どこまで絞ったら割れる? 体脂肪とシックスパックの関係
体脂肪率にBMI、筋肉指数と呼ばれるLBMI…。これらの体組成を表す指標が一体何か、ご存じだろうか。それらを正しく理解すると、効率よく腹割りを進めることができる。体脂肪率の歴史とともに学んでみよう。
取材・文/井上健二 イラストレーション/高橋潤
初出『Tarzan』No.809・2021年4月22日発売
体脂肪率はどう測る?
腹筋作りに限らず、ボディメイクに欠かせないデータが、体脂肪率。体重に対して、体脂肪の重さがどのくらいの割合を占めるかを示したものだ。
体脂肪率は、体重計そっくりの体組成計に乗ったり、ハンドルを握ったりするだけで簡単に測れる。でも、家庭用の体組成計が登場したのは90年代。それまで体脂肪率を測るのは、大仕事だった。プールに沈んで体重と体積を測り、カラダの密度を求めて体脂肪率を推定していた時代もあったのだ!
現在の体組成計は「生体電気インピーダンス分析法(BIA法)」を用いる。
「これは微弱な電流を流した際に発生する電気抵抗から、人体を構成する成分を測定する技術。人体は体水分、タンパク質、ミネラル、体脂肪からなります。電気抵抗から体水分量がわかり、そこから除脂肪量、タンパク質量、体脂肪率などがわかります」(体組成計メーカー、インボディの申基権さん)
人体を構成している成分。
体脂肪率と腹割りの関係とは?
どんなに腹筋を鍛えても、それを分厚い皮下脂肪が覆ったままでは、腹は割れない。体脂肪率をチェックしながら、体脂肪を減らすことも重要。トレーナーの白戸拓也さんは、豊富な経験を踏まえて体脂肪率とお腹の割れ方の関係を下のように4段階でまとめてくれた。見た目の変化を確かめながら、腹割りの進捗状況を数値でも確認してみよう。
「男性ならまず16〜20%を目指すべき。それだとTシャツ姿だとカッコいいお腹ですが、15%未満ではうっすら割れて脱げるカラダに。バキバキにするには体脂肪率1桁が目標です」
ただし、アクションを起こしても、体脂肪率はすぐには変わらない。食事制限や筋トレを始めてから、体脂肪率が落ちだすまで3週間前後かかる。
「カラダが締まるといった見かけの変化は、体脂肪率の減少より先に自覚できます。体脂肪率が変わらなくても外見の変化を糧に努力を続けましょう」
また、インボディではよりシンプルに、体脂肪率とBMIから体型を評価している(下表参照)。腹割りのターゲットは「筋肉型スリム」である。
BMIの測り方。
LBMI(筋肉指数)で腹割り戦略を立てる。
腹筋を割るには体脂肪を減らしつつ、筋肉もつける必要がある。体脂肪率で体脂肪がどれほど減っているかはモニターできるが、どのくらい筋肉がついているかは、なかなかわからないもの。そこで頼りになる数値がLBMI。俗に「筋肉指数」と呼ばれる。
LBMは除脂肪体重のこと。体重と体脂肪率で計算する。70kgで体脂肪率20%なら、70×0.8=56kgだ。BMIは体重をメートル換算した身長の2乗で割って求めるが、LBMIは除脂肪体重を身長の2乗で割って求めたもの。筋肉量と相関する。
仮にLBM56kgで身長170cmなら、56/(1.7×1.7)=約19.3。
「LBMIが男性で20、女性で15を超えるのが目標。LBMIが高いと体脂肪率が多少高くても腹筋でお腹は割れますが、LBMIが低いと腹筋がペラペラなので体脂肪率をより落とさないとお腹は割れません」(白戸さん)
最後に頼るのは指!
体組成計がなくても、体脂肪率は類推できる。指で贅肉をつまめばいい。
体脂肪のなかでも、贅肉=皮下脂肪は皮膚のすぐ下にあるため、つまめば厚みがだいたいわかる。実際、体組成計が出てくるまでは、キャリパーと呼ばれるトングのような道具を用い、上腕後ろ側と肩甲骨下部の皮下脂肪厚を測定して、それを計算式に入れて体脂肪率を簡易的に弾き出す方法もあったのだ。これを「キャリパー法」という。
キャリパーがなくても、指でつまめば体脂肪率はある程度想像できる。
「男性なら上腕後ろ側や太腿表側の皮下脂肪厚が5mm未満なら、体脂肪率は1桁近い。お腹の皮下脂肪厚が手の甲と同じくらいになれば、1桁でバキバキに割れているはずです」(白戸さん)
指でつまむときに筋肉を一緒につままないために、コツがある。一度力を入れて筋肉を硬く緊張させた際、その上で滑るように動くのが皮下脂肪。そこだけつまんで厚みを測ろう。