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ダイエットするなら食物繊維が欠かせない理由

きんぴらごぼう

食事を減らせば痩せる!は大正解だけれど、それだとツラいのも事実。贅肉の浮き輪(=お腹まわりの脂肪)を取るには、普段の食事に栄養・機能をプラスする「足す食事」を取り入れたい。

浮き輪ゾーンの贅肉とは?

浮き輪ゾーンの図説

浮き輪ゾーンとは、ヘソと左右の腰骨との間を中心に、腰まわりを贅肉が帯状にグルリと一周する部分(写真上の色で示した部分)。内部には内臓脂肪が溜まり、外側を皮下脂肪が腰まわりを一周するように囲み、溜まった体脂肪が、浮き輪をハメているように見えることから名付けた。

ダイエットというと、これまではカロリーや食事量を減らす「引く食事」が主流だった。でも、カロリーや食事量を減らす食生活は窮屈だし、辛くて長続きしない。

そこで脱・浮き輪のためにぜひ取り入れたいのは、贅肉を落とすために欠かせないものをプラスする「足す食事」(詳しくはこちらの記事:本気で痩せたいなら食事にタンパク質をプラスすべき理由)。

今回は足したい9つの栄養素と機能性成分の中から、食物繊維を解説。

食物繊維、足りてる?

浮き輪ゾーンをいち早く消去したいなら、つべこべ言わずに食物繊維を足し算するべき。理由はおいおい語るとして、初めに現状をチェックしてみよう。

1日に摂るべき食物繊維は、男性で21g以上、女性で18g以上。それに対して男性の充足率は70%、女性の充足率は80%に留まっている。

食物繊維はキャベツやごぼうといった野菜からというイメージが根強い。野菜は1日350g以上の摂取が推奨されるが、摂れる食物繊維は8g前後に留まる。野菜のみならず、豆類、海藻類、きのこ類など幅広い植物性の食材(カニのように動物性食品にも食物繊維を含むものがあるが、現実的には食物繊維=植物性由来と考えてOK)の出番を増やしたい。

ダイエットに欠かせない短鎖脂肪酸を増やす

では、なぜ贅肉の浮き輪を取るために、食物繊維を増やすべきなのか。

一昔前まで、ダイエット関連では、食物繊維を増やすと便通が良くなり、お腹が凹みやすいといった類いの話が主流だった。だが、肥満とは、余分な体脂肪が溜まりすぎた状態。仮に、宿便が出て体重が軽くなっても、肥満が解消できたとは言えない。

ならば、便通改善以外のところで、食物繊維を増やすメリットはどこにあるのか。答えは、「短鎖脂肪酸」が増える点にある。消化吸収されずに大腸まで届く食物繊維は、腸管に棲む腸内細菌の貴重な栄養源。40兆個を数える腸内細菌は、食物繊維を元に発酵を行う。その産生物の中でスポットを当てたいのが短鎖脂肪酸なのだ。

腸内で作られる短鎖脂肪酸のおよそ90%を占めるのは、酪酸、酢酸、プロピオン酸の3つ。このうちダイエットと深く関わっているのは、酪酸酢酸である。

まずは酪酸。体内に入った酪酸は、交感神経節という場所にあるGPR41という受容体にキャッチされる。交感神経節とは、自律神経の交感神経が集まったところ。交感神経は、全身の代謝を高めてくれる。酪酸の刺激を受けて、交感神経が優位になりやすい体内環境が整うと、代謝がアップして浮き輪が取れやすい。

この他、酪酸は、消化管が作り、脳に働いて食欲を抑える消化管ホルモンのうち、GLP-1というホルモンの合成を促してくれる。GLP-1がきちんと効いてくれたら、キケンな食べすぎが抑えられる。

次は酢酸。腸内細菌の発酵で作られた酢酸は、体内の脂肪組織にあるGRP43という受容体と結合する。すると、脂肪組織で体脂肪の合成を抑えて分解を促してくれる。

さらに酢酸は、筋肉と肝臓に血糖(糖質)を取り込むインスリンというホルモンの効き目を上げ、余分な糖質からの体脂肪合成にもストップをかけてくれる。

食物繊維不足が浮き輪を作る!?

おいしい話はまだ終わらない。酪酸や酢酸に限らず、短鎖脂肪酸全般には、腸管バリアを強化する働きもある。腸管バリアを担う細胞のエネルギー源となり、細胞の新陳代謝を正常化してくれるからだ。

カラダの入り口といえるのは、厳密には口ではなく腸管の壁。口から肛門までカラダを貫く腸管の内腔は、外界とつながる体外環境。腸管の壁こそが、体外と体内を隔てるバリアであり、余計なものが侵入しないようにブロックしている。

短鎖脂肪酸が足りなくてこの腸管バリアが乱れると、太りやすい

腸内では、短鎖脂肪酸のような善玉だけではなく、油断すると悪玉物質も作られる。なかでも、腸管バリアが乱れた結果、腸内で悪玉菌が作るLPS(リポポリサッカライド)という物質の侵入を許すと、体内で慢性的な炎症が起こりやすい。

この慢性的な炎症は、脂肪細胞に悪影響を及ぼし、脂肪細胞から出るアディポネクチンの分泌量がダウン。アディポネクチンには、体脂肪燃焼作用があるため、その分泌が減ると浮き輪が生じやすくなるのだ。

さてさて。この大事な短鎖脂肪酸をお腹で増やしてくれるのが、水に溶ける水溶性食物繊維。海藻類、豆類、根菜、雑穀、芋類などに含まれる。

食物繊維には、水に溶けにくい不溶性食物繊維もある。未精製の穀物、豆類、野菜などに多い不溶性食物繊維は、消化吸収をゆっくり進めたり、余分な老廃物を吸着して便と一緒に排泄したりしてくれる。

食物繊維の1日の摂取目標量
男性 21g以上
女性 18g以上

食物繊維が摂れる食材例

キャベツ
キャベツ

可食部100g当たりの食物繊維:1.8g

麦飯
麦ご飯

可食部100g当たりの食物繊維:1.7g

カボチャ
カボチャ

可食部100g当たりの食物繊維:3.5g

里芋
里芋

可食部100g当たりの食物繊維:2.3g

とろろ
とろろ

可食部100g当たりの食物繊維:1.0g

インゲン豆(茹で)
インゲン豆

可食部100g当たりの食物繊維:13.6g

 

取材・文/井上健二 撮影/大嶋千尋 スタイリスト/西森萌 監修・料理作製/河村玲子

初出『Tarzan』No.830・2022年3月24日発売

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