不調改善の駆け込み寺!噂のゴッドハンドたちの技を学ぶ。

セルフケアで物足りない時は、己のカラダを丸ごと預けたくなる「匠の施術者」がいる治療院へ。4人の技や独自の理論を読めば、凝りや不調の改善の糸口も見えてくるはずだ。

取材・文/板倉みきこ 撮影/土佐麻里子

初出『Tarzan』No.904・2025年6月5日発売

4人のゴットハンド

鍼灸師・角谷敏宜さん|骨ギワに届く深層筋鍼法で、積年のコリの芯を溶かす。

「カラダの不調を整えるのに、鍼以上にシンプルで多様性のあるものはない」と鍼灸師の角谷敏宜さん。

独自に編み出した深層筋鍼法は、本来の機能を失い、“マヒ”(拘縮)した状況にある深層筋にアプローチし、コリの層を一層一層溶かすように刺激する技法。深層筋が付着する骨ギワまで深く鍼を当て、マッサージやストレッチ、短い鍼などでは届かない慢性のコリを変化させるという。

「コリには中心となる芯があります。私の指であり目である鍼先に集中し、その芯を点として意識できるまで、絞り込んで見つけ出すのです。鍼先を点の表面に正確に当てれば気が流れ、膠着状態のコリがまるで溶けていくようにほぐれていきます。鍼と一体化できてこそ行える技法です」(角谷さん)

1.後頭部、首の状態を探る。

なおし家鍼灸院1.後頭部、首の状態を探る

自律神経の状態がよくわかる首まわりの状態を触診。パソコンやスマホの長時間使用の影響で、後頭下筋がガチガチの人が多く、パニック障害の人の治療にも首まわりは重要部位になる。

2.コリ部分に鍼で深く刺激。

なおし家鍼灸院コリの部分に鍼

スマホ首の改善やパニック障害の治療にもつながる、首の付け根(後頭下筋群)への鍼は、角谷さんの得意領域。繊細な部位なので、技術・経験・知識がものをいう。「鍼を刺すのではなく、コリの芯に当てる感覚で行うことが大事です」。

3.背骨のキワにも鍼で刺激。

なおし家鍼灸院 背骨のキワにも鍼

内臓の機能改善や自律神経の調整のため、背骨のキワにも鍼を使う。患者の体型、筋肉、症状に合わせて鍼の長さや太さを変えて行う。鍼を使う際は自身の骨盤を立て、座った状態で行うのがなおし家流。

角谷敏宜(かどや・としのぶ)/1957年生まれ。〈なおし家鍼灸院〉院長。東洋医学一筋。パソコン・スマホにまつわる不調、パニック障害など、心身の疾患を得意とする。著書に『パニック障害は鍼でなおせる〜深層筋鍼法とセルフケアの極意』(三和書籍)。

なおし家鍼灸院

完全予約制。ネット予約対応。後進の指導を行っている「伊豆高原リトリートハウス」では、宿泊しながらのワークショップなども開催(要予約)。東京都杉並区西荻北3-22-22第七フロントビル2F 初回90分25,300円、 2回目以降約60分15,400円。WEBサイト

姿勢治療家®・仲野孝明さん|不調と無縁の正しい姿勢へ導いていく、姿勢治療家®。

仲野孝明さんは、カラダの治療家の家系に生まれた4代目。彼が、健康上の大きな問題とみなしているのが姿勢、そしてカラダの使い方だ。

「私たちは、正しい身体の使い方を知らずに生活し続けていると、不調や不具合が生まれます。一生使わなければならない、大切な身体を壊さないためには、本来の人間の骨格に合わせた使い方を身につける必要がある、と痛感したのです」(仲野さん)

そこで仲野さんが考案したのが姿勢治療家という役割であり、姿勢とカラダの使い方をさまざまな視点からサポートしていくメソッドだった。患者の背中や腰などの不具合を解消しながら、同時に進めていくのが、自分のカラダを知ってもらうこと。

「なぜ今のような使い方になったのか。生活習慣や運動習慣、怪我など、さまざまな観点から人生を振り返ってもらいます。そうすると、身体に対する気づきが生まれる。気づいて初めて、日々の使い方が変わっていき、凝りに悩まされない、使える身体を取り戻せるようになるのです。その変化を二人三脚でサポートしていくのが、姿勢治療家の役割です」

1.30項目の姿勢チェック。

仲野整體東京青山

問診、検査分析など多数の項目から姿勢をチェック。首や腕の可動域を確認したり、各関節を細かく1か所ずつ検査。また、思考グセがカラダの使い方のクセに繫がっていることを指摘されるなど、治療以外で多くの気づきがある。

2.筋膜をリリース。

仲野整體東京青山

仲野整體東京青山

患者が《TRX®》を摑んだり、バランスボールに乗ったりと、実際にカラダを動かしながら、筋膜のリリースを促す。背面に使っているのは《Graston Technique®》。さまざまな形を部位に合わせて使い分ける。

3.背骨の動きを診ながら整える。

仲野整體東京青山

下半身部分が上下左右に動く施術台。動きの悪い背骨の関節を確認し、動きを取り戻していく。また、同じ痛み・症状を繰り返さないために、日常生活における正しいカラダの使い方の指導も行う。

仲野孝明(なかの・たかあき)/1973年生まれ。〈仲野整體東京青山〉代表。大正15年創業の〈仲野整體〉の4代目。自身の理論をスポーツに応用し、鉄人レース完走など姿勢の可能性を探求中。YouTubeやPODCASTで正しい姿勢と正しいカラダの使い方を配信中。

仲野整體東京青山

完全予約制。ネット予約対応。若者応援価格の設定あり。ART®、温水療法、超音波療法、温熱療法などの長所を融合したオーダーメイドの治療を実施。東京都渋谷区渋谷1-7-3三雄ビル3F 初診約90分27,500円〜、再診約60分15,950円〜。WEBサイト

背骨調整管理士・金井良友さん|せぼねじれ調整では、親指のわずかな刺激がキモ。

スムーズに動けるカラダとは、全身に力みのない状態。その大元を担うのが背骨である、と“せぼねじれ調整”を考案した金井良友さん。

「体幹は背骨があってこそ生まれるもの。カラダには、背骨が正しいポジションにあることが大事です」(金井さん)

ただ、同じ動きや間違った動きの繰り返しで、筋肉や腱に過剰な負担がかかり、損傷を防ごうとそれ以上動かないよう筋肉・筋膜にロックがかかる。結果、周囲の筋肉・筋膜は引っ張られ、背骨にねじれが生じる。

「ねじれを調整すれば、筋肉・筋膜の張りだけでなく、血液や脳脊髄液の流れが改善し、自律神経が整い、内臓の働きも改善するなど主症状以外の変化を感じることも多いです」

背骨のねじれの調整はミリ単位。また、刺激を与えすぎると逆効果になるので、金井さんの指の動きはいたって繊細かつピンポイントだ。

「人差し指と中指で安定させ、親指で刺激します。どの角度から筋肉・筋膜が背骨を引っ張っているのか。親指がその方向にピタッと合わさった時にロックが外れ、凝り部分の血流が改善、ねじれも調整されます」

1.土台の骨盤のロックを取る。

リキュア銀座院

背骨の調整の前に大事なのが、背骨を支える土台・骨盤を正しい位置に戻すこと。特に背骨の真下に来る仙骨の傾きを正すのが重要。こわばりやすい仙腸関節まわりの筋肉を解放させながら関節のロックを外し、正しい位置に戻す。

2.せぼねじれ調整。

リキュア銀座院

数mm単位の背骨のねじれを手技で正していく。「スマホの長時間使用の影響で、肩甲骨と肋骨が固まり、胸椎2番にロックがかかり、ねじれている人が多いです。その影響で胸郭を使えず、呼吸が浅くなってしまいます」。

3.頸椎の緊張を取る。

リキュア銀座院

痛みに特化した不調を一瞬で取る手技もある。どういう時に痛みが出るかを見立て、患者にカラダを動かしてもらいながら痛みを取る。写真は、首を横に倒した状態で、頸椎の緊張を取って痛みを解放する様子。

金井良友さん(かない・よしとも)/1977年生まれ。〈リキュア〉代表。「せぼねじれ調整」は、父考案の治脊療法ベース。肩こり、背中や腰の痛みの改善だけでなく、不定愁訴など原因不明の症状改善にも定評あり。背骨を調整するセルフケア法をさまざまな媒体で発信。

リキュア銀座院

赤坂、横浜に分院あり。ネット予約対応。慢性・急性の痛みを解放する背骨の調整法を、初心者から専門家に向けてさまざまなセミナーで指導している。東京都中央区銀座3-11-17銀座パトリアタワー201 初診40分7,700円、2回目以降20分5,500円〜。WEBサイト

鍼灸あん摩マッサージ指圧師・石垣英俊さん|凝りを生む真の原因を探り、未病を癒やす。

東洋医学では、背骨の中心と両脇に計5本の主要なエネルギーラインがあると捉える。父親も鍼灸あん摩マッサージ指圧師である石垣英俊さんが、治療で重視するのも背骨だ。だがアプローチ法は独特で、カイロプラクティックやキネシオロジーなど、さまざまな手技療法を組み合わせた独自の施術となっている。

「背骨まわりの筋緊張を解放し、不調や病気を未然に防ぐことがコンセプトで、予防医学と美容も叶える、MIBIYO整体と名付けました」(石垣さん)

ネーミングは柔らかいが、確たる理論と技術に裏打ちされた施術を頼って、老若男女が通ってくる。

「背骨はもちろん、足裏、仙骨、頭も、カラダの状態を知る大切な場所。各部位の硬さや緊張度を見て、その人の施術内容を決めていきます」

カラダの歪み、緊張、不具合は凝りとなって表れるので、その形を視診や触診で捉える。そして適切な刺激を探りながら、さまざまな手技を駆使して凝りや緊張をほぐしていく。

「骨の反応、皮下組織、筋膜の動きを感じながら、患者のカラダと対話するようにアプローチしています」

1.足底をほぐす。

神楽坂ホリスティック・クーラ

全身を支える足は、足裏に多くのツボもあり、不調を伝えてくれる大切な部位。「ツボを意識しながらほぐし、変化を見ます。左右差も確認し、カラダの使い方のクセ、内臓の不調などさまざまなメッセージを受け取ります」。

2.仙骨周辺をほぐす。

神楽坂ホリスティック・クーラ

背骨の過緊張に繫がる、仙骨周辺をほぐす。「仙骨と後頭部は連動しているので、仙骨周辺が硬い人は、背骨だけでなく後頭部も硬くなっています。内臓の疲労が原因の可能性もあるので、刺激しながら探ります」。

3.胸郭のスペースを広げる。

神楽坂ホリスティック・クーラ

緊張している時間が長い人は、胸郭が縮こまり、呼吸がしづらくなっているもの。「呼吸が浅くなることで、自律神経の乱れを助長し、体調不良を招きます。手技で胸郭のスペースを広げてあげると、過緊張も解けます」。

石垣英俊(いしがき・ひでとし)/1976年生まれ。〈神楽坂ホリスティック・クーラ〉代表。解剖医学と東洋医学の知見を融合させ、独自の施術を確立。指導者の育成にも取り組む。近著に『ココロとカラダの地図帳 プロが教えるストレスケア73』(池田書店)がある。

神楽坂ホリスティック・クーラ

完全予約制。ネット予約対応。ボディケアセラピスト養成スクールも主宰。プロの手技を再現できるセルフケアグッズを多数開発、オンラインショップにて販売。東京都新宿区神楽坂6-5神楽坂NHビル2F 初回90分22,000円、2回目以降60分11,000円など。WEBサイト