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トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第2回は「前額面・矢状面・水平面」を解説。
ダイエットやスポーツパフォーマンスの向上、健康の維持といった目的を持って運動に励むには、怪我することなく目標を達成できるエクササイズメニューを組まなければならない。そのために学んでおきたいのが、カラダの動きを筋肉の動きから科学的に分析する「機能解剖学」だ。その入り口としてここで学びたいのが、人体における“3つの基本面”。
ヒトのカラダにはイラストのような3つの基本面があり、骨と骨のつなぎ目にあたる関節はいずれかの基本面に沿って動いている。それでは、それぞれの面を詳しく見ていこう。
イラストの緑部分にあたる前額面は、人体を前後に分けた面。この面に沿って関節は「内転」「外転」という動きをする。
たとえば、立った状態で片脚を伸ばしたまま振り子のように真横に開く動きは、股関節に対する大腿骨(脚の骨)の「外転」。同じように腕を伸ばしたまま真横に上げる動きは肩関節の「外転」であり、その逆の内側に動かす動作が「内転」となる。
トレーニングの種目ではダンベルを持って両腕を左右に開き、肩を鍛えるサイドレイズなどがこれに該当する。日常動作では、窓を拭く、手を振るといった「左右の動き」が前額面の動きと覚えよう。
イラストの青い部分にあたる矢状面は、カラダを前後に貫き、左右に分ける面。矢状と書いて、しじょうと読む。この面に沿って生じるのは、肘を曲げる・伸ばすといった「屈曲」「伸展」の動きだ。
普段トレーニングをしている人にとっては一番馴染みのある動きであり、たとえば、肘を固定してダンベルを持ち上げるアームカール、座った状態で下半身を固定して上体を起こすフッキン運動、そして膝を曲げて腰を落とすスクワットなども矢状面のトレーニングにあたる。
日常動作でイメージすると、お辞儀など「前後の動き」が矢状面の動きになる。
MRI画像のように、人体を輪切りにして上下に分けた面を水平面と呼ぶ。この面に沿って生じているのは、床を拭く時に腕の付け根から動かす「内旋」「外旋」という関節の動きや、脊柱を軸とした「回旋」の動作だ。
トレーニングではベンチプレスのほかに、ボクシングのパンチなども水平面の動作に分類される。日常動作では、後ろを振り向くといった「ひねりの動作」と頭に入れておこう。
以上の「前額面」「矢状面」「水平面」が人体の3つの基本面になるが、私たちの関節はただ1つの基本面に沿ってのみ動いているわけではない。とくにスポーツにおいては、ボールを投げる動作のように斜めの動きもあれば、振り返りながら手を振るなど2つ以上の基本面を組み合わせた複雑な動きがほとんどだ。
しかし、動きの基本面に沿って関節の動きを捉えると、動作を理解・分析しやすくなるだけでなく、すべての面を満遍なく鍛えることができる。その結果、どこか一部分だけが強化されるというリスクが減り、バランスのいいカラダに仕上がるというわけだ。
さらに、フィットネスの指導者を目指す人にとっては、専門家同士で議論がしやすくなったり、円滑なコミュニケーションが行えたりというメリットもある。
次回トレーニングを行う際には、今どの面を鍛えているのかを意識してみよう。
答え:上からアームカールー矢状面、サイドレイズー前額面、ツイストー水平面
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.809・2021年4月22日発売