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座り時間が長いと陥りやすい「筋筋膜性腰痛」のセルフケア

筋筋膜性腰痛

一般的な慢性腰痛の多くは「椎間関節性・筋筋膜性・椎間板性・仙腸関節性」の4種類に分類される。それぞれ対処法は異なるが、セルフケアなしに改善はない。まずは痛みのリリースを行い、治ったら再発予防の運動を。今回は、デスクワークなどで腹筋や背筋の筋力が低下し、腰椎周辺の筋肉や筋膜が炎症を起こすことで起こる「筋筋膜性腰痛」のセルフケアを紹介する。

筋筋膜性腰痛とは?

患部は背面にある大小筋肉群と胸腰筋膜

筋筋膜性腰痛 きんきんまくせいようつう

筋力不足で腹圧を維持できないと姿勢が崩れ、背中や腰の筋肉、それらを包み込む胸腰筋膜が常に緊張状態になる。現代人はスポーツの刺激より長時間の座り姿勢でこのタイプの腰痛に陥りがち。

腰椎周辺の筋肉および筋肉を包み込む筋膜が炎症を起こし、いわゆる“肉離れ”のような状態に陥るのが、筋筋膜性腰痛(きんきんまくせいようつう)。不良姿勢やスポーツによる急激なストレスがきっかけとなるが、そもそもの主な原因は腹筋や背筋の筋力が低下し、背面の筋肉に負担がかかりやすくなっていること。

痛みが生じると前傾姿勢をとりがちになるため、ますます背筋が緊張状態になる。さらに、お腹に力が入っていないときにいきなり動くと急性のぎっくり腰を引き起こすことに。

患部は脊柱起立筋、腰方形筋、広背筋、大臀筋、またはそれらと連結している胸腰筋膜。まずは痛みリリースと運動で対処することが第一歩だが、普段の姿勢の改善で背面の筋肉の緊張を取ることも腰痛再発防止のカギになる。

レッドフラッグサインに当てはまれば、すぐに受診を

レッドフラッグ=危険信号。腫瘍、感染、骨折など見逃せない重篤な疾患のサインのこと。まずは危険信号の有無を確認することが腰痛の診断手順の第一歩となる。下のチェック項目にひとつでも当てはまったら整形外科を受診のこと

  • HIV陽性者である。
  • 食生活が不規則で偏食、または少食だ。
  • ダイエットしていないのに体重が減ってきた。
  • 脚の痺れなどの症状がある。
  • 背骨が曲がるなどカラダが変形している。
  • 熱がある。
  • 発症年齢が20歳未満、または55歳以上。
  • 寝ているときやじっとしていても、絶え間なく痛みがある。
  • 胸の痛みを伴っている。
  • がんの病歴がある。
  • 長年ステロイド剤を利用している。

慢性腰痛セルフケアの進め方

慢性腰痛に関してはセルフケアなしに改善はない。ただし医療の現場では運動療法が有効とされているものの、どの腰痛にどんな運動が適当かというエビデンスはまだ出揃っていない

そこで理学療法やマッサージの臨床現場で腰痛改善の実績を持つプロフ ェッショナルに指導を仰いだ。

中村尚人さん

中村尚人さん

教えてくれた人

なかむら・なおと/理学療法士。理学療法士として12年間の臨床経験を経て、ヨガ・ピラティススタジオ〈TAKT EIGHT〉を東京・八王子に設立。ヨガ解剖学の第一人者として雑誌、テレビなど多方面で予防医学の重要性を伝えている。

石垣英俊さん

石垣英俊さん

教えてくれた人

いしがき・ひでとし/鍼灸あん摩マッサージ指圧師。〈神楽坂ホリスティック・クーラ®〉代表。オーストラリア政府公認カイロプラクティック理学士、応用理学士、国際中医専門員、心身健康科学修士など多岐にわたる資格を持つ、不調改善のプロ。

当てはまる腰痛によって対処法はそれぞれ異なるが、まずはファーストステップで痛みを軽減し、セカンドステップで再発予防のための運動を行う。この組み合わせが基本。

ステップ1:セルフマッサージで今すぐ!痛みリリース

手技によるマッサージ、テニスボールを使った持続圧迫などでまずは痛みの軽減からスタート。それぞれの腰痛に合わせたセルフケアを2〜3日実践してみよう。

その時点で効果が感じられなかったものは中断すること。とくに痛みがある部分を直接刺激するケアは即効性があるのですぐに効果の有無が分かる。そのかわり、やりすぎはくれぐれも禁物。ちょっと痛みが引いてきたと感じたらセカンドステップの運動へ。必ずこの順番で行うこと

ステップ2:痛みが治まったらピラティス&ヨガで再発予防

今回紹介する再発予防メソッドはピラティスとヨガ。ピラティスは体幹の安定性を養うスタビリティ、ヨガは柔軟性を獲得するモビリティのメソッド。

まずピラティスで安定させてからヨガで動かすという手順で行う。レベル1から3まで徐々に負荷を高めていき、腰痛再発をきっちり予防。レベル1が痛みも不安もなく安定してできるようになったらレベル2へと駒を進めよう。おすすめ頻度は週3回程度。もちろん毎日行ってもよし。

ステップ1:痛みリリース

筋筋膜性腰痛対策は腰周辺の筋肉や筋膜をじっくりほぐすことに尽きる。テニスボールを使った持続圧、または手ぬぐいボールで硬い部分を効率的に伸ばす。ただし、やりすぎは禁物。まずは2、3日試してみて痛みの症状の変化を観察しよう。

「また、お尻の横の中臀筋は歩行や立位で必ず使う筋肉。過剰に緊張して腰痛が起こるケースも多いのでこちらもしっかりほぐしましょう。さらに、筋膜で繫がっている後頭部マッサージもおすすめ。腰だけケアしても痛みが治まらない場合は試してみてください」(石垣さん)

① 脊柱起立筋に圧をかける(20〜60秒)

脊柱起立筋に圧をかける

床に仰向けになり、テニスボールを背骨の横に当てる。狙いは骨盤と肩甲骨の間にある一番外側の脊柱起立筋。両手で膝を抱えて圧をかける。ボールをずらしながら逆も行う。

② 中臀筋に圧をかける(60〜90秒)

中臀筋に圧をかける

床に座って両膝を立て、両手をカラダの後ろについた姿勢でテニスボールをお尻の横に当てて圧をかける。次に肘を床についてカラダを横にして再び圧をかける。逆も行う。

③ 腰方形筋を緩める(2〜3回)

腰方形筋を緩める

壁の前に立ち、テニスボールを手ぬぐいで包んだ手ぬぐいボールを背骨の横の腰の部分に当てる。左右の手で手ぬぐいの端を下に引っ張り、圧をかけながら息を吐いて背中を丸める。逆も。

④ 後頭部マッサージ(10〜20秒)

後頭部マッサージ

両手の指を「M」の形にして首の後ろに当てる。首の筋肉を引っ張るようにして、中心から外側に向かって指を移動させる。顎を上げすぎないよう注意して丁寧にほぐし、血流を促す。

ステップ2:再発予防エクササイズ

現代人の筋筋膜性腰痛の原因の多くは、長時間のデスクワークによる不良姿勢。猫背で巻き肩、頭が前に出た姿勢をとり続け、常に背筋が緊張している状態が続き、筋肉や筋膜に過度な負担がかかってしまう。

「再発予防対策は緊張している背筋を緩め腹筋の使い方を身につけ、負荷に負けない背筋を作ること。レベル1で背筋を伸ばし、レベル2で腹筋を使って背筋を緩め、レベル3で背筋を鍛える。この順番で取り組むことが重要です」(中村さん)

サボっている腹筋を目覚めさせれば姿勢もおのずと改善される。

エクササイズ:レベル①

背筋を伸ばす|ローリングライクアボール(5〜10回×3セット)

ローリングライクアボール

筋肉を縮めると対になる拮抗筋の筋肉は緩む。この相反抑制という仕組みを利用。膝の裏を両手で抱えて腹筋を縮め、ボールのように丸い姿勢をとると自然に背中が伸びる。そのままカラダを倒す→起こすを繰り返し。

背筋を伸ばす|子供のポーズ(30〜60秒キープ)

子供のポーズ

正座の姿勢から上体を前に倒して頭を床につける。両手は脚の横で伸ばして掌を上に向ける。両膝をぴったりくっつけることで背中が丸くなり、ストレッチされる。膝を開くとお腹が落ちて腰が伸びないので注意。

エクササイズ:レベル②

背筋を緩める|ヒンジバック(5〜10回×3セット)

ヒンジバック

床に座って足幅を広めに開いて両膝を立てる。両手は前にまっすぐ伸ばし、上体をやや後傾させる。この時点ですでに腹筋に力が入る。両手を上に上げることでさらに腹筋が働いて背筋が緩む。この感覚を覚えよう。

背筋を緩める|上に手を上げるポーズ(30〜60秒キープ)

上に手を上げるポーズ

両足を揃えて立ち、背すじをピンと伸ばす。両腕を真横から上に向かって伸ばし、視線を上に向ける。一直線のポーズを保つことで腹筋に力が入る。さらに、このとき頭を後ろに反らせると腹筋が優位になって背筋が緩む

エクササイズ:レベル③

背筋を鍛える|ニーリングスイミング(5〜10回×3セット)

ニーリングスイミング

爪先を立てた正座姿勢からお尻を浮かせた中腰の姿勢をとる。両手は腰に添える。次に中腰姿勢を保ったまま両手を左右交互に上下に振る。腹筋と背筋、両方に力を入れて上体をキープし、中腰姿勢に耐え得る体幹を作る

背筋を鍛える|戦士のポーズ1(30〜60秒キープ)

戦士のポーズ1

両足を大きく前後に開いて立つ。前脚の膝は曲げ、後ろ脚はまっすぐ伸ばす。前の膝を爪先より前に出さないこと。両手を横から上に伸ばして掌を合わせ、視線を天井に向ける。骨盤は前傾した状態。腹筋と背筋に力が入る

取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫(男性モデル)、角戸菜摘(女性モデル) スタイリスト/川合康太 ヘア&メイク/山田久美子(女性モデル)、MUROKITA KANNA(男性モデル) イラストレーション/野村憲司、今牧良治、作山依里、武久真奈(すべてトキア企画) 監修/石垣英俊(ホリスティック・クーラ)、中村尚人(TAKT EIGHT)

初出『Tarzan』No.860・2023年7月6日発売

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