3つの動きで鍛える! 難しい「背中の自体重トレ」

鍛えにくい箇所の代表、背中。自体重では特に意識が難しい箇所だが、3つの動きを意識すれば、自体重とチューブだけでかなりの負荷を得られる。

取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/天野誠吾 監修/白戸拓也(フージャースウェルネス&スポーツ)

初出『Tarzan』No.823・2021年11月25日発売

背中の自宅トレ

自体重トレの最難関部位は背中

背中を鍛えるのが難しい最大の理由は、1種目では完結しないから。プッシュアップ太腿スクワットといった定番種目でほぼカバーできるが、背中には役割が異なる大きな筋肉が集まるため、1種目のみで理想に近づくのは難しい。

今回はホリゾンタル、バーティカル、レバーという3タイプの動きで背中を攻めよう。背中はホリゾンタルで厚く、バーティカルで広くなり、レバーで胸が張れるようになり、三位一体でベストなシェイプが完成する。

背中が難しいもう一つの理由は、現代人は猫背で背中が丸まっているから。背中トレの鍵を握る肩甲骨が固まって動きにくく、肩の可動域も狭すぎる。この難問を解決するため、事前のウォームアップで肩甲骨の動きを出し、肩の可動域を広げよう。

ホリゾンタル、バーティカル、レバーは、いずれもウォームアップ後に基本種目を1種類ずつ。モノ足りなくなったらレベルアップ種目、手元にチューブがあれば、チューブを使った種目にもトライしてみよう。

トレーニングの進め方

背中トレーニングの進め方

1セッション3種類×週2〜3回。基本種目の3セット目が余裕でできるようになったら、レベルアップ種目にスイッチ。チューブが手元にあれば、チューブ種目をプラスするとより効果的。

① 厚みを作るホリゾンタル

ホリゾンタルには「水平」という意味がある。まずどういう動きかを説明しよう。初めに前腕を床と平行にして両腕を肩幅で前に伸ばし、拳を軽く握り、手の甲を天井に。背中を丸めて肩を前に出し、左右の肩甲骨を開こう(肩甲骨の外転)。

ホリゾンタル

この姿勢から、前腕を床と平行にしたまま、肘をカラダの後ろに引き、胸を張って肩甲骨を寄せる(肩甲骨の内転)。これがホリゾンタル。

まさに筋トレでおなじみのロウイング(引く動き)の軌道。ホリゾンタルでは、広背筋に加えて背中に厚みを出す僧帽筋と、肩甲骨の間にあり、肩甲骨を寄せて猫背を矯正するのに役立つ菱形筋が鍛えられる。

ホリゾンタルの仕組み

ウォームアップ|Tエクササイズ(10〜15回)

Tエクササイズ

両足を腰幅に開いて立ち、股関節から上体を床と平行に倒す。両腕を肩の左右に広げて、親指を天井に向ける。胸を張って左右の肩甲骨を寄せて腕を引き上げ、元に戻す。腕だけの上下運動にならないように注意。

ベーシック種目|モディファイト・インバーテッド・ロウ(8〜12回×3セット)

モディファイト・インバーテッド・ロウ

頑丈なテーブルの下に頭から潜り込み、仰向けに。肩の真上で両手でテーブルの両端を摑む。両膝を腰幅に開いて曲げて立てる。背中を床から軽く浮かせたら、テーブルを引き寄せるイメージで胸を天板に近づけ、元に戻る。

アドバンス種目|フットエレベイテッド・インバーテッド・ロウ(8〜12回×3セット)

フットエレベイテッド・インバーテッド・ロウ

インバーテッド・ロウと同じように構えたら、両脚を腰幅でまっすぐ伸ばして踵を椅子の上に置く。背中を床から軽く浮かせたら、テーブルを引き寄せるイメージで胸を天板に近づけ、元に戻る。踵で椅子を押さないこと。

チューブ活用|ワンハンド・ロウイング(左右各8〜12回×3セット)

ワンハンド・ロウイング

床に坐り、両膝を腰幅に開いて軽く曲げ、爪先を天井へ向ける。腰が丸まらないように、骨盤を立てる。右足にチューブを巻き、両端をまとめ、左手を伸ばして持つ。左肩を前に出し、左の肩甲骨を外へ開く。右手は膝に置く。胸を前に突き出しながら、肘からチューブまでを一直線にし、左肘をカラダの後ろまで引き、元に戻す。上体を後ろに倒さない。

② 広がりを演出するバーティカル

バーティカルとは「垂直」という意味。一体どんな動きなのか。両腕を肩幅で真上に伸ばし、手のひらを正面に向けてみよう。そして肩を上げて、肩甲骨を引き上げる(肩甲骨の上方回旋)。これがスタート姿勢。

バーティカル

続いて肩を下げ、肩甲骨も引き下げながら、肘を後ろではなく真下に引き、胸を反らせて前に突き出して張る(肩甲骨の下方回旋)。

要するに、懸垂(チンニング)の動き。背中を鍛える定番マシントレのラットプルダウンと同じ軌道だ。背中でV字を描く広背筋が強化されて背中が広がり、逆三体型が強調される。脇の下にある大円筋も鍛えられて、真正面からも背中が広がる。

バーティカルの仕組み

ウォームアップ|プローン・ラットプル(10〜15回)

プローン・ラットプル

両手でタオルを持ち、床でうつ伏せになる。両脚は腰幅に開いてまっすぐ伸ばす。両腕を肩幅で床と平行にまっすぐ伸ばし、タオルをピンと張る。胸を張って上体を反らしながら、タオルを張ったまま胸に引き寄せ、元に戻す。タオルは床につけない。

ベーシック種目|ハンギング(10秒キープ×3セット)

ハンギング

背もたれが高い丈夫な椅子を2脚用意。安定しやすいポジションで背もたれを向かい合わせ、間に腰を下ろす。両手で左右の椅子の背もたれを持ち、両膝を肩幅に広げて曲げて立てる。爪先も引き上げる。踵に重心をかけながら、手で背もたれを真下に押し込み、胸を天井へ突き出すようにカラダを押し上げてお尻を浮かせ、呼吸をしながら姿勢を10秒保ったら、元に戻る。

アドバンス種目|Lプルアップ(8〜12回×3セット)

Lプルアップ

ハンギングと同じセッティングで、両脚を揃えてまっすぐ前に伸ばし、できるだけ低い高さで床から浮かせてキープする。手で背もたれを真下に押し込み、胸を天井へ突き出すようにカラダを押し上げてお尻を浮かせたら、元に戻る。

チューブ活用|ワンハンド・ラットプルダウン(左右各8〜12回×3セット)

ワンハンド・ラットプルダウン

左手にチューブを持ち、斜め上45度の角度で伸ばして壁で固定。壁から半歩離れて腰幅で立つ。チューブの反対の端を右手で持ち、左手と同じ高さで伸ばし、右側の脇と背中をストレッチする。カラダをまっすぐ保ち、右肘を腰に突き刺すようにチューブを引き、元に戻す。

③ 姿勢を正すレバー

多くの読者に馴染みが薄いのが、レバーだろう。腰幅で立ち、両腕を肩幅でまっすぐ真上に伸ばし、手のひらを向かい合わせてみよう(肩関節の屈曲)。

レバー

そこから、半円を描くように両腕を下ろし、肘をカラダの後ろに引いて胸を突き出す(肩関節の伸展)。このような肩関節を中心とした円運動が、レバー。筋トレ種目ではケーブルなどを用いて自分の方に引き寄せるプルオーバーの軌道だ。

レバーでは、バーティカルでも鍛えられた広背筋の上部・大円筋に刺激が入り、肩を引いて胸を張り、背すじを伸ばした正しい姿勢が整い、鍛えた背中がより“映える”のだ。

レバーの仕組み

ウォームアップ|プルオーバー・オンザチェア(10〜15回)

プルオーバー・オンザチェア

椅子の背もたれを両手で握り、1歩分離れて腰幅で立ち、両腕をまっすぐ伸ばす。上体を股関節から前傾して両腕の間に頭を深く入れて、胸をストレッチする。両手で背もたれを押し下げて、胸を張りながら上体を起こす。

ベーシック種目|ロールアウト(8〜12回×3セット)

ロールアウト

両手を肩、両膝を股関節の真下で床について四つん這いになる。両手と両膝の下にタオルを重ねて敷く。爪先を床から浮かせ、両手と両膝の4点で全身を支持する。胸が床につくすれすれまでタオルを前に滑らせたら、そこから胸を床に突き出しながら元の姿勢に戻る。

アドバンス種目|ロールアウト・オンザチェア(8〜12回×3セット)

ロールアウト・オンザチェア

椅子の座面に両手をついて、腰幅に開いた両足で重ねたタオルを踏む。タオルを滑らせながら両足をできるだけ遠くへ伸ばして、両腕を伸ばし、その間に頭を深く入れて胸をストレッチ。両手で座面を強く押し下げ、両足でタオルを手前に引き寄せながら上体を起こす。爪先立ちになり、両手の真上に肘と肩が来るまで上体を起こしたら、元に戻る。

チューブ活用|チューブ・プルオーバー(8〜12回×3セット)

チューブ・プルオーバー

ベッドかソファの脚にチューブを回し、両端を両手に持つ。脚から1歩離れて仰向けになり、両腕を軽く曲げ、両膝を腰幅に開いて曲げて立てる。両腕を伸ばしてチューブをしっかり張る。脇を閉じたまま、両手が骨盤の真横に来るまで半円を描くようにチューブを引き、戻す。