肩こり・腰痛の改善にはコンディショニングを兼ねた筋トレを
“体幹トレ”と呼ばれるエクササイズは数多あるが、体幹部の筋肉の機能性を最大限引き出し、カラダを真に快適に整えるメソッドを伝授しよう。その名も「シン・体幹トレ」。
「肩こりや腰痛の予防、またはすでに感じている肩こりや腰痛の症状を軽くするにはコンディショニングも兼ねた筋トレが欠かせません」と語るのは、機能解剖学に造詣の深い澤木一貴トレーナーだ。
「今回提案するエクササイズでは、体幹を刺激しながら、肩こり・腰痛の予防や改善の鍵を握る筋肉を狙います。一般的に筋肉はインナーとアウターに二分されますが、シン・体幹トレで強化する筋肉はいわば“ミドルマッスル”。いずれもいい姿勢を保つのに必要な筋肉。最初にインナーユニット活性化トレで体幹に刺激を入れておくと、肩こり・腰痛に特化したパーツトレでミドルマッスルを効率的に鍛えられます」
シン・体幹トレのルールはたった4つ。肩こりと腰痛、それぞれの優先種目は各パートで解説する。
「すでに不調がある人はツラくない動かし方をそのつど探りつつ、正しいフォームで実践してください」
シン・体幹トレ4つのルール
- トレーニングは1日おきに。全16種目行うのが理想。
- インナーユニット活性化トレはパーツトレの前に必ず行う。
- 時間がない場合は、優先種目のみでもOK。
- 肩こり対策トレと腰痛対策トレを日替わりで行ってもOK。
インナーユニット活性化トレ
どれだけ時間がなくても、肩こり・腰痛対策別のパーツトレを行う前に必ず実践してほしいのがインナーユニット活性化トレの2種目。
インナーユニットとは体幹の安定に不可欠なインナーマッスルの総称。胸腔と腹腔の境目にある横隔膜、腹直筋の深層にある腹横筋、背骨の椎骨を繫ぐ多裂筋、骨盤の底を支える骨盤底筋群の4つからなる。
「肩こり・腰痛の一因として日常的な姿勢の乱れが考えられますが、悪姿勢のまま鍛えると肩や腰に負担がかかりかねない。あらかじめインナーユニットにスイッチを入れて姿勢を最適化しておくことで、パーツトレの効果を最大化できます。肩や腰への過負荷を防ぐため、この2種目は自身の骨盤の歪みが前傾・後傾、どちらのタイプか把握してから適切なフォームで行ってください」
骨盤の前傾・後傾はこちらの記事でチェック!:
インナーユニット活性化トレ① デッドバグ
- 左右対角と同側、各5回動かす
仰向けになり両腕を真上に伸ばし、両膝を揃えて直角に曲げる。左右対角の腕と脚を伸ばして床に近づけ、元の位置に戻す。逆側も行った後、右手&右脚と左手&左脚の同側も同様に。お腹を平らにして行えば腹横筋に効く。
インナーユニット活性化トレ② プランク
- 10〜30秒キープ
うつ伏せになって肩の真下に肘をつき、肩甲骨と骨盤を安定させて頭〜踵を一直線にしたままキープ。肘で床をプッシュする意識を持つことで腹横筋を効率よく刺激。また、お尻をギュッと締めれば骨盤底筋群に有効。
肩こり対策トレ
肩こりの原因は肩でなく、胸椎やそれにつながる肋骨に問題があるケースが多いと澤木さんは語る。
「肩こり対策にはインナーユニット活性化トレで刺激を入れた筋群を常に意識し、体幹を安定させるのが重要です。姿勢のコントロールに関わるインナーユニットは関節を安定させるよう骨の動く方向を調整し、動作を適切に調節する役割を担います。今回はインナーユニットを活性化させた状態で肩を正しく動かすのに必要な6つの筋肉を鍛えて肩こり予防に励んでください」
優先的に鍛えたい筋肉は計3つ。
「肩関節の安定性を高める前鋸筋(肩こり対策トレ①)、肩甲骨を下げて肩を正しい位置に保つ僧帽筋下部(肩こり対策トレ④)、姿勢維持に関与する脊柱起立筋(肩こり対策トレ⑤)です。他の3部位も強化して肩こりのリスクを最小限に抑えましょう」
肩こり対策トレ① スキャプラアブダクション
- 計10回
- ターゲット/前鋸筋
前鋸筋が弱いと肩関節が安定せず、肩が上がりやすくなり肩こりが生じるためしっかり強化。四つん這いになり肩甲骨から吊り上げるイメージで背骨を大きく丸めて戻す。床を両手で押して手と肩甲骨で引き合うイメージで行う。
肩こり対策トレ② ワンアームワイドロウ
- 左右各10回
- ターゲット/菱形筋
菱形筋が弱いと猫背が助長され、頭が前方に出やすくなり肩こりの原因に。片手で拳を握り前方に伸ばし、手首を逆側の手でつかんだら手前に引く。10回行ったら逆側も同様に。胴体をひねると他に負荷が分散されるので注意。
肩こり対策トレ③ リバーストランクツイスト
- 5往復
- ターゲット/腹斜筋群
体幹のツイストや側屈に必要な腹斜筋群を鍛えて胸椎や肋骨の稼働性を高める。仰向けになり両手を肩の横に伸ばし、膝を揃えて直角に曲げる。股関節と膝の直角を保ったまま床スレスレまで両脚を倒す。ゆっくり行うとベター。
肩こり対策トレ④ リバースショルダーシュラッグ
- 計10回
- ターゲット/僧帽筋下部
上部・中部・下部に分けられる僧帽筋の下部を鍛えて肩甲骨を適正な位置に保つ。両手を上げて肩をすくめた状態から、肩甲骨を下げるイメージで肩をぐいっと引き下げる。胸をしっかり張って行うことで下部に負荷がかかる。
肩こり対策トレ⑤ バックエクステンションA
- 計10回
- ターゲット/脊柱起立筋
頭から仙骨まで延びる脊柱起立筋は重力に抗い、強い体軸をつくるうえで重要な筋肉。うつ伏せになり爪先を立てる。腰の横あたりで手のひらを床につけ、その手を後方に滑らせながら上体をできる限り高く引き上げる。
肩こり対策トレ⑥ オールフォースラットプルダウン
- 左右各10回
- ターゲット/広背筋
僧帽筋下部とともに肩甲骨を引き下げる広背筋を鍛えて、肩こりの一因である肩の挙上を防ぐ。四つん這いになり片手を前方に伸ばしたら、肩甲骨を大きく動かしながら肘を胴体側に引く。動作中、肩がすくまないように注意。
腰痛対策トレ
上半身と下半身をつなぐ腰まわりには筋肉や神経などが多く集まる。また腰は普段の姿勢や日常動作の影響を最も受けやすい部位だからこそ、腹横筋をはじめとするインナーユニットにより腰椎の連結を強化して正しい位置に安定させたい。
「インナーユニットが活性化して姿勢をコントロールできるようになると、下肢の運動もスムーズに行えるようになり、結果的に腰への負担が軽減されます。また、“老化は足から始まる”といわれますが、重力に抗う筋肉を積極的に鍛えることも腰痛の予防・改善に有効です」
腰痛対策で強化したい8部位の中で、特に注力したい筋肉は計4つ。
「梨状筋(腰痛対策トレ③)、腸腰筋(腰痛対策トレ④)、中臀筋(腰痛対策トレ⑤)、腰方形筋(腰痛対策トレ⑧)はぜひ強化を。腰部に負担をかけずに動作できるカラダを目指しましょう!」
腰痛対策トレ① リバースプランク
- 10〜30秒キープ
- ターゲット/腹横筋
肋骨の安定や骨盤の適正な位置の保持など“ガードル”のような役割を果たす腹横筋を活性化。仰向けになり両手と踵を床につけたら、お尻を上げて頭〜踵を一直線にしてキープ。お尻を締めることで骨盤底筋群にも効く。
腰痛対策トレ② ニーアップドンキーキック
- 左右各5回
- ターゲット/大臀筋
正しい姿勢を保つのに重要な抗重力筋の代表格である大臀筋の強化は腰痛予防に有効。四つん這いになり両膝を浮かせたら、片脚を引き上げて後方に蹴り出す。動作中、軸脚の膝は直角を保ったまま床から常に浮かせておくこと。
腰痛対策トレ③ プローンヒップエクスターナルローテーション
- 6秒保ち、一呼吸入れてから再び6秒キープを計5回
- ターゲット/梨状筋
梨状筋が固まると坐骨神経痛を発症しやすくなるため、ストレッチ効果の高い運動を。うつ伏せになり床に前腕をついたら両膝を外に開き足裏を合わせて押し合う。骨盤前傾の人は背中を丸め、後傾の人は軽く反らせて行うこと。
腰痛対策トレ④ フロアシッティングニーアップ
- 左右各10回
- ターゲット/腸腰筋
骨盤と腰椎に付着する腸腰筋を鍛えると上半身と下半身のつながりがよくなり、骨盤の位置が安定。床に座り手を後方につく。膝を軽く曲げたら、片脚を宙に浮かせて膝を曲げ伸ばし。骨盤前傾の人は背中を多少丸めてもOK。
腰痛対策トレ⑤ オルタネイトヒップアブダクション
- 脚を上げて2秒キープ、左右交互に各10回
- ターゲット/中臀筋
歩行や片脚立ちの時に使われる中臀筋が弱いと骨盤が安定せず、腰に負担がかかるため強化したい。まっすぐ立ち腰に両手を当てたら脚を30度程度真横に開く。頭がなるべく軸脚の真上に位置するように意識して行うと効果的。
腰痛対策トレ⑥ レッグシザーズ
- 左右交互に脚を交差して計10回
- ターゲット/内転筋
内転筋が弱いとO脚傾向が強くなり、腰痛の一因である骨盤後傾になるため強化が必要。仰向けになり上体を軽く起こして肘をつく。両脚を浮かし、体幹を保ったまま脚を大きく開閉。脚を閉じた時、内腿を強く締めること。
腰痛対策トレ⑦ シーテッドグッドモーニング
- 左右各10回
- ターゲット/ハムストリングス
骨盤を立てた状態を保つのに必要なハムストリングスにアプローチ。椅子に座り、後頭部に両手を添える。片脚を前方に伸ばしたら背すじを伸ばしたままおじぎ。上体を前傾させた時、腿裏のストレッチを感じながら行うこと。
腰痛対策トレ⑧ ペルビッククレイドル
- 左右各5回
- ターゲット/腰方形筋
骨盤の左右の傾きに影響を与える腰方形筋を鍛えれば、動作中も腰椎が安定。椅子に座り手を横に伸ばす。両足を床から浮かせたら上体が倒れない範囲で骨盤を片側に転がす。ゆりかごの動きをイメージして骨盤を高く引き上げる。