筋トレの基礎知識・前編

トレーニングを始めるにあたって、最低限で必要十分なポイントをまとめてみた。ここはあくまで基礎。だけどこれらの知識は知っておくと今後よりコミットしたい時に盤石のベースとなってくれるはずだ。何をすべきか迷ったら、いつでも戻ってきてほしい。前編では、おすすめのトレーニング時間や頻度、ジムの選び方のコツをお伝えしよう。

取材・文/井上健二 イラストレーション/エイドリアン・ホーガン 取材協力/白戸拓也(MS FITNESS)

初出『Tarzan』No.872・2024年1月25日発売

筋トレの基礎知識

運動、食事、休養はセットと知っている

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忘れてほしくないのは、運動だけに励むのではなく、運動、食事、休養という3本柱をセットで考えること。

筋トレをしても、食事からのタンパク質の摂取が足りなかったら、材料不足により、筋肉はデカくなりにくい。あるいは運動後の休養が不十分だと疲労が蓄積するため、カラダは変わりにくい。休むのもトレーニングのうちなのだ。

逆に、食事と休養が、運動に影響することもある。余分なカロリー摂取を抑えたら、贅肉が落ちて身軽になり、トレーニングしやすくなる。また、深い睡眠でリフレッシュできたら、思う存分カラダが動かせるだろう。

トレーニーになり、運動、食事、休養が三位一体で相互に作用してスムーズな好循環を生み出し始めたら、カラダも心も根底から生まれ変われる。

ジムで鍛えるメリットも知る

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初心者の“はじめの一歩”は自宅トレだけではない。ジムトレもビギナーフレンドリーだという事実も知っておこう。

ジムには頼れるマシンが勢揃いしている。筋トレマシンは、シートに腰掛けるだけで、的確なフォームで狙った筋肉に効かせられる。重さの調整もピンを差し替えれば瞬時に完了。トレッドミルなら天候に左右されず、快適かつ安全にランニングやウォーキングが行える。ジムによっては大浴場やサウナといった癒やしの空間が充実しているところもある。

最近は、デパートのように何でもござれのオーソドックスな総合ジム以外にも、24時間365日開いている24時間ジム、格安スマホ並みの月3,000円程度で通えるバジェットジムといった新たな選択肢も増えてきた。自宅や仕事場に近いジムを一度見学してみよう。

自宅で鍛える引き出しを持つ

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ジムで鍛えるのもいいが、それが性に合わないなら、気軽に自宅でトレーニングをスタートさせよう。運動が習慣化できない人の決まり文句は「時間がない」だが、自宅は24時間365日オープンしているプライベートジムのようなもの。いつでもスキマ時間に運動が始められるから、多忙でも取り組みやすい。

トレーニングをサポートするギアがあれば大助かりだが、自らの体重を活用すれば裸一貫でも運動は行える。それが自体重トレ。プッシュアップ、スクワット、ランジ、クランチといったお馴染みの種目だけでも、ほとんどの筋肉が鍛錬できるのだ。

自宅だとなかなか運動する気が起きないタイプは本気のトレーニングウェアに着替えてみよう。頭が一瞬で切り替わり、運動モードに入りやすい。

1トレーニング1時間以内に収める

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運動は長くやればやるほどいいと思っているなら大間違い。トレーニング時間は短ければ短いほどいい。可能なら30分以内、長くても1時間以内に留めるのが理想的。理由は2つある。

まず、集中力の問題。集中力が高いと正確なフォームで筋肉にピンポイントで刺激が入り、カラダはみるみる変わる。集中が続くのはせいぜい45〜50分。それ以上ダラダラやると注意散漫になり、フォームが崩れたり、ダンベルを落としたりして思わぬトラブルを招きかねない。

次はホルモンの話。トレーニングは少なからずカラダにストレスをかける。ストレスが加わると、それに対抗するために副腎からコルチゾールというホルモンが分泌される。コルチゾールが出ると、筋肉は分解されやすいから逆効果。

月8回、週2回ペースで鍛える

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結果を焦ると、毎日のように鍛えたくなるけれど、それだとしんどくて挫折しやすいし、成果だって上がらない。「超回復」の暇がないからだ。

筋肉のパフォーマンス=筋力−疲労。筋肉に強い抵抗をかけると疲労が生じ、筋力は一時的に落ちる。そこで休息を取り、栄養を補うと、疲労が抜けて、筋力が復活してパフォーマンスが以前より上がる。これが「超回復」と呼ばれる現象。超回復には大体48〜72時間かかるから、同じ部位(筋肉)は2〜3日おきに鍛えるべき。そのタイミングで次の筋トレを行うと、トントン拍子で筋肉のパフォーマンスがアップ。筋肉は右肩上がりで大きくなり続けるのだ。

超回復を踏まえると、筋トレは週2回ペースが合理的。平日1回+週末1回なら忙しい人でもやりやすい。

パーソナルトレーナーを慎重に選ぶ

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本来トレーニングは一人ひとりの目的や体質に合わせるべき。そこで役立つのが、運動の専門家であるトレーナーと1対1で行うパーソナルトレーニングだ。

トレーナーが個人経営するパーソナルジムも増えたが、消費者庁によると2022年2月末までの5年間で、パーソナルトレーニングで筋肉や神経を傷めたという相談が105件寄せられたとか。パーソナルトレーナーには国家資格がなく、その気になれば誰でも名乗れる。どうやって良し悪しを見分けたらいいのか。

大手ジムに通っているなら、そこが認定・公認している人に頼むのが安心。パーソナルジムを探すなら、パーソナルトレーナーのマッチングサイトをチェックしよう。口コミが確認できて、自分に合う信頼に足るトレーナーが探しやすい。

なぜ10回で効くのかを知っている

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多くのトレーニーが狙うカラダ作り=筋肥大では、10回×3セットが鉄則。

ただ、どんな重さでも、10回×3セットで効くわけではない。有効なのは、全力(最大挙上重量)の60〜80%という高強度で鍛えたときのみ。

全力の60〜80%だと、一度にできるのは8〜12回。その間を取って10回だ。一度に10回しかできない重さで、限界まで10回やるから効くのだ。20回も30回もサクサクやれる軽めの重さで10回だけやっても、筋肥大は期待できない。

ギリギリの抵抗をかけているから、1セット目は12回こなせても、2セット目は10回、3セット目は8回と減って当たり前。1セット目から12回以上できたら軽すぎるし、3セット目で8回できないようでは重たすぎる。

休憩中にスマホを見ない

筋肉は無数の筋線維からなり、疲労が集中しないようにシフトを組み、休み休み稼働する。1回ごとに働く筋線維は変わるので、1セットで終えず3セット続けて隈なく鍛えることが求められる。

そこで問題になるのが、セット間の休憩(インターバル)をどうするか。

筋肉を大きくする刺激には、負荷のようなメカニカルストレス(機械的刺激)の他にケミカルストレス(化学的刺激)がある。ケミカルストレスは、筋肉を繰り返し動かすうち、溜まる乳酸などの化学物質によるもの。スマホを見たりしてインターバルを長く取りすぎると、化学物質は筋肉から排出されるため、ケミカルストレスが下がり、筋肥大はスローダウンする。60秒以内の短いインターバルでテキパキ鍛えると、化学的刺激を上手に活用できて筋肉はスクスク育つ。

負荷を右肩上がりにする努力を忘れない

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ギリシャで行われていた古代オリンピックのレスリングチャンピオン、ミロは子どもの頃、子牛を担いで筋トレをしていたという伝説が残る。子牛は育って徐々に重たくなるから、休みなく右肩上がりでウェイトをアップし続けた結果、筋骨隆々のチャンプになれたのだ。

これは、体力や筋力の向上に応じて運動の強度や頻度を段階的に上げる「漸進性の法則」の最古の実践例として有名。

チャンプでなくても、鍛えているうちに筋肉はどんどん太く強くなる。初めは5kgのダンベルで10回やるのが精一杯だったのに、やがて12回以上できるようになるのだ。漸進性の法則を無視して5kgのままで続けていたら、筋肉の成長はそこでストップする。負荷をつねに少しずつ引き上げ、一度に10回がギリギリというレベルをキープし続けたい。