スタンフォード生がやっている、脳の疲れを癒やす歩き方
ストレスで疲れていると、視野は無意識に狭くなる。意識的に視野を広げて歩くことで、リラックスを促し脳疲労を軽減する「パノラマビジョンウォーキング」とは?
取材・文/井上健二 撮影/石原敦志 スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/村田真弓 イラストレーション/内山弘隆 取材協力/山田知生(スタンフォード大学スポーツ医局アソシエイトディレクター、同大アスレチックトレーナー)
初出『Tarzan』No.831・2022年4月7日発売
キョロキョロしながら歩くと脳疲労が軽減
スタンフォード大学でスポーツ医局アソシエイトディレクターならびにアスレチックトレーナーを務める山田知生さんは、ストレスなどでメンタルが不安定になり、疲れを感じるスタンフォード生に薦めることがある。
1つは「IPA呼吸法」(詳しくは:バテ知らずの疲労回復メソッド、スタンフォード式呼吸法)。そして2つ目が河川敷やビーチといった視界が開けた場所を、キョロキョロしながら歩くことだ。
不安や緊張下では視野が狭くなり、トンネルの出口だけが見えるような状況=トンネルビジョンに陥る。
「アスリートがトンネルビジョンを上手に操り、ここぞというときに一点に集中できたら、野球の打者なら“ボールが止まって見える”ようになります。それは短期的には良い集中ですが、ストレスが長引いてトンネルビジョンから抜け出せないと、脳疲労は蓄積する一方なのです」(山田さん)
広い視野で視線をあちこちに向ける“パノラマビジョン”で歩くと、緊張が切れて脳疲労から抜け出せる。
歩くのにベストな時間帯は朝
疲れを抜きたいなら、朝歩くのがベスト。朝日を浴びてウォーキングのようなリズミカルな運動を行うと、脳内でセロトニンが盛んに作られる。セロトニンの作用不足は、意欲の落ち込みや慢性的な疲労感の引き金。セロトニンは、疲労回復を促す眠りの精、メラトニンの原料でもある。
「スタンフォードの水泳選手に、気分の落ち込みに悩み、セロトニン不足を補う薬を飲んでいる学生がいました。彼女はいつもプールの真横に自転車を横付けして練習に通い、週3回は午後練でした。そこで全部朝練に変え、プールから離れた駐輪場に自転車を停め、プールまで歩いて朝日を浴びるように指導したところ、気分が前向きになって薬の服用量も減り、疲労感も軽減できたのです」(山田さん)
出勤日は早起きし、ひと駅先までキョロキョロしながら歩くのも吉だ。