骨盤はカラダの中心で上半身と下半身をつないでいる。だからこそ、ちょっとした位置や傾きのズレが全身に悪影響を及ぼしてしまうのだ。
今日から全3回の記事で、①前傾・後傾、②回旋、③左右の傾きという3つの視点から骨盤のコンディションを確かめ、改善するためのチェック&エクササイズを紹介する。
第1回のこの記事では、まず「前傾・後傾」からスタート!
三枝剛さん
教えてくれた人
さえぐさ・たかし/都立大Physio リハビリ・コンディショニングセンター代表、理学療法士、米国公認アスレティックトレーナー。プロアスリートから一般の方を対象に、痛みの改善、ケガからの早期の復帰からパフォーマンス向上まで、さまざまな要望に応えている。
骨盤の「前傾・後傾」チェック
こんな自覚はキケン
前傾の症状
- 歩いていて膝がぶつかる
- 靴の内側が変形する
- 外反母趾である
- 扁平足である
後傾の症状
- 片脚で立ち上がるのが大変
- 靴の踵の外側がすり減る
- 猫背である
- 長く歩くと踵から疲れる
ここでチェックするのは前傾か後傾か。上の問診に加え下の動きをやってみよう。壁に背面をつけ、左右ともに膝が楽に上がれば正常。胸が壁から離れる人は前傾しすぎ。壁ピタ姿勢が取れないか、片膝を上げると軸脚のふくらはぎが壁から離れるなら後傾しすぎだ。
壁ピタ&片膝アップでチェック
壁に背中を向けて立ち、踵、ふくらはぎ、お尻、背中、後頭部を壁につける。両腕は体側に下げ、肩は壁につけなくてOK。その姿勢を崩さず、股関節が45度ほど曲がるまで、片膝を引き上げる。左右を変えて同様に行う。
評価方法
- 片脚を上げると胸が壁から離れる人は→前傾修正エクササイズ
- 壁ピタ姿勢が取れない。片脚を上げるとふくらはぎが壁から離れる人は→後傾修正エクササイズ
- 左右とも容易にできる人は→正常(修正エクササイズは不要)
前傾しすぎると、反り腰になり、膝が内側に入る内股(X脚)に陥りやすい。結果、膝がもつれたり、靴の内側が変形しやすくなったりする。
後傾しすぎると、腰が丸まり、膝が外側に広がるガニ股(O脚)になりやすい。ガニ股だと靴の踵の外側がすり減りやすく、後ろ荷重なので片脚で立ち上がるのが苦手になり、長く歩くと踵から疲れるだろう。
各々の修正エクササイズを続け、骨盤が整えば、反り腰や腰の丸まりが軽減。X脚やO脚も改善しやすい。
骨盤修正エクササイズのやり方
修正エクササイズは全種目を毎日行うのが基本。エクササイズを2週間行ったら、再度チェックして前後差が縮小していることを確認。
縮まっていれば、そのまま継続しよう。変化が乏しければ、回数を増やして正しいフォームで続けて再チャレンジする。前後差が完全消滅しなくても心配無用。多少縮小するだけでも全身の動きが良くなり、日常生活が快適に送れる。
「前傾」修正エクササイズ
① 体幹と腸腰筋のストレッチ(左右各10回)
- 腰の下に重ねたバスタオルを置き、床で仰向けになる。
- バンザイをするように両腕を床で伸ばし、手のひらを天井に向ける。
- 両脚は腰幅でまっすぐ伸ばす。
- 片膝を胸にできるだけ引き寄せる。
- 両手を引っ張られるように伸ばす。
- 床に置いた脚も引っ張られるように伸ばし、戻す。
- 左右を変えて同様に行う。
② 腹部&腸腰筋のエクササイズ(左右交互に各10回)
- 床で仰向けになり、両腕を肩幅でまっすぐ天井に伸ばす。
- 膝と股関節を90度曲げる(太腿が床と垂直、ふくらはぎが床と平行)。
- 手首を曲げ、手のひらを天井に向ける。
- 逆さでハイハイをするように、片腕を少し前へ動かすと同時に、
- 同じ側の膝を軽く引き寄せる。
- 左右交互に続ける。
③ 背骨のストレッチ(10往復)
- 坐ったときに膝より股関節が高くなるように、椅子の座面に厚手のクッション(または重ねたバスタオル)を敷き、浅く坐る。
- 両手を太腿に置く。
- 背骨を上から1個ずつ曲げるように前屈する。
- 最後は脱力して両腕を床に伸ばし、背骨を完全に丸める。
- 続いて背骨を下から1個ずつ伸ばすように背すじを伸ばす。
④ 臀部+腹部エクササイズ(左右各10回)
- 両手、両膝を床について四つん這いになり、
- 両肩の真下に両手、左右の股関節の真下に両膝を置く。
- 爪先を立て、両手と両膝で床を軽く押す。
- 骨盤を床と平行にして腰を反らさない。
- 足裏で空気を押すように、片脚をまっすぐ後ろに伸ばし、元に戻す。
- 左右を変えて同様に行う。
「後傾」修正エクササイズ
① 骨盤ストレッチ(左右交互に各10回)
- 床で仰向けになり、両膝を腰幅に開いて曲げて立てる。
- 両腕を体側で伸ばし、手のひらを床に向ける。
- 片膝を行けるところまで思い切り胸に引き寄せる。
- 同時に反対の足裏で床を強く押す。
- 元に戻り、左右を変えて同様に行う。
② 体幹を伸ばして骨盤を立てる(10回)
- 坐ったときに膝より股関節が高くなるように、椅子の座面に厚手のクッション(または重ねたバスタオル)を敷き、浅く坐る。
- 両腕を太腿の間に下ろして両手を組む。
- 肛門を前に向けるように骨盤を後傾させて腰と背中を丸める。
- 肛門を後ろに向けるように骨盤を前傾させて立てる。
- 手のひらを合わせて両腕を天井に伸ばしながら、体幹を床と垂直に伸ばす。
- 元に戻る。背中と腰を反らさないこと。
③ 臀部+内転筋群+腹部のエクササイズ(左右各10回)
- 壁際で横向きに寝て、上の脚を床と平行にまっすぐ伸ばし、足裏を壁につける。
- 下の肘から上腕を床につけて手のひらで頭部を支える。
- 上の手は胸の前につく。下の膝を90度曲げて姿勢を安定させる。
- 真上から見たときに、頭、体幹、骨盤、股関節、(上の脚の)膝と足首を一直線にする。
- 呼吸をしながら、壁を足裏で強く3秒間押し、力を緩める。
- 左右を変えて同様に行う。
④ 臀部+内転筋群+腹部のエクササイズ(左右各10回)
- 壁際で横向きにまっすぐ立ち、壁側の腕を床と平行に伸ばして手のひらを壁につく。
- 反対側の腕を天井に伸ばし、手のひらを壁に向ける。
- 壁側の膝を腰の高さまで引き上げる。
- その姿勢で軸足で床を押し、伸ばした腕を天井へ伸ばし、横に伸ばした手で壁を強く押し、元に戻す。
- 左右を変えて同様に行う。
取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/木下庸子
初出『Tarzan』No.826・2022年1月27日発売
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