGC-1αの活性度が高い。Tobina T.et al. Sports Med Phs Fitness. 2011より

③ 縦方向の運動刺激で骨が強くなる

骨は肌や髪のような変化が見られないイメージがあるが、実は古い骨は破壊され新しい骨が再生されるというダイナミックな代謝を繰り返している。

骨を作る細胞から分泌されている微量物質のひとつがオステオカルシンというタンパク質。その役割は骨の強度を調節したり骨の細胞がくっつきやすいような足場を固めること。

さらに最近の研究では脳や膵臓に働きかけて脳の機能や糖代謝に影響を与えていることも分かってきていて、一説に「若返り物質」とも言われているのだ。

このオステオカルシンを作るきっかけとなるのは、やっぱり運動の刺激。とくに縦方向の刺激が骨に加わることでオステオカルシンの生成が促されると考えられている。

縦方向の刺激? そう、一歩着地するごとに自体重の負荷を脚の骨にかけるジョギングこそ、骨を強くして若返り効果が期待できる運動だ。

④ 肩こりや腰痛の改善につながる

まずは下のグラフをご覧あれ。高齢者の統計で、走っている人と走っていない人では前者の方が膝や股関節などに感じる痛みが少ないというデータだ。

走る習慣のある人は痛みの訴えが少ない
走る習慣のある人は痛みの訴えが少ない

55歳以上の高齢者の男女を対象にした研究。ランニング協会のメンバー492人と地域住民374人の痛みのスコアを比較。男女ともにランニング協会に所属している人の方が痛みの訴えが少なかった。Bruce et al. Arthritis Res Ther. 2005

膝や股関節まわりの筋肉を使う機会が少ないと、当然衰える。すると関節や腱に負担がかかり痛みが生じるという証拠のひとつ。

なにも高齢者に限った話ではない。働き盛りの人々にとっても同様のことが考えられる。デスクワークで長時間同じ姿勢をとることで血流が滞り、筋肉が硬くなる。その結果、慢性的な肩こり腰痛といった痛みが引き起こされるからだ。

一方、ジョギングを習慣にしている人はどうだろう? 硬直した姿勢を定期的に解放し、血液循環を促している彼らに筋肉を使わないことによる肩こり・腰痛の悩みはない。走って辛い凝りや痛みにサヨナラを。

⑤ 年齢による体力の低下が防げる

体力のひとつの指標となるのは最大酸素摂取量と呼ばれるもの。これは1分間で体重1kg当たりに取り込める最大限の酸素量を指す。

この数値が高いほど有酸素能力が高いということ。もちろん、酸素をたくさん取り込めるほど運動時には余力が生まれる。5分走ってゼエゼエする人と1時間走って涼しい顔をしている人の差は有酸素能力の差だ。

最大酸素摂取量は残念ながら加齢とともに低下していく。たとえば不活動の人の場合、80歳くらいになるとちょっと動いただけで最大酸素摂取量レベルに達してしまい自立が困難な状態になる。

こうした体力の低下を食い止める方法はただひとつ、有酸素運動だ。それも単に歩くだけではなく、少々息が切れるくらいの運動量を確保したい。ジョギングを続けることで有酸素能力は維持できる。走ろう。

有酸素能力の向上でより病気のリスクが低下
有酸素能力の向上でより病気のリスクが低下

縦軸は心臓の疾患リスク。横軸は全体を100として効果が小さいもの順に分割したデータ。身体活動量が増加するとリスクは低下するが、有酸素能力が向上した場合の方がその約2倍リスクが下がる。Adapted from Williams MSSE(2001)

取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 取材協力/石井好二郎(同志社大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科教授)

初出『Tarzan』No.851・2023年2月22日発売

Share

関連記事:

Share