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カラダを支える人体最大の関節。「股関節」がいかに重要かを知る8つのトピック

「股関節」について、知っていることを教えてください。そう聞かれてあなたは、どの程度話すことができるだろう。人体最大の関節である「股関節」は文字通りにカラダを支えている。この最重要関節のことを、8つのトピックでもっと知っておこう。

① 股の上にあるわけじゃないぞ。

股の上にあるわけじゃないぞ

筋肉に外側で存在を自覚しやすいアウターマッスルと、深部で自覚しにくいインナーマッスルがあるように、関節にも意識しやすいものとそうでないものがある。

意識しやすい関節は、足首、膝、肘、手首など。一方、意識しにくい関節の代表格が、股関節。膝や肘がどこにあるかは子供でも答えられるが、「股関節はどこ?」と聞かれても、正しく答えられない大人は多い。“股”関節というからには「股の間」にあると信じている人もいそうだが、股の間にあるのは骨盤の恥骨というパーツ。果たして、その在り処は?

「膝を高く引き上げるとズボンに折り目ができる。そのいわゆる“コマネチ”の部分の真ん中あたりに、股関節があると思ってください」(アスレティックトレーナーの鈴木岳.さん)

腰の横で触れる出っ張りを股関節と誤解する人もいるが、それは上部なら腸骨(腸骨稜という骨盤の張り出し部分)、下部なら大転子(大腿骨の張り出し部分)である。

② 人体最大の関節だぞ。

人体最大の関節

体内には、およそ200個もの関節があるとか。なかでも、いちばん大きいのが、股関節。股関節が大きいのは、体重を支える「荷重関節」の親玉だから。

股関節は、骨盤の横にある凹みに、大腿の骨(大腿骨)の丸みを帯びた先端がハマったもの。たとえば、まっすぐ立った姿勢では、下から足首(足関節)→膝関節と重みが伝わり、最終的に股関節に負荷が集中する。だから大きくなければいけないのだ。

「さらに、股関節は可動域が広くて、3つの面で立体的に動く関節なので、関わる筋肉はそれだけ大きくなります」(鈴木さん)

股関節を働かせる筋肉は、大腿前側の大腿四頭筋、大腿後ろ側のハムストリングス、内腿の内転筋群、お尻の大臀筋など。どれもビッグな筋肉であり、全部で20以上の筋肉が股関節を稼働させている。筋肉の約3分の2は下半身にあるが、その大半は股関節に何らかの形で関わっているのだ。

③ 立って行う運動の大半に関わっているぞ。

立って行う運動の大半に関わっている

股関節がどこにあるのか。ピンと来ない人でも、股関節を毎日どこかのタイミングで使っている。

立って行う動きで、股関節が関わらない運動はないと言ってもいいくらいです」(鈴木さん)

そもそも重力に逆らい、直立二足歩行をしているヒトという動物にとっては、地面を踏みつけた反動で得られる反力(地面反力)こそが、立つ、歩く、走る、跳ぶといった基本的な動きのパワー源。

野球のピッチングやバッティング、テニスやゴルフのスイングといったスポーツ動作では、上半身の動きばかりに目を奪われるが、やはりパワー源は地面反力である。

「その地面反力を受け止め、コア(体幹)を介して上半身へ伝えるのが、股関節。そして股関節は下半身でもっとも可動性が高く、3面で3Dに動けるおかげで、私たちは360度自由自在に動けるのです」

④ 重心を支えているぞ。

重心を支えているぞ

スポーツはもちろん、日常生活でも重要なのが、重心のコントロール。立ったり歩いたりといった何気ない動作でも、私たちは無意識に重心を調整している。重心のポジションがうまく保てないと、転倒する危険すらあるのだ。

重心の維持で鍵を握っているのも、股関節。

「立っているときの重心は、骨盤内の第2仙骨のやや前方にあります。第2仙骨のまわりには、仙腸関節と腰椎、そして股関節がある。そのうち仙腸関節は、関節といってもほとんど動かない。腰椎は安定性が必要なので、そうなると、第2仙骨近辺にある重心を巧みにキープする役割が担えるのは、股関節しかないのです」(文京学院大学保健医療技術学部の福井勉教授)

立位の重心の在り処
立位の重心の在り処は、第2仙骨の前方。重心をすぐ近くで支える仙腸関節、腰椎、股関節というトライアングルで、活発かつ自由に動けるのは股関節だけ。仙腸関節はほぼ動かないし、腰椎が動きすぎると腰痛を招く。

スポーツでフォームが乱れやすい、片脚立ちで何かしようとするとたちまち姿勢が崩れる…。そんな悩みがあるなら、股関節を一度見直してみよう。

⑤ 骨盤や腰椎と連携しているぞ。

骨盤や腰椎と連携している

背骨の末端の仙骨と、左右の寛骨がユニット化したものが、骨盤。仙骨の真上が腰椎だ。ゆえに、腰椎と骨盤は連れ立って動く仕組みがある。これを「腰椎骨盤リズム」という。

この腰椎骨盤リズムにも、股関節が一枚嚙んでいる。

たとえば、立った姿勢からお辞儀をすると、腰椎の屈曲→骨盤の前傾→股関節の屈曲という一連の動きが起こる。次に、上体を戻すときは、股関節の伸展→骨盤の後傾→腰椎の伸展という逆の動きが連続する。これは、腰椎と骨盤の運動方向が同じなので、「同側方向腰椎骨盤リズム」と呼ばれる。

それとは逆に、股関節の動きと連動して、骨盤と腰椎が反対の動きをすることもある。これが「対側方向腰椎骨盤リズム」。まっすぐ立った状態で、股関節を曲げると、骨盤の前傾と腰椎の伸展が起こり、股関節を伸ばすと、骨盤の後傾と腰椎の屈曲を伴うのだ。

これは、脚を前後に動かしても、前にも後ろにも倒れないために欠かせないリズムである。

⑥ 坐ってばかりいると衰えるぞ。

坐ってばかりいると衰えるぞ

アスレティックトレーナーの鈴木さんは、最近自宅用に立って使うスタンディングデスクを買ったとか。それ以来、体調は絶好調。初めはふくらはぎがパンパンになったが、いまではずっと立っていても平気になったという。

絶好調の理由を、鈴木さんは次のように分析する。

「カラダの骨格はもともと立って動き回るようにできており、重力が加わると自動的に筋肉が働いて姿勢を保ってくれる。坐る時間が長引くとこのメカニズムが狂い、正しい姿勢を保つのが難しくなるため、さまざまな不調が出るのでしょう」

立って動き回り、姿勢を支えるうえで中心的な役目を果たすのが股関節。ゆえに在宅勤務などで坐る時間が長くなると、衰えやすい。

坐る時間が長いほど短命というデータもあるが、それはおそらく股関節を使わないために下半身の筋肉が萎えたり、血流循環が滞ったりするから。その結果、糖尿病、高血圧、心臓病といった生活習慣病のリスクも上がるのだろう。

⑦ O脚とX脚の原因でもあるぞ。

O脚とX脚の原因でもある

下半身の大きな悩みの一つが、O脚X脚

O脚とは、膝が外側に開いて大腿の間に隙間ができて、歩くとガニ股になるもの。X脚とは、膝が内側に入って大腿がくっつき、ふくらはぎが開いているものを指す。一般的に、男性にはO脚が多く、女性にはX脚が多い傾向がある。

「どちらも膝に原因があると勘違いしそうですが、その多くは股関節に問題があります」(福井先生)

腹筋が衰えたり、大腿の後ろ側が硬くなったりするなどの理由で、骨盤が後傾しすぎると、股関節は外向きに捻られて、膝が外側へ広がりやすくなる。その結果生じるのがO脚。

対照的に、爪先荷重などによって骨盤が前傾しすぎると、股関節は内向きに捻られて、膝が内側に閉じやすくなる。そうやって生じるのがX脚。女性にX脚が多い一因は、ヒールを履くと爪先荷重になりやすいからだろう。

O脚やX脚の矯正は、股関節にアプローチするのが正解。

⑧ 足裏を鍛えると動きやすくなるぞ。

足裏を鍛えると動きやすく

姿勢や運動に関するさまざまな研究を続けている福井先生は、こんな不思議な話を披露してくれた。

足裏を鍛えると股関節の動きが良くなります。足裏の内在筋(始まりも終わりも足裏内にある筋肉)の動きを、テーピングなどで改善すると、股関節の可動域が広がるのです」

股関節の可動域と足裏の関係
曲がりがちな足指を伸ばし、MP関節(爪先立ちで屈曲する部分)が使えるようにテーピングを施して、内在筋を活性化してやると、それに応じて股関節の可動域が広がることが、福井先生の研究で明らかになっている。

詳細は不明だが、この話にはたぶん神経が関わっている。

脳が筋肉をコントロールする神経のルートには、脊髄のお腹側を通る腹内側系と、外側を通る背外側系がある。腹内側系は股関節を含む体幹で姿勢の維持や歩行などに関わり、背外側系は末梢の手足を細かく動かす巧緻性を左右する。

「腹内側系と背外側系は、一方を使うともう一方が抑制されるトレードオフの関係がある。足裏で背外側系を刺激すると、腹内側系が緩み、股関節の動きが良くなると考えられます」

福井先生は、この原理を活用して股関節の動きを活性化するソックスを開発中だとか。完成を楽しみに待とう。

取材・文/井上健二 イラストレーション/しりあがり寿 取材協力/福井勉(文京学院大学教授、理学療法士、医学博士)、鈴木岳.(R-body project代表、全米公認アスレティックトレーナー、スポーツ医学博士)

初出『Tarzan』No.814・2021年7月8日発売

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