体脂肪は、食事で摂って使い切れなかったエネルギーである
「ヒトは何のために食べるのか」と問われたら、「生き生きと活動するためだ」というのがその答え。
カラダに吸収された栄養素は分解され、最終的には細胞内に運ばれてTCA回路というシステム内でエネルギー(ATP)に変換される。糖質は比較的シンプルなプロセスでTCA回路に取り込まれるが、脂質は一旦β酸化という手間をかけて脂肪酸に分解され、TCA回路へと向かう。
糖質が少ないと脂肪酸が積極的に消費されるが、糖質が十分なときは脂肪酸のTCA回路への取り込み量が減る。
でも運動不足でエネルギーがさほど必要ないときは、糖質も脂質も肝臓で脂肪に合成されて体内に蓄積されてしまう。ベルトの上のハミ肉がどんどん厚みを増しているのは、カラダが必要としている以上のエネルギーを食事で摂っている証拠。
明らかに多すぎる今の食事の量を減らすか、今の食事量をエネルギーに変えるために活動量を増やすか。太らない術は二つに一つ。
体脂肪は、カラダに必要不可欠なものである
カラダの構成材料の約6割を占めているのは水分。残りの4割のうち2割強を内臓・筋肉・骨が占め、2割弱を体脂肪が占めている。年齢や体格によって構成比は若干異なるが、平均的な比率は下の円グラフの通りだ。
骨がなければ直立姿勢は保てないし筋肉がなければ動けない。内臓がなければそもそも生命活動が成り立たない。生きるためにはこれらの組織や臓器が必須なことは分かる。
じゃあほぼ同程度のボリュームで人体を構成している脂肪の役割とは何か?
体脂肪の役割は主に3つある。ひとつはエネルギーの貯蔵庫。脂肪として蓄えられたエネルギーが多いほど飢餓状態で生き抜ける。あるいは冷たい外気を遮り、体熱の放散を防いで体温を一定に保つサポートをしてくれる断熱材。さらに外部からの圧力や衝撃を和らげるクッション的な役割も果たしている。
つまり体脂肪はカラダにとってのマスト成分。ただしこれ、つくべき場所に適量ついた体脂肪の話。
体脂肪は、つく場所によって3つの種類がある
一口に体脂肪といっても、厳密にはつく場所により名が異なる。まず、全身を覆う皮膚のすぐ下についているのが皮下脂肪。脇腹に手を当てたときプニッとつまめるのがこれ。前項で述べた保温や衝撃吸収の役割を果たしてくれる体脂肪だ。
ふたつ目は内臓まわり、主に腸を支える腸間膜という部位につく内臓脂肪。体幹の筋肉の内側にあるので、こちらは手でつまもうとしてもつまめない。皮下脂肪と同様、エネルギーの貯蔵庫であると同時に内臓の位置を固定するという役割も果たしている。
で、第3の脂肪と呼ばれているのが異所性脂肪。心臓や肝臓、膵臓といった臓器やその周囲、さらには筋肉中に溜まる脂肪のこと。本来、溜まる必要のない場所につく厄介な脂肪だ。
適量の皮下脂肪や内臓脂肪に存在理由があるのに対し、こちらはなんの役割も持っていない。それどころか臓器や組織の働きを低下させる悪玉脂肪だ。脂肪肝という診断を受けたことのある人、ヤバいんです。