平日編:寝てるのに疲れが取れない人のための、習慣マネジメント24時
超回復の大黒柱になるのは、眠り。睡眠を疎かにしていると、いつまで経っても疲れは抜けない。疲労を溜めがちな眠りと入浴の習慣をいかに正しくマネジメントするかを、平日のタイムラインに沿って考えてみました。
取材・文/井上健二 イラストレーション/上坂元 均 取材協力/菅原洋平(作業療法士)、石川泰弘(大塚製薬ソーシャルヘルスリレーション部ディレクター)
(初出『Tarzan』No.774・2019年10月10日発売)
超回復の大黒柱になるのは、眠り。睡眠を疎かにしていると、いつまで経っても疲れは抜けない。作業療法士の菅原洋平さんによると、睡眠改善も「仕事と同じようにタイムマネジメントとセルフマネジメントが大切」だという。
また、「肝心の疲労が取れたかどうかは、目覚めの感覚で把握しましょう」と言うのは、大塚製薬ソーシャルヘルスリレーション部ディレクターの石川泰弘さん。
本記事では平日のタイムラインに沿って、疲労を溜めがちな眠りと入浴の習慣をいかに正しくマネジメントするかを考えてみたい。
平日のタイムラインはこちら。
- 07:50(起床)朝日を浴びながら歯を磨く余裕を持つ。
- 08:10(食事)自宅が無理ならオフィスでも朝食を摂る。
- 13:20(睡眠)耳栓で音を遮断してデスクで昼寝。
- 20:30(食事)お酒の前に夕飯の時間帯に分食しておく。
- 23:00(帰宅)リビングの照明は落とし、寝落ちしそうな場所には座らない。
- 23:30(入浴)暗いバスルームで足首に10秒ずつお湯を当てる。
- 24:00(睡眠)第三者目線で睡眠を客観視するモニタリング。
目次
07:50|ベランダで朝日を浴びながら歯を磨く余裕を持つ。
ヒトは日中活動し、夜になると休息するのが本来の姿。暗くなったら眠るという仕組みが備わる。朝イチで目一杯光を浴び、朝が来たと脳に知らせると、脳にある体内時計が暗くなった時間帯に正しく眠気を高める。ただし、光を浴びるという行動にはこれといったご褒美がなく、それだけでは動機が希薄すぎるので、何かにタグ付けしないと続きにくい。
「朝の歯磨きをベランダで行う、観葉植物の世話を窓際でするといったように、いつもの習慣を変えず、場所だけ変えて自然に光を浴びるようにしましょう」(菅原さん)。
08:10|自宅が無理ならオフィスで朝食を食べる。
覚醒と睡眠を司る体内時計は、末梢の臓器の細胞にもある。脳の体内時計をリセットするのが光なら、末梢の体内時計をリセットするのは朝食。
「自宅だと難しいなら、オフィス近くのカフェでモーニングセットを注文したり、コンビニでサンドイッチを買ってデスクで食べたりしてもOK」(石川さん)。
朝食はパンやバナナなどの糖質と、卵や乳製品のようなタンパク質の組み合わせで。糖質を摂ると分泌されるインスリン、タンパク質の摂取で分泌されるIGF-1には、消化管や肝臓などの末梢の体内時計を整える働きがある。
13:20|耳栓で音を遮断してデスクで昼寝。
睡眠不足だと日中の眠気は高まる。眠いままだと仕事の効率は落ち、覚醒レベルが下がると夜の眠りに悪影響を及ぼす。日中の覚醒時間が長いほど、睡眠物質が溜まって寝付きが良くなるからだ。そこで昼寝をし、眠気を取って覚醒レベルを上げる。ポイントは午後3時まで、30分以内に留めること。
「昼寝の時間が遅くなりすぎると夜の眠りに差し障り、30分以上眠ると深い眠りに落ち、夜眠りにくくなります」(石川さん)。
深く眠りすぎないために椅子に坐ったまま、デスクに突っ伏して眠る。雑音は耳栓で遮断しておこう。
20:30|あらかじめ夕飯の時間帯におにぎりなどで分食しておく。
お酒は1〜2杯ならリラックス効果もあるが、1〜2杯で終わらないのが世の常。酔いが回るとサク飲みで済まそうという理性が鈍り、深酒になる。
「アルコールは入眠を促す一方、中途覚醒や早朝覚醒が増える。前半は浅い眠りのレム睡眠が減りますが、後半はレム睡眠が増えて眠りのサイクルが崩れて質が下がり、目覚めを悪くします」(石川さん)。
空きっ腹だと酔いが回りやすいから、夕飯時におにぎりなどでお腹を満たす分食を実施。すると飲みすぎないし、遅くまでダラダラ食べない。翌朝、空腹で寝起きも良くなる。
23:00|帰宅したらリビングの照明は落とす。寝落ちする場所に腰を下ろさない。
暗くなると脳の松果体でメラトニンが作られる。メラトニンは「暗くなったら眠る」という生体リズムに応じて眠る準備を始める。その性質上、メラトニンは光の刺激を受けると分泌が抑えられる。
夜は暗い環境下でゆったり過ごすのが、メラトニンが主導する睡眠サイクルを崩さないコツ。帰宅後はいちばん長い時間を過ごすリビングの照明を真っ先に落とそう。
ソファで寝落ちすることが多いなら、夜はソファには坐らないと決める。脳がソファ=寝る所と学習すると、坐っただけで半ば自動的に眠くなるからだ。
23:30|暗いバスルームで足首に10秒ずつお湯を当てる。
浴槽入浴でいったん深部体温を上げるのは安眠の秘訣。毎日入りたいが、帰宅時間が遅くなると時間的な余裕もないし、早く寝なきゃと焦ると入浴する心のゆとりもなくなる。シャワーで済ませるなら、出る前に足首に10秒ずつお湯を当てることをお忘れなく。
「足首を温めるとその後に足裏から放熱しやすく、深部体温が下がって眠りやすくなります」(菅原さん)。足首は皮下脂肪が薄く、短時間でも血管を流れる血液が温まり、その後の放熱が促される。メラトニン減少を避けるため、リビングと同じく浴室の照明もオフに。
24:00|第三者目線で睡眠を客観化しるモニタリング。
スマホなどから出るブルーライトはメラトニン分泌を減らしやすい。代わりに行うべきは、眠りのモニタリング。当日の起床&就寝時刻、睡眠時間、眠気、疲労度などを記録するのだ。デジタル機器だとブルーライトを浴びるので紙に書こう。
「クライアントに記録してもらい、“この方の眠りを良くするにはどうしたらいい?”と聞くと、第三者目線でスラスラ助言できる。眠りを客観視するために睡眠記録は有効」(菅原さん)。
記録すると、疲れが残りにくい自分の眠りの傾向がわかる。それを踏まえて眠りの適正化の努力を。