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筋膜ケアはなぜ、すべきなの? 筋膜の乱れから生じる6つのトラブル

筋膜がねじれると起こる6つの不調

筋膜が正しい状態でなくなると、さまざまな不具合が生じる。使いすぎも使わなすぎも御法度。筋膜の乱れから生じるあらゆる不調のメカニズムを知れば、いますぐ筋膜ケアを始めたくなるはず。

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トラブル① 肩こり・腰痛

肩こり イラスト 沼田光太郎

日本人の有訴率(不調を訴える割合)のトップ2は、肩こり腰痛。病名のつかない慢性的な肩こり&腰痛の始まりの多くは、筋膜にストレスがかかる不自然な姿勢を続けることだ。

筋膜がストレスを受けると、厚くなったり、粘性が上がり動きが悪くなる「緻密化」が起こったりして、滑走性(滑りやすさ)が下がる。

「慢性的な腰痛がある人は、腰痛がない人と比べて腰の胸腰筋膜が約25%厚くなり、筋膜の滑走性が低下するとされます」(東京家政大学健康科学部の齋藤昭彦先生)

筋膜が滑りづらくなると炎症が生じる。筋膜には痛みを感じる自由神経終末が分布しており、炎症によって痛みが誘発される。筋膜が厚くなり滑走性が落ちると、当然筋肉も動きにくくなる。

結果、筋肉が硬くなり血行が滞り、筋肉から「助けて!」というSOSとして痛みが脳へ伝わる。この筋膜と筋肉双方からの刺激で、肩こりも腰痛も長引くのである。

トラブル② 不良姿勢

腰痛 イラスト 沼田光太郎

最先端のスピードスケートのウェアは、低い前傾姿勢を保って空気抵抗を減らすため、直立すると突っ張る設計がされているという。

猫背や腰の丸まりなどの不良姿勢がなかなか直せない一因は、ボディスーツでもある筋膜が、スケートウェアのように不良姿勢を固定化している点にある。正しい姿勢を心掛けたとしても、筋膜が突っ張ってそれを許さないのだ。

これは筋膜の特性の一つである“クリープ”によるもの。筋膜に同じ負荷が加わり続けると、筋膜が伸びて変形する現象である。

猫背や腰の丸まりなどをリセットするには、ストレッチや筋トレなどで筋肉にアクセスするのが王道。それも大事だが、筋膜の変形をそのままにしていたら、不良姿勢はいつまで経っても克服できない。

ストレッチや筋トレだけではなく、筋膜リリースなどでクリープした筋膜をニュートラルに戻す努力もお忘れなく。

トラブル③ 冷え・むくみ

冷え症 イラスト 沼田光太郎

血管は人体でもっとも重要なインフラ。そのネットワークは筋膜に沿って広がり、血管自体も筋膜でラッピングされている。

不良姿勢や運動不足などで、血管と接している筋膜がねじれたり、変形を起こしたりすると、血管が部分的に圧迫される。それにより、血液の流れは一気にスローダウンする。血液は熱を伝えているから、血流の悪化は体温の低下に直結。また、心臓へ戻る静脈血の還流が滞ると、むくみも生じやすい。

加えて、坐っている時間が長くなると、下半身の筋肉が衰えると同時に、筋肉を包んでいる筋膜同士がスムーズに動きにくくなる。

心臓より下を流れる静脈血は、下半身の筋肉の伸縮によるポンプ作用に助けられて、重力に逆らって心臓へ戻る。下半身の筋肉が衰えて、筋膜の滑走性も悪くなると、ポンプ作用が働きにくくなり、血液循環は一層悪くなるのだ。

トラブル④ 呼吸不全

呼吸不全 イラスト 沼田光太郎

眠っても疲れが抜けない、朝から頭がボンヤリしている…。そうした自覚があるなら、自らの呼吸をチェックしてみよう。呼吸が浅くなると、新鮮な酸素が足りなくなる。それでは疲れも取れないし、脳細胞の働きだって悪くなる。

呼吸の要である肺は、風船のようなもの。それ自体は伸び縮みできない。肋間筋や横隔膜といった呼吸を助ける筋肉(呼吸筋)により、肺を収めた胸郭が膨らむと空気が入り、胸郭が狭くなると空気は出ていくのだ。

デスクワークなどで前屈みの姿勢を取る時間が長引くと、胸が閉じて胸郭の動きが鈍くなる。すると呼吸筋に関わる筋膜の滑走性がダウン。呼吸筋の可動域が制限されて呼吸が浅くなり、冒頭のような症状に悩まされる。

デスクワーク時は定期的にブレイクして筋膜をリセット。胸を大きく開いて呼吸筋と筋膜を動かして、胸郭をしなやかにキープしよう。

トラブル⑤ 自律神経失調

自律神経失調 イラスト 沼田光太郎

消化吸収や血圧など、生きるために必須の機能を調整するのは、自律神経。交感神経と副交感神経からなる。交感神経は心身を活動モード副交感神経は休息モードへとそれぞれ誘う。

交感神経と副交感神経はバランスよく働くのが理想。だが、つねに緊張下にある現代人は交感神経が優位になりすぎ。休息モードに切り替わりにくいため、疲労もストレスも溜まる。

交感神経の興奮の背景にも筋膜がある。

「不良姿勢などで筋膜に負担がかかりすぎると、筋膜のセンサーから脊髄へ誤った信号が繰り返し入力されます。この誤入力により、交感神経が優位な状況が作り出されるのです」(齋藤昭彦先生)

逆に筋膜へのアプローチで、自律神経の高ぶりにブレーキがかかる可能性も。筋膜に広がる毛細血管の大半は交感神経に支配される。このため筋膜を整えると、交感神経の亢進が抑えられ、自律神経のバランスを取りやすくなるのだ。

トラブル⑥ スポーツ障害

ランナーの多くが抱えるスポーツ障害に、膝の腸脛靱帯炎と足裏の足底腱膜炎がある。これはどちらも筋膜のトラブル。使いすぎで、同じような場所に何度も負担が集中し続けるため、筋膜や周辺の筋肉に炎症が生じて痛みを発する。いわゆるオーバーユース症候群である。

オーバーユース症候群を防ぐには、運動量を減らしたり、運動後に筋膜リリースなどで筋膜をいたわったりすることが求められる。

筋膜はスポーツパフォーマンスにも響く。筋肉の末端は骨に固定されており、決まった動きしかできない。それと比べると筋膜は自由度が高い。運動の主役は筋肉だが、筋肉と表裏一体で動きを細かく制御するのは、筋膜。

ゆえに筋膜には、カラダの現状をモニターする固有感覚受容器が備わる。正しいフォームで力を発揮するには、筋肉だけではなく、筋膜がきちんと機能できるように整えることも肝心だ。

取材・文/井上健二 イラストレーション/沼田光太郎 取材協力/齋藤昭彦(東京家政大学健康科学部リハビリテーション学科教授)

初出『Tarzan』No.830・2022年3月24日発売

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