今さら聞けない乳酸菌とビフィズス菌、賢い活用法をおさらい
昔から馴染み深い乳酸菌やビフィズス菌。これらが入ったドリンクやヨーグルトはしょっちゅう口にしている、という人は多いはず。だが、正しい腸活は正しい腸内細菌の知識から。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/加納徳博 参考文献/『もっとよくわかる!腸内細菌叢』(羊土社)
初出『Tarzan』No.788・2020年5月28日発売
ここ最近、乳酸菌やビフィズス菌には便通改善以外にも御利益があることがわかってきた。実際、インフルエンザの時期や今回の新型コロナウイルスの問題を機に、ヨーグルトがバカ売れしている。といっても、ただ漫然と口にしているだけではせっかくのパワーは得られない。
こちらの記事で、善玉菌と悪玉菌という概念はひと昔前のものである、と解説した。というのも、腸内細菌の世界はとても広大にして複雑。解析の精度が上がるほど、そう単純には括れないことが分かってきたからだ。
まず、菌を構成する世界を見てみよう。
小腸や大腸に棲む腸内細菌は約40兆個といわれ、重さにして最大1.5kg。あなたが体組成計に乗ったときの数値の一部は腸内細菌の重みで賄われている。
これらは約1,000種に分類されているが、そもそもは4つの大きなグループから枝分かれしたもの。アクチノバクテリア、ファーミキューテス、バクテロイデス、そしてプロテオバクテリアの4大グループだ。舌を嚙みそうな名前だが、頑張ってついてきてほしい。
4つのざっくりした分類は、生物の分類階級でいうと「門」に属する。「門」は動物界や真正細菌という「界」の次に位置する分類で、動物界なら脊椎があるかないか、という「そこからかい!」という非常にシンプルな仕分け。
ちなみに、ビフィズス菌はアクチノバクテリア門、乳酸菌はファーミキューテス門に属する。つまり、この段階ですでに別の種族。ここから、「綱」「目」「科」「属」「種」とどんどん枝分かれしていき、最終的には1,000種類の腸内細菌に分類されるというわけだ。
乳酸菌とビフィズス菌の境目。
さて、ではどこから乳酸菌、ビフィズス菌と呼ばれるようになるかというと、「属」のレイヤー。ビフィドバクテリウム属がビフィズス菌グループでラクトバチルス属が乳酸菌グループだ。
ヒトで見てみると、「属」ではホモ属がやっと現れたところ。その下の階層のネアンデルタール種もエレクトス種もみんなホモ属だからワンチーム。って、そんなわけはない。体格も身体能力も生活様式もすべて異なるため、種が違えば別の生き物。
同じようにビフィズス菌や乳酸菌にも、さまざまな菌種が存在する。直立歩行で目がふたつ、鼻と口がひとつずつというのがホモ属の条件ではないように、ビフィズス菌や乳酸菌すべてが免疫力をサポートするわけではないということ。
菌でいうなら最後の「株」がその菌の機能を決定するもので、ヒトでいったら「ボク」や「ワタシ」がそれ。「筋トレが得意なボク」「走るのが速いワタシ」という具合。
さて、ビフィズス菌と乳酸菌の大きな違いは前者が大腸に多くて主に酢酸を作り出し、後者が小腸に多くて主に乳酸を作ること。現在、ヨーグルトや飲料に利用されているビフィズス菌や乳酸菌は基本的に健康に寄与すると考えていい。各メーカーは有効に作用する菌株を選抜しているからだ。
ただし、前述したように同じ菌が万人に同様の作用をもたらすわけではない。ある人には便通の改善をもたらしても、ある人にはまったく変化が見られないということもある。まして免疫力に関わる作用となれば、なおさらだ。
福田先生はこれら乳酸菌、ビフィズス菌を有効活用するポイントを、自分に合っているかどうかをきちんと自覚することだと言う。
「目的の効果が得られるかどうかを目安にヨーグルトやサプリメントを最低2週間続けて摂取してみてください。その間にいい作用を自覚できれば、自分に合っているということです。試してみても効果が感じられなかったり体調が変わらなかったらまた別のものを試す。そうやってスクリーニングしていきましょう」