原因“筋”は患部だけではない。
肩こりで真っ先に名前が挙がるのは、首と肩に広がる僧帽筋だろう。多少詳しい人なら、首すじにあるインナーマッスル(外から触れない深層の筋肉)である肩甲挙筋を名指しするかもしれない。
腰痛では、背骨に沿って走る脊柱起立筋が痛みやすい。お尻の大臀筋も痛みが出やすいところだ。
このように凝りや痛みを起こしている筋肉は、緊張して硬くなり、血管が圧迫されて血流が悪くなっている。そのため、酸素もエネルギー源も足りなくなり、「早く何とかしてくれ!」というSOSとして痛みなどの信号を発しているのだ。
凝りや痛みが生じた患部の筋肉をマッサージなどでほぐすと、こわばりが緩み、血行が一時的に改善するため、「ラクになった!」と感じる。でも、それで終わってしまったら、いつまで経っても肩こり・腰痛と無縁な生活は送れないだろう。
凝りや痛みの原因は、患部の筋肉だけにあるのではない。実をいうと、下記にリストアップした筋肉のすべてが、何らかの形で肩こり・腰痛と関わっている。そこへのアクセスを試みない限り、残念ながら肩こり・腰痛からは解放されないのである。
肩こりの場合:
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胸鎖乳突筋:鎖骨と胸骨から、頭蓋骨の両脇へ延びる。首を前に曲げたり、ツイストしたりする。頭蓋骨の乳様突起に停止することからネーミング。
前鋸筋:肋骨から肩甲骨へ広がる脇腹の筋肉。肩甲骨を背骨から離す外転を促しやすく、ここが硬いと背中が丸まって猫背に陥りやすくなる。
大胸筋:胸に扇形に広がり、鍛えると胸板が厚くなる。細マッチョ作りのターゲット筋だが、ここが緊張しすぎると肩が前に出て背中が丸まる。
斜角筋:首を横に倒したり、前に曲げたりするときに働いている。肋骨から頸椎に向かって走る。前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋からなる。
小胸筋:大胸筋の深層にあり、肋骨前面から肩甲骨へと走っている。ここが硬いと肩甲骨が背骨から離れる外転が起こり、背中が丸まりやすい。
板状筋:首すじを走り、頭を後ろに倒す。頸椎と胸椎から頭蓋骨へ走る頭板状筋、胸椎から頸椎へ走る頸板状筋がある。首の回旋と側屈も行う。
肩甲挙筋:その名の通り、肩甲骨を引き上げる挙上を担っている。頸椎から、肩甲骨の内側へ延びる。僧帽筋の深層にあるインナーマッスル。
菱形筋:頸椎と胸椎から肩甲骨の内側の縁へ延びるインナーマッスル。肩甲骨を寄せる内転、上げる挙上、下へ回す下方回旋をコントロール。
棘下筋:肩甲骨の内側から、上腕骨へ走り、上腕骨を外向きに捻る外旋を担う。ローテーターカフの筋肉では、唯一外からアプローチできる。
広背筋:背中の下半分を占め、骨盤、腰椎、胸椎、肋骨から腕の上腕骨へ走る。肩関節の内転と内旋を行う。懸垂でもしない限り、衰えやすい。
僧帽筋:首すじ、両肩、背中を菱形に覆う。上部と中部は肩甲骨を引き上げる挙上、下部は肩甲骨を下げる下制と寄せる内転を担っている。
腰痛の場合:
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外・内腹斜筋:腹筋群のうちでも脇腹を走る。外側が外腹斜筋、内側が内腹斜筋であり、体幹を捻り、側屈させる。骨盤と胸腰筋膜とリンクする。
腹直筋:腹筋群でいちばん目立つ存在。鍛えると6パックが手に入る。骨盤の底の恥骨と肋骨を結んで腰椎を曲げるほか、骨盤の傾きに関わる。
腸腰筋:骨盤から大腿骨内側へ延びる腸骨筋、胸椎と腰椎から大腿骨内側へ走る大腰筋からなる。股関節を曲げて、骨盤を前傾させる。
大腿筋膜張筋:体側で骨盤の外側から、大腿骨の外側を経由して、腸脛靱帯を経て膝関節まで延びている。股関節の外転、屈曲&内旋に関与する。
内転筋群:内腿で脚を内側へ内転させる機能を持つ筋肉の総称。長内転筋、大内転筋、小内転筋、薄筋、恥骨筋などがある。骨盤の動きに関わる。
脊柱起立筋:背骨(脊柱)に沿って走り、背骨を作る椎骨同士を連結し、背骨を立てる。腸肋筋、最長筋、棘筋という3つの筋肉グループの総称。
腰方形筋:背中側にあり、大臀筋の働きをサポートするインナーマッスル。骨盤と腰椎の安定性に関わる。骨盤上部から、腰椎と肋骨へ延びる。
中臀筋:お尻の横にある筋肉。股関節を開く外転とそれに伴う外旋、外転を伴わない内旋を行う。骨盤の上部から大腿骨の外側へ延びている。
梨状筋:骨盤の仙骨から、太腿の大腿骨に走る洋ナシ形の筋肉。股関節を外向きに捻る外旋を行う。硬くなると神経を圧迫して、坐骨神経痛に。
大臀筋:重力に対して姿勢を保ち、直立二足歩行をサポートするお尻の筋肉。骨盤の中央から、大腿骨の外側へ走る。骨盤の傾きに関わる。
ハムストリングス:太腿の後ろ側にあり、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋という3つの筋肉の総称。股関節を伸ばし、膝関節を曲げる。骨盤の傾きを左右。
筋肉は一つひとつ独立しているように見えて、実際は筋肉を包む筋膜を介して連絡している。ゆえに患部から離れた場所へのアタックが、想像以上の効果を発揮する場合もある。これらの筋肉を手がかりとして肩こり・腰痛を新たな視点で捉え直し、今度こそ根本的な解決を目指そう。
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肩こり:
腰痛: