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モチベーションUPに!ジョギングで痩せる科学的メカニズムを学ぶ

ジョギングは痩せる、そんなイメージがあるだろう。それは事実。ではなぜ痩せるのか? しっかり納得したうえで始めたいところ。走っている時にカラダの中で起きている痩せるメカニズムはもちろん、他の運動に比べてジョギングが優れている点も解説しよう。

① トータルのエネルギー消費量が増える

そもそもジョギングをするとなぜ痩せるのか? 最もシンプルな理由のひとつは、走れば走るほどトータルのエネルギー消費量が増えるから

同じ10秒間のエネルギー消費量はジョギングよりも100mのスプリントの方がはるかに多い。でも、その運動強度でずっと走り続けることは不可能。その点、ジョギングは小さなパワーを出力させながら長く走り続けることができる

強度が高いいわゆる無酸素運動のエネルギー源は、主に筋肉に貯蔵されているアミノ酸や糖質。でもこのエネルギールートは数分しかもたない。一方、ジョギングのような低強度の有酸素運動のエネルギー源は脂質

こちらのルートは1時間でも2時間でも稼働し続ける。しかも走るほどに体内の脂質が燃やされるので痩せるという仕組み。まさにウサギとカメの競走で、最後は遅くてもひたむきに進むカメさんの勝ち。

無酸素運動と有酸素運動の持続時間

無酸素運動と有酸素運動の持続時間/高強度無酸素運動は筋肉中に貯蔵されているクレアチンリン酸という物質を分解してエネルギーを得る。しかしこの物質は数十秒で枯渇する。中距離走のような無酸素運動では糖質が主に使われ、有酸素運動では酸素を介して脂質が使われる。長持ちするのは後者だ。Fox, E. L. and Mathews, D. K.(1974)より

② 同じ運動量でも歩くより走る方が痩せる

理屈で言うと、どんな運動であろうとも消費エネルギーが同じであれば等しく痩せる。だって体脂肪1gは7キロカロリーで、歩こうが走ろうが同じ分だけエネルギー消費をすればきれいさっぱり燃やされるはずだから。

ところが現実ではその理屈通りにいかないこともある。ランナーとウォーカーを比較した実験では前者の方がBMIという肥満の指標が減り、ウェストも細くなったという結果が報告されている。

ランナーとウォーカーの
ダイエット効果の比較

ランナーとウォーカーのダイエット効果の比較/3万人以上のランナーと1万5000人強のウォーカーを比較した実験。運動強度が低い順に被験者男性のBMI(体重÷身長の2乗)とウェスト周径の減少率を比較。ランナーの方がいずれも低下率が高かった。Willams PT. Med. Sci. Sports Exerc. 2013より

もちろん、何もしないよりウォーキングをすることでダイエット効果は得られる。でも同じ運動量でもランニングの方がその効果が高いというのだ。だったら歩くより走った方がいいじゃん!と誰しもに思わせる研究結果。

これが理屈とはひと味違うリアルワールドの面白いところ。でも、なぜこんなことが起こるのか? 考えられる理由の内容は後述をご覧あれ。

③ 運動強度が増すと運動後のエネルギー消費が期待できる

運動した後、ハーハーゼーゼーしているときカラダは忙しい。消費された酸素や糖質を補充したり、体温や血液循環を通常に戻したりと、とにかく平常の状態に回復させるためにエネルギーを消費している

EPOC(運動後過剰酸素消費)と呼ばれるこのエネルギー消費は運動後24時間程度続くと考えられている。つまり、じっとしていても勝手にエネルギーが使われるわけだ。

EPOC効果は主に糖質を利用する無酸素運動でより見込める。とはいえ有酸素運動も100%脂質だけでエネルギーを補っているわけではなく、糖質も常に一緒に消費されていてスピードが上がるほどその消費率も高くなる。

EPOCは最大運動の50〜60%以上の強度の運動で見られる現象なので、ジョギング以上の運動と考えていい。

必要な酸素量が多いほど
EPOC効果は高い

必要な酸素量が多いほどEPOC効果は高い/EPOCはカラダが回復するために要するエネルギー。運動強度が高いほど効果は大。緑ゾーンがジョギングとすると黄色ゾーンはスプリント。でもどちらもウォーキングでは得られない運動後のエネルギー消費が見込める。

といってもEPOCによるエネルギー消費量は最大でも運動中のエネルギー消費量の十数%。ウォーキングでは得られない嬉しいおまけと考えておくのがよさそうだ。

④ 走ることによって食欲が落ちる

走って家に帰ってきて、すぐにバクバクものを食べられる人はそうそういない。運動してエネルギーを消費したはずなのに、なぜかお腹いっぱい胸いっぱい。学生時代に部活をしていた人ならこうした経験があるはずだ。

この不思議な現象は運動することで消化管からあるホルモンが分泌されることで起こる。運動をすると腸管からPYYGLP-1といったホルモンが分泌されることが分かっている。これらのホルモンは通常、食事の刺激で腸管から分泌されて「お腹いっぱい」という感覚をもたらすが、運動の刺激でもこの両方が分泌されて食欲を低下させるのだ。

さらにGLP-1は食欲抑制だけでなく膵臓に働きかけて血糖値をコントロールするインスリンの分泌も促す。これらのホルモンの働きを利用すれば過食は防げるし、血糖値の急上昇も防げる。

食事をするなら運動の30分後が狙い目だ。

運動刺激による消化管ホルモンの分泌

運動刺激による消化管ホルモンの分泌/安静時に比べると、中強度、高強度運動をしたグループはPYY、GLP-1、両方のホルモンの分泌が見られた。PYYは運動後に分泌が低下していくので、恩恵にあずかりたいなら運動後30分程度のタイミングで食事を摂るとよし。Ueda SY et al.: J Endocrinol. 2009より

⑤ 歩くより走る方が短時間で効率的に痩せる

ジョギングの一番のメリットはウォーキングより効率よく健康効果が得られるということ。すべての死因における死亡減少率で比べてみよう。

死亡リスクを20%減らす効果を得るためには、ジョギングの場合1日12分ウォーキングの場合だと42分必要。走れば30分まるまるショートカットできるのだ。忙しい現代人にとってこれは朗報。

ジョギングは短時間で健康効果が見込める

ジョギングは短時間で健康効果が見込める/ここでいう高強度運動とはジョギング、中強度運動は普通歩行に当たる。同じだけの全死亡リスクの低下に必要な時間は明らかにジョギングの方が短い。リスクを40%低下させるためには何時間歩くことやら?Wen et al. Lancet. 378(9798):1244-1253, 2011.

日本人の死因のトップ3はがん、心疾患、脳血管疾患。がんはともかく、2位、3位は肥満を発端とする高血圧や脂質異常症といった生活習慣病の行き着く先と考えていい。

とくに内臓脂肪が溜まりつつあるお腹ぽっこり男性は、まずウォークから始めて早々にジョギングにシフトしてほしい。30分走をある程度続ければ外見的に確実に痩せるし、この統計によれば死亡リスクを40%減らせる計算になる

⑥ 仕事で走るより余暇でジョギングした方が痩せる

いつも小走りしている配送のお兄さん。1日のエネルギー消費量はさぞ高く、とくに運動しなくても全然太らなそう。そういう人も確かにいるに違いない。ところが、そんなイメージを覆すショッキングな研究報告がある。

日本人の肥満者は、痩せている人や標準体型の人に比べてトータルの身体活動量、とくに仕事における身体活動量が多いという報告だ。下のグラフがそれ。確かに肥満者は仕事でかなりカラダを動かしていて、トータルの活動量は痩せている人より明らかに多い。

余暇ではなく仕事で走ると逆に太る!?

余暇ではなく仕事で走ると逆に太る!?/横軸の「メッツ・時」は活動強度を表すメッツと時間を掛けたもの。普通歩行に当たる3メッツの中強度の活動を1時間行ったら3×1で3メッツ・時。これを1週間単位で表したものが上のグラフの数値。笹川スポーツ財団、2021

一説にこれを「身体活動パラドックス」と呼ぶ。

別の研究では仕事の身体活動量が多い人ほど心臓・血管系の病気のリスクが高まり、逆に余暇での活動量が多い人ほどリスクは下がるというデータがある。考えられる原因としては、自分でコントロールできない仕事での身体活動がストレスになり、過食に走るという可能性。走るのはあくまで余暇!

⑦ 走ると血管が増えて脂肪が燃えやすくなる

多くの人が減らしたいと望んでいるのは体重よりも体脂肪。たとえ100kgあったってショーヘイ・オータニみたいにシュッとしていればなんの問題もない。

さて、ジョギングはトータルのエネルギー消費量が多いから痩せることはすでに述べた通り。さらに細かいメカニズムまで突っ込むと、ジョギングでは体脂肪を燃やすシステムが向上するという事実がある。

有酸素運動で毛細血管は確実に増える

有酸素運動で毛細血管は確実に増える/持久系の有酸素運動では長く動き続けるために大量の酸素や栄養が必要。よって毛細血管が増える。60歳代の男女が10か月の有酸素運動を行った前後の毛細血管の数を比較すると、ご覧の通り、どちらもトレーニング前より数が増えている。Cogganら

ゆっくり長く走る有酸素運動では怠けていた毛細血管が再生したり新たな毛細血管が作られる。さらにはミトコンドリアという脂肪を燃やす代謝ルートが仕込まれた細胞小器官が増える。こちらはジョギングという運動の刺激でPGC-1αという物質が活性化されることによる作用。

毛細血管がどんどんミトコンドリアに酸素を送り込み、酸素を介して脂肪がバンバン燃やされる。で、速やかに体脂肪が減っていくのだ。

⑧ 1日たった7分でも走るだけでも健康効果が得られる

今さら走っても思ったような効果は得られないかも。レースに出るわけでもなし、たくさん走るのはやっぱり億劫。運動経験ゼロなので長く走れる気がしない。この期に及んでまだ二の足を踏んでいる人に、希望が持てる話をひとつ。

週50分未満のランニグで循環器病の死亡リスクが低下

週50分未満のランニグで循環器病の死亡リスクが低下/継続的なランニングによる循環器病の死亡リスクを調査したところ、週50分未満の実践でリスクは55%低下した。さらに週当たりのランニング時間を増やしてもリスクはあまり変わらなかった。Lee DC, et al. J Am Coll Cardiol. 2014より

上のグラフをご覧いただこう。

一番左の「運動なし」の状態が今のあなただ。縦軸は循環器の病気での死亡リスクを表したもの。ランニングを始めた途端、ぐっと右肩下がりになっているのがお分かりだろう。しかも週当たりのランニング時間で50分未満、1日にして7分程度走るだけでこれだけの効果が得られるという研究報告だ。

何もしていない人ほど効果が得られる。まさにこれ、「悪人こそが救われる」という親鸞が説いた悪人正機説。まずは1日7分だけ走ってみよう。

⑨ 食事のカロリーに対する意識が高まる

走ったときのおよそのエネルギー消費量の計算はいたってシンプル。体重×走った距離だ。70kgの人が3km走ったら210キロカロリー消費したことになる。

消費エネルギー=体重×走行距離

(例)体重70kgの人が3km走ったら70×3=210kcal

※200kcal前後の食べ物:ドーナツ1個、マフィン1個、板チョコ3/4枚、せんべい3枚、おにぎり1個

あんなに頑張って走ったのにその程度? と思うかもしれない。

そう、運動で消費できるエネルギーは計算上では思ったより多くない。でも人のカラダは複雑にできているので、EPOCやミトコンドリアの増加や余暇のリフレッシュ効果などなどでそれ以上の効果が見込める可能性があることは、これまで述べてきた通り。

とはいえ、エネルギー収支に目を向けることはやっぱりとても重要。走ったご褒美に唐揚げをパクパク、ビールをグビグビ飲んでいては痩せるどころか確実に太る。

210キロカロリー消費が食事に置き換えてどれだけのマイナスになるのか、知っておく必要がある。体重と走行距離からエネルギー消費量を定期的に割り出し、うっかりのひと口の防止に繫げてほしい。

取材・文/石飛カノ 取材協力/石井好二郎(同志社大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科教授)

初出『Tarzan』No.851・2023年2月22日発売

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