トレーニングの巨匠・岡田隆教授に聞いた、トレーニーに必要な8つの心得
トレーニングについて“もう10周は回った”人じゃないと気づけないこともある。だからその道の先輩である岡田隆先生に、トレーニーに必要な「8つの心得」を聞いてみた。
取材・文/井上健二 イラストレーション/三上数馬
初出『Tarzan』No.872・2024年1月25日発売
岡田隆さん
教えてくれた人
おかだ・たかし/日本体育大学体育学部教授。東京大学大学院総合文化研究科単位取得満期退学。理学療法士、博士(体育科学)。骨格筋評論家「バズーカ岡田」としても、各種メディアでトレーニングの重要性を説いている。
目次
効果、継続、メンタル。3つの視点を忘れない
最先端のトレーニング理論の研究者であり、現役ボディビルダーでもある。そんな稀有な存在が、日本体育大学の岡田隆教授。2023年11月、『WNBFプロボディビルディング世界選手権』で40歳以上のマスターズクラスに出場。見事に優勝した先生からの助言は、ビルダーを目指さないトレーニーにも参考になる。
岡田先生は①効果、②継続、③メンタルという3つの視点でグッドトレーニーの条件を挙げてくれた。
「成果が自覚できない限り、トレーニングは挫折します。ですから、効果的な方法を知ることが重要です。ただし、いかに効くトレーニングでも続かないと絵に描いた餅。一度や二度ではカラダは変わらないので、継続するための知恵を持っておくべきでしょう。そしてフィジカルとメンタルは表裏一体ですから、カラダを鍛えるなら、メンタルの整え方も知っておいてほしいのです」
こうして出てきたのが、全部で8つの奥深い箴言(後述)。どれも座右の銘にしたいものばかりだ。
先生自身がトレーニーになったきっかけは、何だったのだろうか。
「小学2年生でアーノルド・シュワルツェネッガーが主演した『コマンドー』という映画をテレビで観て、“あんなカッコいいカラダになりたい!”と思った。なぜだかわかりませんが、トレーニングすればカラダは変わるという事実を子供ながらに知っていたので、翌日から即腕立て伏せを始めました(笑)」
高校に進み柔道に打ち込むが、幼少期から柔道をやっているライバルには、技術面では到底太刀打ちできない。その弱点をフィジカルの強化で乗り越えようと考えて、本格的に筋トレに取り組むようになる。
そんな岡田先生にとって、理想のトレーニーは一体誰なのか。
「それは恩師の石井直方先生です。日本最高峰の『ミスター日本』で優勝したボディビルダーであり、トレーニングを続けながら東京大学で筋トレの科学的な研究を究めた鉄人です。僕も、石井先生のように、研究者としてもトレーニーとしても、トレーニングの素晴らしさをより多くの人に伝えたいと思っています」
心得①|アンテナを目一杯張りつつ、得た情報を取捨選択できるリテラシーがある
ネットでトレーニングに関する情報はいくらでも得られるが、そこから自分に合う情報を選ぶリテラシーを持つべき。「何事も鵜呑みにせず、誰がどういう目的で発信している情報なのかを検証してから取り入れましょう」。
心得②|自分のカラダを実験台にして、真実を突き止める余裕を持つ
何事にもエビデンス(科学的な証拠)が求められる時代で、他人で確かめた客観的なそれは標準治療であり重要だが、自らのカラダで試しながら効く・効かないを主観的に判断するのも正解。その過程を楽しむ余裕を持とう。
心得③|肉体は速攻で変わらないという“筋肉憲法”を遵守する
ダイエットもトレーニングも成果が出るまで時間がかかるという事実は“憲法”のようなもの。「速攻で効果的という怪しげな方法に走るのは憲法違反。ボディメイクはマラソン。最低2か月は地道に鍛え続ける覚悟で」。
心得④|義務にしないために、小さな努力目標をつねに立てる
トレーニングを習慣化するにはルーティン化が大切。でも、それが単なる義務になると重荷になる。義務にしないため、「今月は背中を強化しよう」とか「大胸筋の輪郭を出そう」といった自分なりの目標を立てて臨む。
心得⑤|盛り盛りのSNSの情報に、踊らされない
SNSに日々アップされ続けているナイスボディは、マウントを取るために奇跡の一枚を加工アプリで盛りに盛ったもの。それを見て凹む必要はない。加工できないリアルな肉体をコツコツと自分なりに作っていけばいい。
心得⑥|隣の芝生はつねに青い。自分には自分の最高がある。他人と比べない
ボディビルで重視されるのはその人の骨格に応じた筋肉バランス。大胸筋だけデカい、腹筋だけ割れているヤツが評価されるわけではない。最終目標は自分史上最高ボディ。年齢も体質も違う他人と比べる必要はない。
心得⑦|肉体を必要以上に見せびらかさない。オラオラしない
「見せびらかすために鍛えたくなる気持ちもわかりますが、筋肉で他人を威圧するような態度はグッドトレーニーの御法度」。筋肉を披露するのはコンテストの場だけで十分。日常生活で肉体美をアピールするのは控えて。
心得⑧|自分なりの“筋トレ道”を追求してみる
柔道選手だった岡田先生が、海外のボディビル大会で「礼に始まり、礼に終わる」を実践すると、周囲からリスペクトされたとか。柔道のような“道”は筋トレにはないが、ジムでの所作や立ち居振る舞いにも礼節を。