加藤俊徳さん
教えてくれた人
かとう・としのり/脳内科医、医学博士。〈加藤プラチナクリニック〉院長、〈脳の学校〉代表。MRI脳画像診断の専門家で、これまで1万人以上の脳を診断・治療。長年の研究に基づき、脳番地トレーニングを提唱。
パーツ別に脳を鍛え、脳力アップを狙う
“脳力”のアップに有効なのが、脳内科医の加藤俊徳先生が提唱している「脳番地」という考え方。
脳は、無数の神経細胞が集積したもの。そのうち、同じような働きを担う神経細胞の集まりが脳番地で、①思考系、②感情系、③伝達系、④理解系、⑤運動系、⑥聴覚系、⑦視覚系、⑧記憶系という8つに分けられる。
8つの脳番地
- 思考系脳番地:思考、意欲、判断力、集中力に関わる
- 感情系脳番地:喜怒哀楽などの感情を表現するのに関与する
- 伝達系脳番地:他者とのコミュニケーションの中核を担う
- 理解系脳番地:インプットされた情報を整理・理解する
- 運動系脳番地:カラダを動かすこと全般を司っている
- 聴覚系脳番地:耳で聞いたことを脳へと集積させる
- 視覚系脳番地:目で見たことを脳へと集積させる
- 記憶系脳番地:情報を保管し、好きなときに取り出して活用する
これらは単独で働くことは少なく、複数の脳番地の連携プレーにより、脳は仕事をしているのだ。この脳番地ごとに鍛えれば、脳力はトータルで高まる。
まず、各脳番地の状態をチェックリストで確かめる。1つでもクリアできない項目があれば、その脳番地の能力がダウンしている恐れがある。それぞれの脳番地の特性に合わせたトレーニング法を日常生活に取り入れよう。
チェックリストが楽勝でオールクリアできるようになるまで、日々トレーニングを続けよう。
DX時代を生き抜くために鍛えたい“視覚系”のトレーニング
脳に入る情報の主役は、目を介して入力される視覚データ。それを処理するのが、視覚系脳番地だ。そのありかは、仰向けで寝る際、枕に接する後頭部あたり。それ以外には前頭葉にも存在している。
視覚系には、大きく3つの番地がある。「見る番地」「動きを捉える番地」「目利きをする番地」だ。“目利き”とは、経験や記憶、好き嫌いなどと照らし合わせ、見たものの良し悪しの判断を下すことをいう。
情報処理の中核を担っている以上、視覚系はDX時代では優先的に鍛えたい脳番地。
初めに取り上げるトレーニングは、少々アナログなやり方。パントマイムや無声映画のように、映像のみで音声なしの作品を鑑賞するのだ。この他、下手でもいいから、自画像をデッサンするのもいい。いずれも、目利きをする脳番地が刺激される。
テレワーク中も自宅にじっとこもらず、気分転換を兼ね、近所へ散歩に出かけてみよう。パソコンの画面など、近いところばかりに焦点を合わせ続けると、目が疲れる。散歩で遠くに焦点を合わせて目の疲れを癒やし、バラエティ豊かな情報を視覚系にインプットして鍛錬してやろう。
まずはチェック!
- 探し物を見つけるのがうまい。
- 人混みでもぶつからずに歩ける。
- 乗り物の窓から景色をよく眺める。
- 映画館や美術館によく行く。
- 空、月、星を見上げるのが好き。
- 本や新聞を読むのは苦にならない。
→1つでもクリアできない項目があれば、以下のトレーニング法を実践!
① 散歩で屋外のあれこれに視線を散らす
テレワークやフードデリバリーがすっかり定着し、おうち時間が増えると、目に飛び込む視覚的な情報は案外マンネリ化している。たまには外に出て、多彩な情景を脳に入れよう。
② パントマイムや無声映画を鑑賞する
スマホからいつでも好きな動画が見られる環境に慣れていると、映像のみで音声を伴わないパントマイムや無声映画は新鮮そのもの。音声がないからこそ、視覚系が強化される。
③ 自分の顔をデッサンする
見たものを描き写す作業は、対象をいろいろな角度から眺め、これまで気に留めなかった特徴を捉える必要があり、視覚系が活性化。見慣れた自分の顔を改めて客観視してみよう。