水で太ることもある? 体脂肪にまつわるウソ・ホント
「実は○○を食べると痩せる」「太りたくないなら××すべし」などなど、巷にあふれる、ダイエットや体脂肪に関するまことしやかな噂や都市伝説。根拠のないまま信じ実行してしまう前に、その真否を確かめてみよう。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/沼田光太郎 監修/EICO(ダイエットコーチ)
初出『Tarzan』No.835・2022年6月9日発売
目次
水で太ることもある
ウソ!
水を飲んでも太る体質、と自嘲まじりに言う人は少なくないがそんなわけはない。水はノンカロリーで糖質、脂質、タンパク質などの栄養素を含まない。
「1日に必要な水分は体重1kgにつき約30mL。60kgなら1.8Lの水は必要不可欠。ただし、水分なら何でもいいわけではありません」と、ダイエットコーチのEICOさん。
「清涼飲料水や缶コーヒーに含まれる糖分は容量の約10%。大量に飲み続けることによって急性の高血糖状態になり、インスリンが大量に分泌され太る可能性はあります」
一見、カラダによさげな野菜ジュースや乳酸菌飲料、エナジードリンクにも想像以上の糖質が含まれている。飲むとしても1日にせいぜい500mL以内にするのが妥当。水で太ることはない。ドリンクに含まれる糖質が体脂肪蓄積の原因だ。
体脂肪が少なすぎると風邪をひく
ホント!
体脂肪率ひとケタを標榜する筋肉自慢のなかには、なぜか年に2度も3度も風邪をひく人がいる。鍛えているというのに一体なぜ?
「体脂肪が少なすぎるとカラダの熱が失われ、風邪をひきやすくなるからです」
もうご存じの通り、体脂肪の役割のひとつはカラダの保温。断熱材の脂肪がなければ体内の熱はどんどん逃げていく。一説には体温が1度下がると免疫力が約3割低下するという話もある。
「体脂肪が少なすぎる状態を長年続けていることで免疫力が低下し、細菌やウイルスと闘う力が弱くなってしまうと考えられます」
健康的な人の平熱の最低ラインは36.5度。もしそれ以下という場合、細菌やウイルスからカラダを守る防衛システムがうまく働いていない可能性がある。とくにオーバートレーニングの人はそのリスクが高いので要注意。
糖質制限はリバウンドしない
ウソ!
EICOさんの経験上、炭水化物をオールカットする糖質制限ダイエットを行った人の7〜8割はリバウンドに陥るという。
「原因は減量後の食事の仕方です。ダイエットで痩せた後、急に糖質の量を元に戻すとカラダはここぞとばかりに糖質を吸収します」
糖質制限のストレスで食欲が制御できずドカ食いに走り、その結果、血糖値が急激に上昇し、脂肪に変換されてしまうそう。
「ダイエット後は少しずつ、段階を踏んで計画的に糖質量を戻していきましょう。たとえば、主食は玄米や全粒粉パスタなど低GI値のものを選ぶ。ごはんはおかゆなど水分量が多いものにする。活動する朝や昼に炭水化物を食べて夜だけカットするといった方法がおすすめです」
それよりなにより、食べることが大好き♡という人は最初から炭水化物をオールカットしないことが、リバウンド防止のコツ。
ダイエット中でもナッツ類ならOK
ウソ!
ナッツには糖質や脂質の代謝を促すビタミンB群や抗酸化作用のあるビタミンEが豊富。なので、ダイエッターの間食におすすめの食材といえる。じゃあナッツの袋を抱えてボリボリ食べてオッケーかといえば、むろんNG。
「ナッツの食べ過ぎはダイエットの妨げになります。1日の摂取目安量は多くても自分の片手に1杯分」
量の調節がうまくできないという場合は、密閉容器に片手1杯のナッツを入れて1日分の目安とする。あるいは小分け包装された商品を選ぶなどの工夫を。
「また、大量の油で揚げられていたりチョコが混ざっていたり塩分が含まれているナッツはNG食材。高カロリーで太りやすく、塩分の摂り過ぎでむくみやすくなるからです。食べるなら素焼きで無塩のアーモンドがおすすめです」
アーモンドチョコやバタピーには手を出すべからず。
トクホで体脂肪は減らせる
ホント!
「トクホ」とは特定保健用食品の略。含まれている保健機能成分の有効性や安全性が消費者庁の審査をクリアしたものだけが、トクホとして認められる。
「たとえば糖の吸収を穏やかにする、脂肪分解酵素を活性化させるといった表示がされている食品です。こうしたトクホは食事のバランスを整えたうえで活用すればとても効果的なので、上手に役立てましょう」
ただし、商品によって適正摂取量が異なることも。お茶の場合、1日1本以上飲んでもそれ以上の効果は期待できなかったり、1日2本飲むことが推奨されていたりと表示はバラバラ。トリセツをじっくり読んで活用すること。
「さらに、飲むと同時に運動をすることで初めて効果が期待できる商品も少なくありません。飲めば痩せる、というわけではないことも理解しておきましょう」
サポート役として賢く利用を。
虫歯が多い人は太る
ホント!
遺伝的に虫歯になりやすい家系というわけでもないのに、虫歯治療でしょっちゅう歯医者のお世話に。その理由は口の中に食べ物が入っている時間が多いせいかも。
「食べ物が口の中に入ると口腔内が酸性になります。酸性の環境は虫歯菌の天国なので歯をどんどん溶かしていきます。食後に歯磨きをして口の中をリセットすると、唾液が溶けかかった歯を修復してくれますが、時間を決めずに甘い飲み物を飲んだりお菓子を食べたりしていると、虫歯になりやすい口内環境になってしまうのです」
虫歯が多い=間食が多い=太るという三段論法。とくに、リモート作業中に無意識に甘い飲み物やお菓子を口にしている人は要注意。
「大きなマグカップに水やお茶を入れて、それを飲み切ったらお菓子を口にしていいというルールを作る。そうした条件づけをしてみるのもおすすめです」
ハイボールは脂肪がつきにくい
ホント!
ウィスキーは蒸留酒なので糖質はゼロ。しかもアルコール度数が40度前後と高いので、一度に大量に飲めない。さらに炭酸水で割れば満腹感も得られる。つまり、ダイエット中に飲むアルコールとしてハイボールは最適。焼酎の炭酸割りも同じ理屈でダイエット向きだ。
「注意したいのはおつまみです。お酒を分解するときには大量の酵素が必要。揚げたり焼いたりと加熱調理をした食べ物を分解・吸収するにも大量の酵素が使われます。食べ物の消化に酵素を奪われてしまうとアルコール分解が滞ります。
なのでおつまみには発酵食品や生の食材がおすすめ。キュウリに味噌をつけたモロキュウなどは理想的です」
さらに、お酒と同量の水を飲むと酒量がおのずと抑制でき、飲み過ぎによる食欲の暴走も防げる。ハイボールを1口飲んだら水を1口。いつもの半量で「もう飲めね〜」状態になるはず。
太りやすい人は感覚が鈍い
ウソ!
マ○コ・デラッ○スは空腹という感覚を覚えたことがないらしい。空腹になるチャンスがあまりに少なく、「ハラ減った〜」という感覚を見失っている可能性がある。
じゃあ太っている人はすべての感覚が鈍いのかというと、さにあらず。それどころか太りやすい人はむしろ敏感で頭がいい、とEICOさん。
「目にセンサーをつけてその人が何を見ているかを検証する実験で、太っている人は瞬時に食べ物を見つけることが分かりました。食べ物に対する反射神経がものすごく敏感で、疲れているから甘いものを食べたい、期間限定だから今食べなきゃと頭で考えて食べています。
でも痩せている人は空腹なら食べるし、空腹でなければ食べない。反応がとてもシンプルなんです」
食べることに向けられている豊かな想像力をちょっとだけ趣味に向ければ、無意識のカロリー過剰摂取を避けられるかも。
おなかいっぱいと言えば満腹になる
ホント!
空腹かどうかを判断しているのは胃でもなく腸でもなく、脳の視床下部という部分。
「でも太りやすい人は“おやつの時間だから”“もったいないから”“お付き合いだから”“今しか食べられないから”等々の理由でつい食べ物を口にします。その結果摂取カロリーが多くなり体脂肪が蓄積されやすくなってしまいます」
そんなときに有効なのが、今自分は本当に空腹なのか?と問いかけること。さらに、食後に「おなかいっぱい!」と口に出してみること。
「どんなに少ない量でも声に出すことで脳は満腹になったとダマされてくれます。もちろん、1回では効果はありません。1か月くらい続けることで自分はこれくらいで満腹になるんだと脳が納得してくれるはず」
今日から毎日、脳に暗示をかけるべし。逆にNGワードは、「これだけ?」「少ないね」「まだ全然イケる」等々。