何をしたらいいかわからない初心者へ。自宅で始める自体重トレ黄金種目4選
いざ、カラダを鍛えようと思っても、無数にあるトレーニング種目。何から始めたらいいかわからないうえ、いきなり難易度の高いものや手間がかかるものは絶対に続かない。そこで、そんな迷えるトレーニー初心者に、全身がバランスよく鍛えられる自体重トレ4種目を伝授。シンプルかつ手軽。始めの1か月はここからスタートだ。
取材・文/井上健二 撮影/河津達成 スタイリスト/吉田周平 ヘア&メイク/福島利紗 編集/飯野僚子 トレーニング監修/白戸拓也(MS FITNESS)
初出『Tarzan』No.872・2024年1月25日発売
自体重トレ初心者はこの黄金4種目を
その気になれば、カラダは、自宅で行う自体重トレでも好きなように変えられる。証拠を見せよう。
初心者はあれこれ欲張っても続かない。まずは全身がバランスよく鍛えられる4種目に的を絞る。それがステーショナリーランジ、ロールアウト、プッシュアップ、クランチの基本種目。日々の「ToDoリスト」に加えてほしい。
筋肥大を加速させるなら、8〜12回×3セットという鉄則を守る。一度に8回できないときは、辛くなったらスタート姿勢でしばし休む“レストポーズ法”を試してみよう。しばらくすると筋力が蘇り、8回以上できるようになる。12回以上こなせるようになったら、負荷を少し上げた“アドバンスト種目”に挑んでみたい。
今回はこの黄金の4種目を週2回ペースで1か月続けるプログラムの提案。4種目は一度にやってもいいし、2種目ずつ週2回やってもOK。1か月続ければ、カラダは引き締まり、トレーニーとしての基礎ができるはずだ。
まずは下半身から
下半身には全身の筋肉の3分の2が集まる。それでいて加齢で衰えやすいから、優先して鍛えたい。
下半身の自体重トレではスクワットが定番。でも、両脚を揃えて行う両側性(バイラテラル)の運動なので、自体重だと負荷が低く、多くの人は12回以上できる。
代わりにチョイスしたのは、両脚を前後に開いて行うステーショナリーランジ。片脚ずつやる片側性(ユニラテラル)の運動であり、しかもバランスを取ることが求められるため、スクワットよりも負荷が高い。アドバンスト種目は、後ろ足を台に乗せて稼働域を広げるブルガリアンスクワットだ。
誰でも筋力には左右差があり、不得手な方がある。だが、左右差を広げないため、得意な方も不得意な方と同じ回数だけやろう。
ステーショナリーランジ(左右各8〜12回×3セット)
- 上体を前後にブレさせない。
- 後ろ足の脛を床と平行にする。
足を肩幅でまっすぐ立ち、片足を大股1歩分後ろに引く。両腕を胸の前でクロスし、胸を張り背すじを伸ばし、上体を床と垂直に。
前脚の膝を軽く曲げ、後ろ脚の踵を浮かす。後ろ脚の膝を床に突き刺すようにその場でしゃがみ、前後の膝を90度曲げたら元に戻る。
アドバンスト種目|ブルガリアンスクワット(左右各8〜12回×3セット)
- 足裏の拇趾球、小趾球、踵の3点に全体重を乗せる。
- 前の膝を内側や外側に倒さない。
足を肩幅でまっすぐ立ち、片足を後ろに置いた椅子の座面に乗せる。前足は大股1歩分離れる。両腕を胸の前でクロスし、胸を張り背すじを伸ばし、上体を床と垂直に。後ろ脚の膝を床に突き刺すようにその場でしゃがみ、前の膝を90度曲げたら元に戻る。
背中は2番目に大切
立派な筋肉をしていても、姿勢が悪かったらパッとしない。たとえ筋肉がさほど大きくなくても、姿勢を正せば見栄えは良くなる。
そこで鍛えたいのが背中。デスクワークが続くと、背中が丸まって骨盤も傾き、姿勢が崩れるからだ。放っておくと、背中の僧帽筋上部、胸の大胸筋が固まり、それと反対の役割がある僧帽筋中部・下部、広背筋、頸部屈筋群が弱体化。アッパー・クロスド・シンドローム(UCS)に陥る。いわゆる猫背で首も肩も凝りやすい。
姿勢を改善し、UCSをリセットして凝りを解消するには、背中から強化すべき。タオルを用いるロールアウトなら、懸垂用のチンニングバーがなくても背中はトレーニングできる。床がカーペットなら、クリアファイルを使おう。
ロールアウト(8〜12回×3セット)
- 開始姿勢は四つん這いではなく、上体を斜め45度に倒す。
- 脇を締め、背中を丸めない(丸めるとお腹に効いてしまう)。
両膝を畳んだマットなどにつき、両手を肩の真下についてうつ伏せになる。両手の下にタオルを1枚敷く。
タオルを前へ少しスライドさせ、肩、胸、お尻を斜め45度の角度で一直線に倒す。できるだけ遠くへタオルをスライドさせ、限界点でひと呼吸置いて元に戻る。
アドバンスト種目|ロールアウトWITHクッション(8〜12回×3セット)
- クッションの厚み分だけ稼働域を広げる。
- 脇を締めて背中を丸めない。
稼働域を広げるため、厚手のクッション2枚を両膝に敷いて同じようにロールアウトを行う。
カラダの印象が決まる胸
上半身の裏側(背中)の次は、表側も鍛えておく。胸、肩、上腕を一度に強化できるプッシュアップ(腕立て伏せ)に取り組もう。
プッシュアップは世界最古の自体重トレの一つ。古代ギリシャの兵士の訓練ルーティンだったのだ(古代インドのヨガのポーズを発祥とする説もある)。古来伝えられてきた人類の叡智は、AI時代になってもまったく色褪せない。
上半身の表側の筋トレというとベンチプレスが有名だが、プッシュアップの方が優れている点もある。ベンチで仰向けに寝てやるベンプレでは、姿勢を保持する必要がない。でも、プッシュアップは軸を保ちながら行うため、体幹の鍛錬にもなる。アドバンスト種目は、左右非対称で負荷を上げるアンイーブン・プッシュアップだ。
プッシュアップ(8〜12回×3セット)
- 頭から踵まで一直線に保ち、腰を落とさない。
- 胸は床から拳1個分のところまで下ろす。
両手を肩幅より広めに開いて床につき、両脚を揃えてまっすぐ伸ばしてうつ伏せになる。両手は両肩のライン下に来るようにする。
両手の指を開いて床をしっかり摑み、肘を軽く曲げる。肘を曲げて胸を床へ近づけたら、両手で床を強く押し、肘が伸び切る寸前まで戻る。
アドバンスト種目|アンイーブン・プッシュアップ(左右各8〜12回×3セット)
- 柔らかいクッションより硬い本や雑誌の方がやりやすい。
- 両肩をつねに床と平行にキープしながら行う。
本や雑誌を数冊重ねて20cm程度のベースを作る。片手をそのベースに置き、通常のプッシュアップのスタート姿勢に。体幹を床と平行に保ち、肘を曲げて胸を床へ近づけ、両手で床を強く押し、肘が伸び切る寸前まで戻る。
腹筋は最後のシメに
体幹では、腹筋を鍛えるのが先決。坐っている時間が長いと、腹筋はサボりっぱなしで弱くなる。
いわゆるフッキン運動では、両膝を立てて上体を起こすシットアップがポピュラーだが、それだと股関節の腸腰筋という筋肉が働くため、腹筋に意外と効きづらい。両脚を揃えて上げ、腸腰筋が無駄に働かないようにロックしてから行うクランチにトライしよう。
アドバンスト種目はレッグレイズ。クランチは下半身を固定して上体を起こすため、腹筋上部に効きやすい。対照的にレッグレイズは、上体を固定して下半身を動かすため、腹筋下部に効きやすい。余力があれば、クランチとレッグレイズを両方やっておくと、腹筋全域が隈なく絞れてくる。
クランチ(8〜12回×3セット)
- 膝と股関節を90度でキープする。
- 上体を上げる際、肘を閉じたり、顎を引いたりしない。
床で仰向けになり、両手を頭の後ろに添えて肘を左右に開く。両膝を揃えて90度曲げ、ふくらはぎを床と平行に上げる。
息を吐きながら、胸を骨盤に近づけるように上体を起こし、息を吸いながらできるだけゆっくり元に戻る。頭を床につけて休憩せずに反復する。
[アドバンス種目]レッグレイズ(8〜12回×3セット)
- 骨盤(腰)を天井へ向けるようにお尻を上げる。
- 脚を伸ばすほど強度が上がる(ただし腰が反らない範囲で)。
床で仰向けになり、両膝を揃えて曲げ、両脚を床から浮かせる。両腕は体側でハの字に開いて手のひらを床につけ、上半身を安定させる。息を吐きながら、お尻を床から引き上げ、息を吸いながらできるだけゆっくり元に戻る。