肩まわり6つの悩みに回答 ①関節の音がする ②四十肩が治らない…
長時間のデスクワークやスマホ作業で、ストレスが溜まりやすい肩甲骨周辺。あなたの肩甲骨は大丈夫? 痛みのみならず、ボキッと音が鳴ったり、姿勢不良や左右差など気にはしているけど、病院に行くほどではないだろうとスルーしている肩まわりの悩みに答えます。
取材・文/神津文人 イラストレーション/平井さくら 監修/磐田慎一郎
初出『Tarzan』No.833・2022年5月12日発売
磐田慎一郎さん
教えてくれた人
いわた・しんいちろう/〈リソークリニック〉院長。日本整形外科学会認定整形外科専門医。日本再生医療学会認定再生医療認定医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。日本距骨調整協会アンバサダー。
目次
お悩み① 腕を回すと肩がボキボキ鳴って気味が悪い
結論から言えば「痛みが伴っていなければ、音が鳴っても問題はないと思います」と、磐田先生。まずはひと安心だが、ではどうして腕を回すとボキボキ、ゴリゴリといった不穏な音が鳴るのだろうか。
「肩甲骨周辺には、僧帽筋、棘上筋、棘下筋、大円筋、肩甲挙筋、菱形筋といった筋肉があり、それが縦、横、斜めに入り組んでいます。腕を回すとこれらの筋肉や筋が擦れて音が鳴ることがあるんです」
特に運動不足で筋肉が硬くなっているときなどは音が鳴りやすい。気になる人は、日頃から肩甲骨周辺をよく動かすようにしよう。
ちなみに、指の関節や膝、首がパキパキと乾いた音を鳴らすときがあるが、これは別の理屈。関節は、関節包に包まれ、内部には滑液がある。関節を動かすと滑液内の圧力が変化して、泡が発生。そしてこの泡が弾けるときに音が鳴るのだ。
関節のパキパキ音も、痛みが伴わなければ問題はない。
お悩み② 肩甲骨で物を挟むことができます。異常?
世界は広い。肩甲骨にブロックを挟み牽引ロープと繫いでクルマをグイグイと引く超人がいるかと思えば、肩甲骨に空き缶を挟んで潰す猛者もいる。その領域には届かずとも“肩甲骨で物を挟める”という人はいるだろう。こんなマジックのようなことができる場合、肩甲骨に構造的な問題があったりするのだろうか。
「特に問題はなく、ただただ肩甲骨周辺の柔軟性が素晴らしいということですね。どの部位もそうですが、動かさないと可動域が狭くなってしまうので、日常的にストレッチをして硬くなるのを予防しましょう。クルマを引く必要はないですが(笑)」
お悩み③ 自分は猫背がラクなんです。肩甲骨のせい?
デスクワークやスマホ操作などで前屈みの時間が長くなると、左右の肩甲骨が離れ、背中が丸まり、いわゆる猫背の姿勢になる。猫背が楽なのは、肩甲骨に問題があるのではなく、体幹部分の筋力や柔軟性の低下に原因がある場合が多い。
猫背は腰の負担増加や呼吸が浅くなる原因にもなる。背骨のS字カーブを保つべく、日々姿勢に気をつけ、日常的にカラダを動かしたい。
「高齢者は、脊椎圧迫骨折が原因で猫背になってしまっていることがあります。その場合は猫背を直すのは難しくなってしまうので、ウォーキングなどの運動による刺激とカルシウム摂取で骨密度を高く保って、骨折を予防しましょう」
お悩み④ 肩甲骨が働くと、バストアップになる?
左右の肩甲骨が離れ、背中が丸くなると、どうしても見た目は老けた印象になりがち。反対に肩甲骨がしっかりと寄って背すじが伸び、胸が張れていると若々しく見える。
「肩甲骨がよく動けばバストアップになるとは言えませんが、美姿勢、美乳には繫がるでしょう」
猫背の姿勢だとバストはやや下を向いてしまうが、肩甲骨が寄って胸が張れれば自然とバストは前向き、上向きになる。ボディラインも美しくなるはずだ。
バストが下を向かないように、肩甲骨を寄せるようなエクササイズを日常的に取り入れよう。
お悩み⑤ 前へならえ、で左右の腕の長さが違います
入浴後にふと鏡を見ると、左右の腕の長さの違いに気がついてしまった。今まで気にも留めていなかったのに、気になりだすと止まらない。これは何か問題があるのだろうか。
「完全に左右対称という人はいませんし、1cm程度は差があって当たり前です。利き腕の方がよく動かしているから肩甲骨周辺の柔軟性が高く、前方に伸ばしたときにより伸びるということもあるでしょう」
骨格や柔軟性に左右差があるのは当然のこと。しかし、それに伴って凝りや張りが発生しているならば、大きな痛みに繫がる前に対処したい。
利き腕側を酷使しているなら、ストレッチなどのケアを入念に。使う腕がどちらかに偏っているなら、反対側も動かすようにする。これだけでも十分痛みの予防になる。
お悩み⑥ 四十肩がいつまで経っても治りません
四十肩や五十肩とは、肩を動かすための腱板(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の筋肉の腱)やその周辺の炎症によって、肩を動かす際に痛みが生じる病気の俗称。医学的には、肩関節周囲炎と呼ばれ、日常生活では腕を後ろに回せない、上げられないといった不具合が出る。
炎症を起こしている筋肉は人それぞれで異なり、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋のいずれか、もしくは複数の筋肉の場合もある。
いつまでも痛みがあるのは、炎症が治っていないから。軽症であれば冷却、症状が重ければ飲み薬や注射を使って炎症を抑える必要がある。
「高齢者の場合は腱板が、ダメージの蓄積で擦り切れてしまっていることもあり、そうなると治療は難しくなります」