目次
1. 1日の糖質摂取量は男性120g、女性110gを目安に
血糖値をコントロールするには、まずシンプルに糖質の摂取量を制限するところから始めたい。
普段私たちが口にしているご飯や麺類や菓子類、ジュース、清涼飲料水などに含まれている糖質の量はかなりのもの。知らず知らずのうちに角砂糖何個分もの糖質を摂っては血糖値を上げているのを自覚し、必要以上に摂り過ぎないよう徹底したい。
具体的には、1日の糖質摂取量を男性の場合120g、女性の場合110g以下に抑えれば高血糖や体重増のリスクを軽減できる。ダイエットが目的なら、男女とも1日60g以下に抑えたいところだ。
また、血糖値については70〜140(mg/dl)の間で抑えることを目指そう。逆に言うと血糖値が140オーバーになるような食事や食べ方は控えなさいということ。詳しく計測したい人は専門の血糖値測定器具で、細かくチェックするといい。
2. 急上昇&急降下がヤバい。血糖値スパイクに注意!
誰でも仕事や勉強を長時間続ければ脳やカラダは疲弊し、糖を欲するようになる。そこでサクッとエネルギーを得るべく牛丼屋やラーメン屋に駆け込んだり、コンビニで甘いお菓子やパンを買ってドカ食い。でもこんな食べ方はNGだ。
空腹状態でいきなりご飯や麺類、パンや菓子類などで糖質を大量に摂取すると血糖値が急に上がる。これを血糖値スパイクと呼ぶが、今度はそれに反応する形でインスリンが大量に分泌され、血糖値を急に下げて逆に低血糖状態にしてしまう。
ドカ食いの後に怠くなったり眠気が襲ってくるのはこのためで、すると「脳に糖が足りない」と錯覚し、さっき食べたばかりなのに再び甘いものなどを欲しくなる。こんな高血糖と低血糖のジェットコースター状態を繰り返していては集中力も高まらない。
先にも触れた通り、血糖値は70〜140(mg/dl)内に留めたい。そのためにも食事は野菜や肉類も一緒に摂り、かつ糖質は後回しにして血糖値の急上昇を防ごう。
3. 野菜が先か肉が先か? ポイントは「滞在時間」だ
食事の内容が一緒でも、食べる順番によって血糖値の上がり方を緩やかにできる。よく知られているのは、最初に野菜を、次に肉や魚、最後に炭水化物を摂る食べ方だ。
炭水化物を最初に食べると血糖値が急上昇し、インスリンが大量分泌して過剰な糖を脂肪に変えてしまうが、食物繊維が豊富な野菜を先に食べるとこれが抑えられる。この「ベジファースト」は長年有効な食べ方とされてきたが、2017年の医学誌『The American Journal of Clinical Nutrition』に、肉を先に食べた方が血糖値の上昇が緩やかだったという興味深い研究結果が掲載された。
その理由として考えられるのが、肉に含まれるタンパク質や脂肪の胃腸内の滞在時間。消化に時間がかかる分長くなるため、ベジファーストよりも血糖値の上がり具合を抑えられる、という理屈である。
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4. 「飲む」食べ方は危険度大。ペットボトル症候群も注意
ドカ食いと同じく、カラダを急な高血糖&低血糖状態にしてしまうのが早食い。
よく嚙んで食べるとある程度の量で脳の満腹中枢に信号が送られて満足するが、早食いだと信号が送られる前におかわりをして食べ過ぎてしまう。また、よく嚙むと唾液の分泌が促されて唾液に含まれる消化酵素が胃腸内での消化吸収を助けるが、食べるスピードが早すぎるとその働きがなくなる。
血糖値の急上昇にインスリンの分泌が追いつかず、高血糖状態を作りやすくなるのも問題だ。ひと口当たり30回は嚙むよう心がけたい。
もうひとつ危険なのが飲み物で糖質を摂り過ぎてしまうこと。ある症例では、34歳と若く糖尿病歴のない男性が海外赴任中に飲み水の不安から炭酸やスポーツ飲料を飲みまくった結果、1年後急な倦怠感と頭痛に襲われて重度の糖尿病に。即入院する羽目になったという。
これはペットボトル症候群と呼ばれる急性糖尿病。ソフトドリンクで水分を摂る人は要注意。水かお茶にチェンジを。
5. ちょこちょこ食いで小腹を満たしてドカ食い防止
忙しさのあまり食事を長時間我慢していると、いざ食べられるタイミングになってストレスも重なってついドカ食いをしてしまいがち。特に夜のドカ食いは最悪で、血糖値の急上昇はもちろん、カラダに脂肪を溜め込みやすくなってしまう。
なかにはドカ食いはしないまでも、どうしても毎日のように夕食が20時以降など遅い時間になるケースも多いはず。そんな人は「ちょこちょこ食い」で食事による血糖値の上昇を抑えよう。要するに、夕食のつなぎでおやつを軽く食べておくのだ。
ちょこちょこ食いにオススメの食材はナッツ。血糖値を上げることなく、しかもビタミンやミネラル、タンパク質などが豊富な理想的おやつだ。なるべく高品質のものを選び、オフィスのデスクなどに常備しておこう。ナッツ以外では、チーズや魚の缶詰もいいだろう。
ただし、おやつでも甘い菓子類やスナック類は厳禁。少量でも糖質たっぷりなので血糖値を上げてしまう。
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6. 糖質は脂質と一緒に摂ると血糖値が上がりにくくなる
白いご飯と炒飯、カレーライス、カツ丼。この4つの中で最も素早く血糖値を上げてしまうのはどれでしょう? 答えは脂っぽくて高カロリーのイメージがある炒飯やカツ丼ではなく、何と白いご飯なのだ。
食品が体内で糖に変わり、血糖値が上昇するスピードの目安となるGI(グリセミック・インデックス)値を比較すると、白米の100に対して炒飯が97、カレーライスが82、カツ丼は58という意外な数字になる。
カツ丼が低いのは具のトンカツのおかげで一緒に食べるご飯の吸収速度が遅くなるため。つまり、揚げ物など油を使う食材と一緒に食べると、同じ白米でも食後の血糖値が上がりにくくなるというわけ。血糖値の上昇はカロリーとは無関係なのだ。
また、白米を食べる前に牛乳や乳製品、食物繊維の多い納豆、酢の物などを食べても、白米だけを食べたケースに比べて血糖値の上昇率が抑えられる。ご飯自体をいなり寿司やちらし寿司にするなど、酢で調理する場合も同じ効果が期待できる。
7. 糖質摂取は5:5:0を目指すといい具合になる。
一日のうち最も多くの糖質を摂っていいのは朝。果物やパン、ご飯をある程度食べてもその後の活動でエネルギーになるからだ。ただし、缶コーヒーや野菜ジュースなどを朝食代わりにするのは避けよう。
昼食も朝と同じく、糖質で夜までのエネルギーを蓄えて構わない。前述した通り、野菜や肉、魚などのタンパク質を先に食べるなどして血糖値を急上昇させないよう工夫したい。
逆に、あとは休むだけという夜は極端な話、糖質は摂らなくていい。夕食で糖質を多く摂ると活動量が減る分食後の高血糖状態が長時間続く恐れがあるし、それを抑えるべくインスリンが出続けて膵臓に負担がかかりやすくなるなどのリスクがある。
3食の糖質摂取の割合は「5:5:0」を目指そう。でもそれはかなり難しいので、実際は「3:5:2」程度に落ち着きたい。夕食を食べるなら寝る4時間前までに済ませ、血糖値が下がった状態で眠りに就こう。それが無理なら、せめて寝る4時間前以降は糖質を口にしないこと。
8. 焦げた炭水化物は糖化の元。怖〜いAGEの真実とは
人間が生きるうえで欠かせないのがブドウ糖と酸素。この2つが結びつくことで水や二酸化炭素、エネルギーが作られるわけだが、その過程では糖化や酸化という、カラダのあちこちを傷つけて老化させる作用が起こる。
なかでも問題なのが糖化で、具体的にはタンパク質や脂質がブドウ糖と結合してAGE(終末糖化産物)という物質が作られ、これが病気や老化の原因になる。血糖値が高いとAGEも作られやすくなるため、その意味でも血糖値は70〜140に抑えておきたい。
厄介なことに、AGEは私たちが頻繁に口にする食品にも含まれている。左に挙げたのは主な食品のAGE含有量だが、よく焼いたフランクフルトや長時間揚げたフライドポテトなど、高温で調理した食品ほど含有量が多くなってしまう。
同じ魚でも、生食とフライでは後者のAGEが圧倒的に高くなる。もちろん、焦げた食パンも同様。トーストの焼き時間には、くれぐれも注意を。
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取材・文/黒田 創 撮影/内田紘倫 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 取材協力/牧田善二(AGE牧田クリニック院長)
(初出『Tarzan』No.738・2018年3月22日発売)